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『大作戦日誌』20021001-20021031

20021001/000677
『太陽ぷりん』
“とっぷり”という言葉が浮かぶ。そして納得する。
水を連想させるその語感。
 
自転車を降りた知らない女性が、独りゆっくりと堤防を歩いてゆく。

スローモーションで夕陽が水平線にゆく。
高速度撮影された飛沫が不可思議に輝くように。
水面に接する寸前の小石が高揚感を呼ぶように。
この島国では、夕陽が山々の稜線へゆく地であっても、
その向こうに海を思う。

日本では、意外と東側に開けた地形が少ない。
特に近畿では、
海に行く夕陽は見られても、海から来る朝陽を見られる地は少ない。
両方を移動無しで見る事の可能な地は尚更だ。

独り旅の良さのひとつに、
夕景時間を自己責任で楽しめる事が在る。

夕景の広大を感じられる地点であるほど、人家からは遠くなる。
しかし・・・
街灯も無く、土地勘も無く、そのような地であるほどに高揚する。
 
 

公園整備工事中の剥き出し地面。その、
ただっぴろさの中。
“とぷんっ”と、聞こえない音が聞こえて、夜になる。
そして、ほっといても朝が来る。

今度は岬で泊まりたい。



20021002/000678
『チャリプラ』
知らない町での夕景は、奇妙な高揚をくれる。
其処に住んでいないという
異邦感が確固として在りながら、
この町に住んでいるという
平行世界に紛れ込んだかのような既視感
その
“ちょっとした狭間”で行動する。

紀伊田辺には、
駅からの真っ直ぐな道路から拡散する糸の様に、多くの路地が在る。
それが見通しの効かない楽しさをくれる。
一度歩いたメインストリートに戻れば位置感覚が戻るので、
路地裏でわざと迷う。

自転車なので、道に迷う速度には徒歩と異なる面白さがある。

知らない町の夜の中、神社への並木道へ唐突に辿り着いたり。

ラーメン屋での夕食を思案して接近すると、
不意に模型店へと辿り着いたりもする。
店内は広く、
おそらくはこの町の模型趣味人を一手に引き受けておられるような。

“三十路オタク男の問題点”を痛感させられる出来事か多かったり、
既存キットよりも自作原形に苦闘しているほうが楽しかったりで、
プラモデル購買も組み立てもロクにしていない昨今。
それでもその店を気持ちよく感じたのは、そういう空間が好きなのだろう。
情報や記憶や思い入れが蓄積した空間には、
化石や書店や古本屋や博物館と何処か共通した
基底流の匂いを感じる。

ゆるやかな坂道を見つけたので「こりゃおもろい」と自転車で登る。
『BOOKOFF』ではないが、似た感じの大型古本屋を見つけてしまう。

そうして再び夜の中を『扇ヶ浜ユースホステル』へ向けて帰還。

しまなみ街道や城崎温泉でも思ったが、旅先での自転車機動は面白い。
鉄道内にも持ち込み可能な小型軽量の
折り畳み自転車が欲しくなる。
 よし、買おう。

20021003/000679
『昭和は部屋にありにけり』
コンビニ弁当を買って、宿に到着。
『扇ヶ浜ユースホステル』では現在、食事の提供は無い。
ものは考えようだが、それならそれで、
近場の飲食店やコンビニを利用すれば良いわけで。
食事の時間に縛られない行動が可能と言える。

さんざん道に迷ったおかげで20時頃に到着

貸し切り状態の風呂に入らせていただく。
貸し切り状態の便所に入らせていただく。

本来、ユースホステルでは男女別の相部屋が基本である。
しかし昨今、グループごとの部屋割りに対応してくれる所も多い。
此処も、空いている時は個室割り当てに対応してくださる方針。

そう・・・本日、多透は単独で部屋を使用できている状態。
そう・・・ようするに、本日、
泊まり客多透のみなのだっ!!

約6畳の部屋。
廊下が在り、部屋が並ぶ、2階建て。協同トイレ。
猛烈な既視感の中、確信に至る。
“ユースホステルは昭和である”と。

されど昭和は遠くなりにけり・・・平成も早14年。
近年にリニューアルされている所も多い。
『扇ヶ浜ユースホステル』もまた、
「当ユースは、以前日本一汚いユースといわれ、
 山姥が占いをするということでマニアックな方には人気があったのですが、
 山姥もこの世を去り、1995年、新生「扇ヶ浜ユース」として再出発をしました。
 トイレ、浴室等を改装し客室もリニューアルしました。
 今ではこぎれいなユースとして女性に、若者に、外国人に人気が出てきております」
と、ホームページに書いておられる。

その言葉に偽りは無く、壁も塗装しなおされ、そして綺麗に掃除されている。
建造自体は古くとも、心遣いは充分に伝わってくる。

おそらくは賃貸アパートを改装してユースホステルとして出発されたのだろう。
廊下も階段も壁で内装されているので、文化住宅というよりアパートだ。

夜の雨が降っている。

コンビニ弁当を食べる。
とりあえず、TV放映されていた『ウォーターボーイズ』を見てみたり。
小説書いてみたり。

布団の上げ下ろしはセルフサービスがユースの約束。
貸し切りという事もあってか、旅の宿というよりも自分の部屋という感覚。
同棲はありとても1人暮らしが未経験の軟弱者故、感慨深い。
旅に出る度に思う、
“もしもこの町で暮らしていたならば”という思考。
それが、真っ直ぐな仮想現実として部屋の真ん中に転がっている。

昭和は既に遠い。
遠くに在りながら、自分の内にも在る。
そこにもここにも在る。

叶えられなかったことも多いけれど、
子供の頃になりたかった
“旅をする大人”という部分だけは、
少しだけ・・・出来ているやらいないやら。


20021004/000680
『ヒマワリの角を右』
昨日まで知らずにいて、
そして未だ知らない事の方が多い町で目を覚ます。

ユースホステルの旦那さんに御挨拶してチェックアウト。
物腰の良い人だ。
談話室に並んでいた書物群を見れば、良い趣味だとも解る。

8時台の朝、昨日は自転車で走った町へ出る。
昨日とは違う経路で道に迷って遊ぶ。

武蔵坊弁慶がこの町で生まれた頃に、路地は在ったのだろうか?

昨日で少し土地勘を覚えた地区から少し歩けば、向日葵が咲いている。

日曜の朝、廃品回収へと小学生達が強力して物を運ぶ。
その横の路地に入ると、
南方熊楠の生家が在る。
 
記念館が別に在るので、家は見学公開されていない。
朝といえど、既に陽射し強い夏の終わり。

・・・・・さて、
仲間達とは
午前11時に待ち合わせ。
今回、多透のみ先行していたという訳だ。この町まで。

路地裏を縫いながら紀伊田辺駅に到着。
フフフ・・・まだ9時。
白浜駅での待ち合わせには充分間に合う。
ゆったりと列車に揺られた先で、アイスでも食うか。

・・・・・次の電車は100分後。 

 和歌山おそるべし。

20021005/000681
『はるばると白砂』

仕方がないので町を徘徊しているウチに時は来る。
やってきた列車には皆が乗っているという王道展開。
いざ、白浜

通常、8月31日にてキッチリ閉めてしまう海水浴場が多い。
白良浜海水浴場は9月第1週末まで開けてくれているのが嬉しい。

白砂と遠浅。
その、海水浴場として理想的な地形を維持する為に、
白砂はオーストラリアから搬入されている。
それを
無粋だと感じてしまう人の気持ちも解らないでもない。
しかし昨年の秋に来た際の光景が、自分の記憶には在る。
早朝から地元の方々が清掃してくださっている姿、
そしてそれから
想像できる日々の積み重ね。

煙草の吸い殻やペットボトルを
無自覚に捨てて忘れてしまう輩の、
想像力貧困こそが無粋である。

海水の透明度は高く、
白砂の反射率が海中を更に明るくする。
シュノーケルを付けて延々と波間に浮かぶ。
先週、出雲のグラスボートから見せてもらった魚を再発見する。

メタルブルーの小さな魚の群れが目立つ。

石垣で組んだ突堤のお陰で、その内側には驚くほど波静か。
突堤の領域外に面した浜では、夏の終わりの高い波。
ひっくり返ったり、ひっくり返されたり。
散歩に連れられて来た犬が紙一重で波を避けるのを見たり。

これもまた記憶の積み重ね。


20021006/000682
『ウミギワ温泉』
白浜での締めくくりは『崎の湯』で。

白浜温泉の源泉に近い岬。海水浴場から徒歩で十数分。
波打ち際ぎりぎりに岩で囲んだ露天風呂が在る。無料。

海そのものの温度を確かめに、湯船の石垣を越えようとして、
あやうく女湯を覗く位置に侵出しそうになって大驚愕後退。
湯のせいで海水温も暖かかったのは確認。

快晴快晴。全裸で海に立つ。
向こうに見える海中展望台から望遠鏡だと
見えるだろう。男湯が。

西暦2002年の夏。
今年も色んな所に行ったし、やたら遊んだなぁ。
 また、どっか行こ。

20021007/000684
『名古屋でも行ける切符』
夏も終わったとゆうのんに、小春日和とか夏日も来る昨今。
9月14(土)15(日)16(月・祝)は
愛知県ゴー。

いつものように土曜午前中は仕事なので。
ゆるりと午後から近鉄線へ。

先日、金券ショップにて
『近鉄1回乗車券』を発見・入手。
通常1500円のところを1300円との事。
『青春18きっぷ』のように1日何度も乗降できない下車前途無効券なれど、
近鉄全線の特急以外に
距離無制限で乗る事が出来る。
それで急に思い立った旅次第。

まずは15年ぶりぐらいな名古屋へ。
急行列車は意外と混んでいる。
連結部の未使用運転席横の空間で過ごす。
立ち通しだが、
ちょうど机代わりになる高さの棚が在るので、iBookも出動。
 
実に短時間で車窓からの景色が広がりを増してくる。
奈良県・三重県を通り抜けて愛知県に至る道筋。
四十八滝で知られる赤目までの思わぬ短時間や、
鈴鹿山脈を貫くトンネルの長さを再確認する。
硝子の向こうの緑に、ただ歩きたくなる。
これからは
山歩きも増やしていこう。

名古屋駅には17:30到着。既に薄闇。
JRの構内を抜けて、手近な地下街に入る。

ふらふらしていると模型店を発見するが、
流石に今回の
旅趣旨と異なるので何も買わず。
それにしても、自分がつくっていたら、
既製造形物への購買欲がどんどんフラットになってゆく。

前回に来た時は長い長い地下街を歩き続けたあげく、
入った店では
「きしめんは売り切れです」と言われたオチ。

赤ラーメンを食す。
ゆでほぐれていない麺のカタマリ部があったが、
スープが美味しかったので良しとする。


20021008/000685
『記憶バシラ』
記憶の残滓よりもずっと、名古屋駅前は明るく広くなっている。

以前に訪れた時は冬だった。
大阪よりも強い寒さにキリキリしていた。

宿のあてなど全然無く、
風に吹かれて足にまとわりついてきた古新聞から、
オールナイト上映してくれている映画館の名を探した。

その頃はそうしている事など苦痛でもなんでもなく、
その“宙ぶらりん”の中に自分を置く事が嬉しかった。

あの時、自称家出少女が途方に暮れてもたれていた柱・・・
それも、もはや何処だったのか解らない。

宿へ向かう為に地下鉄を僅かだけ使ってみる。
何処かで見たようなありふれた丸い柱が仰山あった。
 

20021009/000686
『あみだくじの旅行者』
この日の宿は『愛知県青年会館ユースホステル』
地下鉄東山線伏見駅下車、徒歩10分。

この“徒歩10分”に
弱い
地図を舐めるように見ていなかったせいで、案の定、道に迷う。
微妙に残っていた太陽光も、町の夜に溶けた。
周囲は、ごく普通の都心横という雰囲気。大小のビルが建ち並ぶ。
何度か無意味に曲がり角を歩き、それはそれで楽しかったのだが、
“人間あみだくじ”という言葉が脳に浮かぶ。この先は・・・スカ?

そうこうするうち、
がらんとしたビルとビルとの狭間で、人影が自分独りになる。
脳内で、“ゴーストタウンごっこ”が起動する。面白い。


前回の名古屋行でも、こんな感じで冬の中を歩いた。
その時は“偶然の同行者”が居たり、
道を尋ねたOLお姉さまに缶コーヒーをおごってもらったり。

拾った新聞の映画館案内欄。
当時の名古屋近辺には終夜上映館が殆ど無く、
映画館の名だけを頼りに豊田駅で下車。
背後で即座に駅のシャッターが閉まる。

田畑の中を延びてゆく真っ直ぐな道。街灯は遠く、近づけば次もまた遠い。
冷気の中、高揚だけが在る夜。
闇夜に浮かび上がる郊外型のパチンコ屋と映画館合体施設。その箱形。

朝までは2本立て。
どういうわけか『サボテンブラザーズ』と『プラトーン』・・・
 
旅のイベントなど、
なんの用意も意識も無いままに飛び込んでくるわけではないとも思う。
空虚に酔う旅では空虚に酔う者がよく見えるし、
広さを求める旅では広さを探している者がよく見える。
それはすれちがうだけの縁の中にも波及する法則かも知れない。

年齢においても、その歳にしか出会えない誰かは必ず居る。

それだからこそ、数多の物語は出会いの夢を記して示すのだと思う。
 

200210010/000687
『どっきりパジャマ』
街角で、お好み焼き屋さんの女将さんが夕涼み。
道を尋ねると、宿の手前まで来ていた事実に対面。

『劇団四季』が公演する劇場横を通りながら、宿へ到着。
なんとかチェックイン制限時間内に間に合った。

チェックイン後は門限が23時という事だが、
周辺は徘徊させてもらったし、前日はほとんど眠っていない。
明日に向けて休息体勢に入る。

ユースホステル名義ではあるが、
昭和の公共宿舎という雰囲気。
部屋は和室。5人で10畳ほどの空間なので、さほど窮屈な感じは無い。
他の部屋も4人組が確認できたので、結構つまっているようだ。
風呂は5階。まずまずの広さが在り、空いていたのでゆったり。
 廊下には、殿様の肖像画が。

相部屋になった方々は・・・
◎夜行列車で到着した就職決定済の大学生。大阪へ向かう途中。
 本日立ち寄った瀬戸市の瀬戸物市が琴線に触れた為、明日も再訪予定。

◎中型バイクで千葉から長野を経て到着したライダー。
 明日は京都への初突入を目指す。

◎出発直前に足となる筈の原付を盗まれた為、
 急遽、友人のMTBを借りての旅立ちになった大学生二十歳。
 前日は滋賀県日野市にて野宿。畳の上で眠れる事に感激しつつ、
 東海道を東へ向かう野望。

◎正体不明の巨漢。

凄いなぁ。みんな、旅してるなぁ。

薄い照明の廊下を歩いてトイレに行くと、
20代とおぼしき女性が、
実に、ごく普通のパジャマを着て階段を降りてくる。
言葉は無いままに、互いに会釈。
さりげない日常色の非日常。
すれちがうままに、ドキドキする。
 くはーっ!!

20021011/000688
『マツゲ&マネキン』
ユースホステルの夜は早く、朝も早い。
基本は相部屋システム故、先日の『扇ヶ浜ユースホステル』のように、
単独単室は珍しいケースであるから、周囲への気遣いの為にも早寝早起き。
 
午前6時。続々と起床。
多透も、6時半にチェックアウト。
今回、此処に宿をとった理由のひとつに、
名古屋市美術館に於いて
『マグリット展』が開催されている事が在った。
9時開場までの2時間半、再徘徊を決行する事に。

美術館への徒歩移動は短距離。
美術館と科学館を敷地内に持つ
白川公園にすぐ到着。
早朝といえど、近隣の散歩者が多数来訪している。
 
そして、大阪の同規模公園と同様、テント村が多数。
トタンやベニヤで個々それぞれに作られた
“家”が建ち並ぶ。
日雇い仕事の仲介拠点としても機能しているらしい協同体エリアとして、
『ホームレスマネキン村』の看板が掲げられている。
マネキン人形の首が並んでいるのは如何なものか?
あと、1軒の“家”に景品ぬいぐるみが並んで飾られている。
『デ・ジ・キャラット』のなんたらというキャラを発見。色々かんがえる。

公園を抜けて、
豪勢と噂に聞くモーニングセットを目当てに喫茶店を探索するが、
よく発見できずに気がつけば1時間経過。結局はマクドナルドへ。
テーブルに、誰かが忘れた
つけまつげを発見。色々かんがえる。


20021012/000689
『石の書状』
今回の旅に於けるサブミッション、『マグリット展』にイヨイヨ入場。
 
解説やインタビュー記録を読んで、
ルネ・マグリットが文章においても渋い表現者であった事を再認する。

氏の作品中『ピレネーの城』は、
自分が1番好きで自分にとっては氏の最高傑作だと思う。
幼い頃に初見してから、多くの人々と同様に忘れる事なく過ごした。

藤子不二雄A先生のペン画模写を漫画作品中に目撃したり。
さだまさし氏の『マグリットの石』という歌を聴いたり。
Mr Children の『優しい歌』のCDジャケットに引用されているのを見たり。

今回の展示では、残念ながら“城無し”の姉妹作が来訪。
まぁ、それもまた良し。

『光の帝国』『大家族』という有名どころも印象が強いが、
『白紙委任状』という作品は、たしかにマグリットの代表作のひとつに思える。
そしてその題名のみを切り離しても、全作品に共通のテーマそのものだと思える。
 
美術館周辺には屋外作品が点在展示されている。
順路から離れた廊下の端で、硝子の外を見る。
女子高校生のグループがダンスの練習をしている。
気付かれないままに、彼我の奇妙なパースペクティブを思う。

人間の感覚は白紙委任状だらけだ。
自分で書き込んでいかないと白紙の時間が増殖してしまう。


20021013/000690
『たとえばデカくてモコモコしたやつ』
 
名古屋市美術館の図書室で小休止。
的確な蔵書群にメロメロになりつつ気がつけば1時間経過。振り切る様に出る。

常設展示を徘徊。
“現代美術と括られるものは何故に巨大化を拒まないか?”を考えさせられる。

デカければそれだけで印象が強くなるのは理。

既存物をそのまんま転がして展示したり、
既存物を拡大模型にして展示したりが流行ったのも解る。面白いとも思う。
既存物を変形させたり、
既存物で無いものに既存印象を複数投影させる試みも面白い。

絵画であり立体であり、受け手にも技量を要求する芸術は多い。
されど、
送り手の意図を察する以前の“大きい”という印象だけで終わる事は多々在る。
そしてそれだけで納得されて終了してしまうのも、良し悪し以前の現実。

なにはともあれ、優劣以前の現実として、
縮小模型の“はかなさ”を意識してみたり。

あと、特別展示域で、フリーダ・カーロの凄みにサブイボが立つ。
おそろしい女や。

20021014/000691
『猛獣ライダー』

美術館を後にして、陽光あふれすぎて暑い外へ。
名鉄に半時間ほど揺られて東岡崎駅へ・・・
と、行く筈が唐突な睡魔に拮抗できず、1駅乗り過ごした自分を知る。

旅の途中でぽっかり空いた待ち時間を楽しみながら、次発を待つ。

東岡崎駅に辿り着いたのは既に昼。
昼食を忘れてしまいながら、1時間後のバスを待ちつつ徘徊。
名鉄沿線、失礼ながら意外と街も在ると知る。

バスターミナルから出発進行。
終点の足助(あすけ)までは1時間14分800円。

車窓の外に通り過ぎる『BOOKOFF』を発見。
帰路に寄るには微妙な位置に在るので、ゆく事は無いだろうと知る。

広さの感じ方は色々在るが、移動風景から目を離さない方法も面白い。

街のすぐ横に広大な田園が広がる場所が在る。
あまりに田園が広く、家々との境界が直線的である為に、
住宅街が、まるで城塞の様にも見える。
城塞都市の外縁に農耕区が在れば、こんな感じなのかと知る。

小雨を通り抜けてバスは山々の間を抜ける。
温泉郷の在る峡谷へ道路は続く。

愛知県の広さを知る。

車中で、女子高生2人の会話が耳に入る。

「元カレから急に連絡あってさー」
「ヨリ戻そう、と?」
「や、事故って脚折ったってさー」
「あの子、バイクだよね。相手、クルマ?」
「や、シカ」
「鹿?」
「とりあえず、ウマ年生まれでなくて良かったね、と」

愛知県の広さを知る。


20021015/000692
『あすけあい』
名古屋から名鉄で半時間ほど&バス1時間14分で足助(あすけ)到着。
香嵐渓という温泉と紅葉の地が在る足助川沿いに家並みが並ぶ。
中馬街道(飯田街道)が古来から通り、今でも古い街並みが保存されている。
川沿いの遊歩道を歩けば、そういう史跡を巡れるそうだ。

少し曇りがちではあるが、山の空気に満たされて心地よい。

バスターミナルは、地方で定番の広場状の空間。
降り立ったのは、多透と女子高生と旅の若者の3人。
それぞれがそれぞれの方向へ行く中、
多透は「アイスでも食うザマス」とバス券売所兼売店へ。

「お兄さん、ユースに泊まるの?」とイキナリ指摘される。
売店の女将さんの熟練と眼力に感服しつつ、
丁寧に道順を教えていただいて感謝の出発。

この先の道を、徒歩1時間程の登山で宿に辿り着く。

『あすけ山里ユースホステル』は、
山中腹に在った歴史深い小学校の
木造校舎を再利用し、
98年に出来上がった施設だ。

木造校舎を改装した宿は、北海道に幾つか在るそうだが、
西日本での所在を多透は知らなかった。
今回、東海地区という近場での存在を知り、
「すわ!」と連休利用で出た次第。

通常、バスで訪れる旅行者には、ユースの御主人が車で迎えに来てくれる。
しかしこの日は、偶然にも
地区運動会
ユースの建物前、かつて小学校運動場だった広場での開催。
世話人として、ユースの御主人も多忙な日なのだ。
電話予約の際、それならば自力登山で行く旨を宣言していたのだ。
 
舗装されてはいるが、年期の為、所々の亀裂が味わい深い。
昼下がりだというのに、鈴虫の声が周囲を包んでいる。
それでも頭上からは未だ、蝉たちが鳴き、名残惜しい夏が在る。

行きたい場所を先送りにしていたら、キリがない。
どんどんと“次”の目的地は日々の中で浮かんでくる。
そしてなにより、怠惰の中で高揚を忘れてしまうのが怖い。
義務と責任を果たしているのならば、行きたい所へ行くべきだ。

誰も見えない登り坂をゆく。
竹藪が覆い掛かる様に茂る。
道は曲がりくねるまま続く。
杉木立は静けさと並び佇む。

“宿へ向かう道”という高揚と、空間の心地よさの同時。

それでも少しばかり気持ちよい疲れをおぼえた時、
柔らかいエンジン音とクラクション。

近所の方が、運動会へ出ている子供を迎える為に車で上って来られたのだ。
ありがたい事に乗せていってくれるとの事。

その方も廃校となった小学校の卒業生で、
学校自体は寺子屋の時代から在る歴史深さだと教えていただく。

それ故に、ユースホステルも地元では名が通っており、
この道を行く人を見かけると乗せてゆくのも地元のたしなみとの事。
 
感謝と気持ちよさの中、宿へと到着する。


20021016/000693
『教室の宿』
『あすけ山里ユースホステル』前の運動場では、
地区運動会が終わったところだった。

周囲の大人の疲労度から見るに、
かなり活躍した筈なのに、まだまだ残る元気で走り回る子供達。
流石、普段から坂道通学しているだけの事はある。
都会からの転校生が体力不足を突かれるのは、
数々の物語での定例イベントではあるが、現実に実感。
 
前日や当日朝に到着した宿泊者の皆さんも運動会に御参加。
毎年恒例の実に和気藹々としたイベントのようだ。

「いちど参加してみたい」と思ったものの、
ふもとに新しい学校が在る事もあって、
来年からは開催場所が変わるかもしれないとの事。
 
部屋は、2段ベッド2列と座敷。座敷には2人寝る事が出来る。
昔の
教室を2分割した感じだ。
合計6人宿泊可能な部屋が4部屋。それぞれ構造は同じ模様。
窓が大きく開放的なせいか、窮屈な感じは受けない。
改装はされているものの、木の質感を大事にしているのと、
廊下の床板や柱などの基礎構造が
小学校時のままなので、
郷愁を損なうものではない。

談話室の本棚には美術雑誌も並んでおり、
マグリット展の余韻もあって多くを拝読。
 
普通の旅館にはあまり見る事の無い
“本棚”を見ると、
宿のオーナー(ユースホステル的にはペアレントと呼称する)の、
嗜好や個性が感じられて面白い。

20021017/000694
『魔獣あらはる!』
運動会が開催された都合で、この日は夕食が用意できない為、
総計10人が車2台に分乗して外食へ出かける事に。
この旨は電話予約の際に聞いていたのだが、
半時間以上の道のりに少し驚く。
田舎での外食が“車で1時間”とかが当たり前なのは、
母の郷里で既知ではあるが。
今回は延々と山間部の道。
 
数時間前に登ってきた道は街灯も無い急勾配。
自転車でヒルクライムしたツワモノも居たそうだが。

冬期は凍結する為、
ふもとに在る公共の宿に車を停めて送迎してもらう事も可能との事。

ふもとからも旧街道を通ってゆく為、他の車影も極まれ。
愛知県東北部に位置している為、岐阜県に突入しそうな感覚だった。
 
辿り着いたのは
『どんぐりの湯』という道の駅兼公衆浴場。
近年の区分では、いわゆる
スーパー銭湯

平成5年の工事中、
推定3000年前に縄文人が食料として貯えた
ドングリ出土
それが名前の由来との事。
出土時の写真が展示されていたが、
粘土層に密閉された状態から現代大気に触れた途端、
黒く黒く
変色してしまったそうだ。

既に19時を過ぎていたが、建物周囲の暗闇とは裏腹に賑わっている。
近隣の方々には定番の場所の様。
あいにくと曇り空だったが、
晴れていれば照明にも負けずに露天風呂からでも星空が見えそう。
あと、
バチヘビも居る。

各自、風呂に入って食事し、玄関に集合。
・・・の筈だったのだが、多透のみ、何を間違ったか建物外の蕎麦屋に。
建物内に食堂が在るのを確認できていなかったという体たらく。無念。
しかも、天ソバがメインの店で天麩羅が品切れだったというオチ付き。

あと、帰りの山道で、
タヌキが横切ってゆくのを目撃。

20021018/000695
『中間旅テスト』
今回は運動会という事もあって“常連さん”も来られていた。
ネット上のユースホステルページには、
「我が物顔」「仕切りすぎ」「居座りすぎ」等々・・・
色々と“常連さん”に苦言を呈する記述を見かける。

しかし、此処の皆さんは旅慣れておられる方ばかりのようで、
良い印象を受けた。

“常連さん”であろうがなかろうが、
自己客観視できない人は何処に行っても迷惑を掛け、
そしてそれに
無自覚なのだ。

肩書きや財産や日常の立ち位置から離れた旅先では、
ただの人間としてのスキルを試される。

道を尋ねたり尋ねられたりという何気ない行動にさえ、
自分を試したり客観視できる良い機会が内在している。

怖がって立ち止まり引きこもってしまうよりも、
そういう緊張をも楽しんで旅してゆきたいものだ。
 

20021019/000696
『学校で泊まる』
場所にもよるのかも知れないが、
ユースホステルでは通常、23時頃には部屋を消灯するようだ。

それまで知らなかった者同士が相部屋になって、
それぞれがそれぞれの旅の予定を控えているのだから納得できる。

起きている者は談話室などの共用空間で、
読書等で静かに過ごす事が出来るユースも在る。
瀬戸内の『三虎ユースホステル』では、夜更かしできるロビーが在った為、
そうして午前2時頃まで起きていた。
 
今回は、名古屋での徘徊と移動の疲れも在る事だし、
下の段とはいえ二段ベッドの出入りで音を立てるのも気を使うし、
他の皆様も就寝との事なので23時から夢の中。

ユースホステルだと、自宅の日常よりも早寝早起きができると認識。

旅の中継点としての宿として、
他者と自分に迷惑を掛けずに休息して次の日に備えるには実に都合が良い。
 
“元”とはいえ、“学校”で泊まる面白さを考えながら眠る。

認識しないで過ごすのなら、
何処の宿や文化財の中で泊まっても無感慨のままだろう。
今、この年齢だからこそ、
“かつての学校”という時間内包体で泊まる感慨の楽しみが在る筈だ。
 

だまし絵の迷宮みたいに入り組んだ校舎を歩き回る夢を見る。

それは日常でも時折に見る“楽しめる夢”ではあるけれど。
朝に目覚めた場所が“其処”であるという魅惑。

20021020/000697
『歩いて帰ろう』
午前6時、起床。
まだ眠っている同室の方々を起こさない様、忍び足で外へ。

朝の運動場に、ひとり立つ。
このような時間に学校へ来たのは何年ぶりだろうか?

二宮金次郎像に挨拶。
ブランコと鉄棒に座る。
とりあえず、走ってみる。

金網の向こうは、山道も無い急斜面だ。
鉄棒の向こうから、猫が見つめてくる。

東経137度2分。北緯35度7分。
標高450mの朝は少し肌寒い。

雨の匂いがする。
夜露かと思ったが、5時台に降っていたようだ。
雲が増えてくる。

深呼吸。

帰ってから、「ラジオ体操しときゃ良かった」と気付く。


20021021/000698
『傘電車』
雨が帰ってきたので中に入り、寺山修司特集本を読んで過ごす。
朝食を戴いて暫くしてから、チェックアウト。

良い宿だと思う。

もう暫く居ればふもとまで車で送ってもらえるのだが、
前日に自力登山ではなかった事もあり、自力下山を目指す。

誰も居ない道。木と鳥と虫の音。

雨上がりの山あい。
点在する家々の隣に広がる田圃。棚田状の所も在る。
 
道端の枯葉。転がっている栗の実に、その棘に、触れてみる。
水玉だらけの道端に、ツユクサを見つける。
名を知る花を見ると奇妙に安心する。
染め物の下絵や低学年理科の色水に使われる露草だ。夏の花。
 
道のりの半ばまで来ると、急に雨が戻ってくる。
傘を出そうか雨合羽を出そうかと迷っている間に、本降りになる。
立ち止まっていた木陰ではしのぎきれない。

エンジン音。
宿の主人が、他の宿泊者を乗せて来られたのだ。
恥ずかしながら乗せていただく。

山の気候だから、この雨は少なくとも2時間は降り続くとの事。
大阪平野とは流石に天気の移り変わりが異なる。面白い。

ふもとの川沿いを徘徊するつもりだったが、
潔く予定を繰り上げて名古屋まで戻る事にする。

“また来たい”という淡い願望から、
“また来ればいいや”という確定した予定へと心境が変わっていたからだ。

バスターミナル。
またもや女将さんに尋ねると、バスは90分後。
別路線を親切に教えてもらい、
バスと名鉄の単線部分を乗り継いで名古屋に向かう。

1両編成の電車が、山と川と雨の狭間を擦り抜けてゆく。
愛知県の広さを実感しつつ、
知らない筈なのに懐かしい風景をも実感する。

雨に包まれる小さな駅舎で、
傘を広げる女性の不可思議な艶めかしさ。
けむる雨で彩度の低い一瞬で在るのに、夢二の絵記憶の様に残る。

そうして、
大阪からでも4時間で辿り着ける事を覚えておく。
 


20021022/000699
『しあわせは歩いてけえへんから』
9月の連休は『しあわせの村』にも泊まる。
 
なんだか安物の新興宗教施設の様な名前とも思ったが、
それはネガティヴな印象記憶で普通のものを見る行為だと思い、反省。
多角的視点は必要だが、うがった視点が先行し過ぎると性根が狭くなる。
 
三宮から西神戸有料道路経由で約30分。駅からバスも多便運行。

長いトンネルを越えると、団地群が唐突な感じで視界に。
古びた印象は無いが、山間部に現れる“町”は、
70年代のニュータウン群を思い出させる構造だ。

そして団地群を抜けると、広大な
『しあわせの村』に到着。
250ヘクタールと言われる敷地は、
園内無料巡回バスで1周半時間ほどはかかるとの事。

神戸リハビリテーション病院を中心として、高齢者・障害者施設が並ぶ。
車椅子で散歩する方々も多く居られ、そしてそれが可能な敷地内。
総合福祉施設として整備されているという心意気が随所に見られ、
素人目にも心地よい。

物語を書こうとする者にとって、
様々な
都市計画に触れる事は本当に勉強になる。
 
土の道である自然歩道・芝生広場・キャンプ場・スポーツ施設なども、
広大な敷地を上手く活用して配置されている。
常に
敷地限界を考慮せねばならない大阪と異なる視点が面白い。

のんびりと時間を過ごすには、こういう整備された自然も良いと再認。

20021023/000700
『おっさんアスレチカ』
今回は幾つか在る宿泊館を利用した。
施設は綺麗に整備させており、公営施設に時折在る古びた感じは無い。

園内には、低年齢層にも楽しめるフィールドアスレチックや、
室内プール、ジャングル風呂なども。

日が暮れてから、ジャングル風呂までふらりと行く。
曇っていた為に星は見えにくかったが、
9月のぬるやかな夜空気と周囲の広さの中、
うるさくない程度の街灯に照らされた場所を歩くのは楽しい。
 
フィールドアスレチックは、山肌を利用した登坂コースが在る。
真夏なら結構汗をかけるだろう。上からは施設群が展望できる。
長い滑り台も在り、家族連れが過ごすには気持ち良いだろう。
 
アスレチック利用は当然の如く日没までだが・・・
キャンプ宿泊の中年男性群が
自己責任の名のもとに
深夜や早朝にヱクサイトしている姿が夢想できた。

きっとそれは、施設自体が見せた過去か未来の光景なのだろう。
それが未来の光景なら、現実と化すのは明日なのかも知れない。

 

20021024/000701
『ゆばらはん』
10月に突入し、第1週末は湯原温泉にも突入決定。
集団名『ドーゼオーバーズ』(仮称)の野郎4人で土曜午後から出発。
 
甲子園口を14時半過ぎに旅立ち。
中国自動車道に宝塚から突入。
これはっ!? 
異様に空いているぞ。楽々走行。
落合ICで米子自動車道に入り北上。
あれよあれよとゆう間の2時間半で湯原に到着せり。

自動車と高速道路移動だと距離や時間の
移動スケールが変化するのを実感。
その
相対性を思案する。

湯原温泉街は、ゆるやかな
昭和の香り

街角のいけすにオオサンショウウオを発見。
天然の迷彩色がニクい。そしてデカい。
井伏鱒二『山椒魚』の、
「ああ、寒いほど独りぼっちだ」と嘆いた奴を思い出す。

ちなみに、当地での呼称は・・・
半分に裂いても生きている奴
“ハンザキ”!!
 
陽の在るうちに到着できた為、まずは車で徘徊しつつ周辺索敵。
実は今回、野宿なり。
つまり、陽の在るうちに場所探しをしておかないと
“大変な事”に!

湯原温泉街から少し離れると、
山あい道路脇に農道らしい地道を多数発見。

山間部、数キロ四方に広がる平地の一角。
我ら、
露営地を決定す。


20021025/000702
『ユバラ!』
温泉街を流れる旭川の清流、見上げればダムの巨大なる勇姿。
 

その河原に、川底の砂を吹き上げるように温泉が湧いている。
それ故の名前が
『砂湯』・・・
古くは平安の世、タタラ製鉄が行われていた時代から続く湯治場。

川面よりも少しだけ高く石垣が組まれ、3つの湯船が作られている。
湯船はそれぞれ温度差が設定されている事から、
高温の湯が湧き出ている事が推察できる。
水を引いて混入する事で水温を下げるのは容易だが、
低温水を湧かして熱量付加させるのは手間がかかる。
その様な装置は見あたらなかったし、そういう事をしていれば、
“24時間無料開放”というシステムは成り立ちにくいだろう。

ダムに向けて車を走らせると、車両進入限界点が在る。
だが、温泉街の河原に整地された無料駐車場が整備されているから安心。
旅館宿泊者用の区域とは区分されているし、許容量の大きい駐車場だ。

駐車場からダム方向へ少し歩くと、演歌的名称の吊り橋
『寄り添い橋』が、
そしてそれからすぐに『砂湯』に行き着く。

ダムの巨大を無粋と感じるかどうかは感性しだい。
人工物を過敏に毛嫌いするのなら人類未踏地に行くしかない。
“今、此処”を楽しむのならば、
その巨大を作り上げた人々の思いを想像する事こそ良策だろう。

ダムの存在により空間的にも“間口”が開かれた感じで、
山懐に居るという感覚は増せども削除される感は無い。

今、湯煙の中、我らは立った。
既に夕刻。街灯に加え、かがり火が焚かれている。

『イメージ映像』
逆光に揺れるスモーク。監督リドリー・スコット。
現れた4人の男たち。その手には危機と邪気を祓う聖なる媒体が。
“ブルワーカー”“突っ張り棚”“トイレぽっこん”“分度器”・・・
それぞれのシルエットが湯煙慕情にスパークする!!

【注】露天風呂に余計なガジェットを持ち込んではいけません。


20021026/000703
『ドラゴン襲来』
湯原温泉のメインストリートから少し入った一角。
我々は、お好み焼き屋で夕食をとる事となった。

眼前に焼きソバが運ばれてきた瞬間、
その日からの新番組として『ガンダムSEED』が始まっていた事を思い出す。
留守録予約を忘れていた事よりも、
なんの焦りも悔いも無い自分に「ぁあ、そぉか」と思う。
自分の人生にガンダムの5個や6個無くてもどぉという事もない。

過日、閉塞的オタク者のイヤな部分とダメな部分とかを、
自他の中に認識してしまったりしたからだろう。
そしてそれ以前に、
自分で動く面白さこそ自分が楽しいという実感が在るからだろう。

虚構に振り回されるのは、もぅええじゃないか。

旅であろうが日常であろうが、
自分自身の移動で刻々と変わる風景を楽しむ事こそ面白い今を手に入れたし。

露天風呂への道すがら、
ヌード劇場と射的場
『ドラゴン遊技場』の看板に遭遇。
在るべき所に在るというか、実に温泉街らしい。

若夫婦と思われる2人が浴衣姿で射的をし、手を繋いで温泉街を歩く。
在るべき現実に在るものの、気持ちよさ。

20021027/000704
『デバッガード』
湯原温泉『砂湯』・・・

この湯にはサマザマな肩書きが在る。
“全国露天風呂番付・横綱”“24時間無料露天風呂”
そして
“混浴”〜ッ!!

バスタオルは許可されるものの、
水着は禁止である。
更衣室は在るものの、入口のドアは西部劇に出てきそうな観音開きで、
入口全面を
守るものではない
川の両側には旅館がそびえ建ち、
客室の窓が川面に向かう。

この構造を目の当たりにし、
露天風呂入口の広い石段で呆然と立ちつくす女性群多数。
「えぇぃ!ままよ〜ッ!!」と意を決する者は
極少ない

既に当該構造を熟知し、承知し、
大型バスタオル装備で入浴する女性自体も少ない。
パートナーの男性が居る・中年以降の年齢層グループ・家族集団などなど、
ごく僅かの方々がグループで寄り添いあって入っておられるぐらいである。

だが・・・
我々は、見た。

湯原温泉『砂湯』・・・
そこはサマザマな思いが交錯するキュビズムフィールド!!

更衣室・湯船・休憩用ベンチの空間構成は渾然一体。
それゆえに、外縁に位置する休憩用ベンチにて、
“食い入る様に携帯電話を見つめる男”数名。
写メール機能内蔵のものかどうかは不明。

前日のニュースで、スカート内を盗撮して現行犯逮捕されたものの、
かたくなに携帯電話を離そうとしません!」と、
アナウンサーに言われていた会社員を思い出す。

女性更衣室前には飲用にも使える水道が設置されている。
“その水を延々と飲み続けるもの”“手を洗い続ける者”
そして、
“近場の岩に座り続け更衣室のドアを注視する者”多数。

我々とて健全と
不健全の狭間で苦悩する男子、
サマザマな
期待が無かったと言えば嘘になる。
だが、我々は既にッ!
周囲の年齢層と仕事疲労でヘニョヘニョになっていた!!

そして一部の
“ハンター”達の挙動が、我々の精神を、
更なる枯山水の境地へと誘った。
 

20021028/000705
『デバ・ハンター』
自覚はないのんだろうが、異星人が見ても不自然な男が居た。
小太りの肉体にて露天風呂の石畳中央に
仁王立ちし、
細き瞳で周囲を
索敵
湯冷ましに立っている風を装ってはいるが、既に十数分。

「うぅむ。まるで鷹の目だ!」
「英語でゆうとホークアイ」
「ハンター・・・まさにハンター・・・」

女性が入浴して来ると、一挙手一投足を見逃さない。
自らは無駄な動作なく、全身をサーチする。まさに、アイ・レイプ。

グループから離れた女性には、しなやかに接近。
隣接して延々と話しかける。その呼吸、まさにハンター

我々はサマザマな思いに囚われつつ、
自戒教訓を得た。

平安時代から、この様な情景は連綿と続いてきたのであろう。
社交場の情景と見るか、破廉恥と見るか、
営業妨害と見るか、宇宙意志と見るか、立って見るか、寝て見るか、
個々の背景文化が問われる処だ。
 
露天風呂を後にする夜道、闇夜の橋の欄干に、
落とし物らしき大人用帽子を発見。

「よく見えないが・・・きっと、ハンターのものに違いない」
「つまり、鳥打ち帽」

20021029/000706
『ムー一族』
我々は、土曜夕刻到着時・零時前・日曜午前6時、と、
都合3回のべ100分ほど入浴。
ゴミや吸い殻のポイ捨てとかハンターとか、色々あるが、
それは此処に限った事ではないし。
とにかく
開放感は満点。露天風呂かくあるべきかな。満悦々々

朝に入った時、
50歳代オーヴァーと見られる女性4人組が近場に入浴。
全員、この湯環境に慣れているらしく、
大型バスタオルで
“自作”したムームー状の入浴装備で統一。

朝から枯れていた我々は流石に目を伏せたり、
冷水が悠々と流れる川縁で
座禅を組んだりして回避するアリサマ。

だが、
サッパリした入浴感で男子更衣室(周囲からまる見え)に向かう我々は、
背後を通る一団から・・・
突如として言葉の冷水を浴びせたおされる事になる。

「ウフフ・・・
あの子たちの視線ったら、
 わたし達に
釘付けだったわ


20021030/000707
『天に白鳥、地にムジナ』
我々『ドーゼオーバーズ』の湯原温泉での宿泊は野営となった。
陽の在るうちに探索しておいた農道脇な空き地へとドライヴゴー。
だが、街灯が“無い”といって良い道路を走りながらの再訪は、
走りながら木綿針に糸を通すが如く青春まよいみち。
 
右往左往の果てに我ら、暗黒の中へテントを設営す。
土は固く平坦である為、設営地としては良好々々。暗闇以外は。

なんと、電灯を持参してきたのが僅か1名であった事が発覚。

ただ1度だけ、
農道奥先の民家まで車で行って帰ってこられた地元の方が出現。
闇と闇の中で地べたに座り込んで酒盛りをする4人を照らした瞬間、
如何なる感情が沸き上がったか、我々はもはや確認できない。
狐狸の類とでも思っていただけていたなら良いのだが。

長く緩やかに曲がった舗装路から少し入った地。
温泉街と遠くの山を結ぶ道を、時折、誰かの車がゆく。
その、ヘッドライト。その、光。

闇が広いからこそ、光が遠くまで届いてゆくのが視覚できる。
進み、そして拡散する光の波。
大気中の水蒸気に乱反射して輝ける、その粒子。

山と山の間、我々にとっては認識上の地平と言える地点から、
光が放射されながら走り近づき、そして遠くへゆく。

わずかに聞こえる走行音のドップラー効果。

例えが古いと知りつつも、
映画『未知との遭遇』のポスターやアレのシーンを思い出す世代。

そうして天空を見上げれば、満天の星空として言いようの無い星光。
銀河の細光が銀砂となって天井を横切る夜の中、
我々は白鳥座を発見する
 

20021031/000708
『天幕の外は霧』
天空に銀河は浪漫でありとても、今回のテントは僅かひと張り
寝袋は2つ。我々は4名。
キぃリキリと
冷気を世界に充満させてゆく外気温。
流石に長Tシャツでは胸と背中が冷えてきた。
既に日付も変更されている事なので睡眠体勢。

テント2名、車中2名の分散睡眠を決行。
手持ちテント&寝袋の無かった
多透は車中泊となる。

RVR(名称未設定)の室内は広い。
シートを倒すと、ほぼフラットとなるので2人は楽に眠れる。
借りた毛布を被っていると寒さはまったく感じない。
ほんの時折、彼方からの車が光をひるがえしてゆく。
車が通りすぎると沈黙が復活し、
2m離れたテント内の話し声が車内まで僅かに響く程だ。

“今、此処”だけの印象を数多く認識する程に、
旅は深く刻印される。
目と耳と、それ以外のものも使おう。

鉄板越しに銀河を思う。
これからも、地の気を感じられる場所で野営したいものだ。
 
風呂の後だった事もあってか、即座に夢の中。
相変わらず、旅先のほうが早寝早起きを実践できる。

6時には全員起床。
朝霧にひたされた山間部の空を見る。
出雲の朝霧とは空間構成が異なるので新鮮な面白さ。
露天風呂に入った後、山間道路を使って
蒜山高原を目指す。
我々は走りに走った。
や、実際に走ったのはセックスドクターが運転するマシーンだが。
とにかく走りに走って走りすぎた為に鳥取県に突入してしまった程だ。

大山蒜山スカイラインの風景を楽しみつつ方向転換。
谷が、かなりの標高まで霧に沈んでいたのが印象的。

蒜山高原は思っていたより観光地で少々拍子抜け。
レンタサイクルが在るというので林道走破とかを夢想していたが、
広い牧草地を周回するコースなので反対側の道が見える。
宿泊施設は大きいので家族連れやゴルフ向けか。
 
今回の収穫は色々あるが、やはり野営感覚。
車中泊というのも久しぶりだったし、
今回の様にシートベッドというのは初めてだったので面白かった。
されど、テント&寝袋に惹かれるのもまた人情。

よし、買おう。

買った。

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