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第1話『みずのうえでぼくらはであう』  1-20『ちいさな橋』

行かなくちゃ・・・
あの子に、あいに行かなくちゃ・・・

宇嬉子は、痛覚に負けそうになる意識を、
自分の痛みで、ねじ伏せていた。

崩壊した“ネガイヴ”の向こう、非常用制動装置を手動作動。
船底で非常翼を展開して、水に抗する。

運転士の止血と、全員の負傷チェック。

鳥が翼を畳むような形で、非常口が強制解放される。
操られる事の無くなった箱船は、蓋を開けたままで川面をゆく。

“ネガイヴ”に、僅かだけ触れられた右半身が震えてる。
クギジマサソリの毒を初めて受けた時の事を思い出す。
鼓動の度に、鋼塊で殴られ続けるような激痛。

大丈夫・・・“宇氣道”は、大半の神経毒に耐性を持つ。
これぐらいで倒れていては、先輩方や島のみんなに笑われる。

増援が、来てくれた。
保安艇が、タグボート機動で制動を介助してくれる。

箱船は、そうして、名前の無い岸に着いた。


行かなくちゃ・・・
あの子に、あいに行かなくちゃ・・・

あぁ・・・
気持ち、いいな。

誰かを救えたとか、生き延びたとか、それ以前の領域で。

この、“また会えるかも知れない”という予感が。

そうか。
似てるんだ。

目覚める寸前に見る、甘美すぎる悪夢に。

現実に帰る前に知る、名残惜しき虚構色。

聞かなくちゃ・・・
あの子の声を。

船縁と川岸に掛け渡された、非常用の板。
そのちいさな橋に、ちいさな宇嬉子が踏み出してゆく。

視界の半野が霞んでいる。

それでも・・・

世界を行く暖かな陽射しは、
宇嬉子を“みかん色”に包んでいる。










第1話『みずのうえでぼくらはであう』  完   

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