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| 『大作戦日誌』20020801-20020831 |
| 20020801/000614 | |
| 『月光遊技』 | |
| 月の土地を買いました。 最近、 TV番組等でも紹介されていたので御存知の方も多い事かと思います。 『月のひつじ』という映画の公開に際して、 元々そのような営業活動を続けていたベンチャー企業が提携し、 土地権利書付き前売り券を販売しているのです。 多透も以前から興味があったものの、 手続きが面倒そうな先入観でズルズルと保留。 今回、 “アポロ11号の世界中継ミッションを陰で支えた田舎町の物語”映画が、 公開されるにあたって前売り券とセットだというのでWeb購入。 ちなみに劇場窓口では当該セットは販売されておらず、 現在はWeb販売のみです。 で。 この商売、宇宙開発に詳しい方なら疑問を感じて当然の事。 1967年の宇宙条約と1984年の月協定によって、 政府による天体専有や、 営利目的による天体開発と利用は禁じられているからです。 この協定には拡大解釈される隙間があったり、 批准国が少ないという問題もあったりしますが、 その崇高な理念は尊重されるべきものです。 にも関わらず、世界中で約100万人といわれる人々が、 月の土地権利を有している訳です。 まぁ、中には、 「投資や!」とか考えて購入されてる方々も居られるかもだし、 原野商法とか言ってしまえばアレなんですが。 大半の方々は冷静かつ論理的に“心意気”に代価を払っている訳で。 作りもしない模型とか一度しか触らないオモチャを買ってた身としては、 まぁ、面白い買い物が出来たかなぁ、と。 届いた“権利書”は、 もちっとゴーヂャスさが欲しいトコでもあるんですが(笑) 1エーカー(サッカー場ぐらい・約4050平方メートル、定価1980円)と、 映画前売券(1700円)がセットで2780円。 通販なので代引き手数料とか加えて3710円也。 彼女連れで映画行くよりも安いこの値段で、 文句言うたらバチ当たるかもですな。 なによりも購入意欲をそそったのは、今回の分譲地が、 “人類初の到達点であるApollo11号着陸地点の近所”だったりもするし。 月の土地日本独占販売代理店は「ルナエンバシージャパン」で、詳細はこちら。 http://www.lunarembassy.jp/ 法律上の問題や、会社としての考え方について詳しく書かれています。 |
| 20020802/000615 | |
| 『ゲッツメン』 | |
| 雨の降らない暑い夜の繰り返しの中、 本当は職場近くの橋の上が良いものの誤解されるとナニ。 遠回りして街灯の無い田んぼ道で、双眼鏡を取り出す。 でも、暑いのでウチに帰ってからに続く。 天体用ではなく、フィールド用のものなので、倍率は10倍程度。 防水仕様のニクい奴だが、クレーターのアップは無理。 それでも、月の全体像が綺麗に見えてくれるので時間を忘れる。 元物理教師のブツリさんに尋ねてみると、 クレーターの細部を観察しようとすると100倍以上が望ましく、 せめて30倍以上が欲しいとの事。 それに、天体望遠鏡で大切な事は、倍率ではなくて口径の大小。 ぁあ・・・そういえば、理科の時間に習ったなぁ・・・ どんなに倍率が良くても像が暗くなっては観察どころではなくて。 それに、普段に陸上物を見るのと兼用の小型双眼鏡なら、 倍率でかくても口径が小さいとブレるし。 そんなこんなで、抱えきれないぐらいには大きく見える月の、 その海を夜な夜な見ては居るのです。 ・・・そのうち、資本主義の魔術にかかり、デカいの買おう。 |
| 20020803/000616 | |
| 『空のキイロ』 | |
| 毎年の事ながら、夏の時間は早い。 近年、夏場の移動を積極的に行っている事もあって、 かろうじて、 記憶無き夏経過を回避出来ているのかも知れないが。 陽射しが強くなり、世界を照らす光が増えたように思うと、 夏が世界を見せびらかしているようで。 それならば、自分で動いて世界を見てみようと思えてくる。 広いところが好きなので、 景観に奥行きが少ない大阪を出ると高揚する。 広い所で太陽や月を見ると、 見かけの大きさが大きく見えるのが面白い。 大気屈折率の影響を受けて、 上下方向に少しつぶれた長円に見えるという理屈は、理解できる。 しかし、過ごしてきた日々の中で、 延々と刷り込まれてきた印象の影響は無視できないのではないか? 描かれた大きい天体。モニターに映る拡大映像。 それらの中で過ごしてきた心理的な錯視効果は在るのだと思う。 まぁ、それはそれで楽しめたら良いわけで。 地球半径の23000倍も彼方の太陽を、 いつもの町から少しだけの距離を移動して、見る。 それはわりと、夏向きのイベントだと思うのだ。 そんなこんなで。 愛媛から広島まで。 島々に掛かる橋を渡りに、“しまなみ街道”行ってきます。 |
| 20020804/000617 | |
| 『ヒバナイド』 | |
| 8月3日(土) しななみ街道へ向かう前に、宝塚にて花火見物。 宝塚大劇場横の駐車場が無料観客席で、 花火は武庫川の中州から打ち上げられる。 “凹”の上辺から見物する訳だ。 わりと多透近年の年中行事だが、 実は大正5年(1916)から続く歴史を持っていると昨日に知る。 まだまだボクは青い。 いつもながら駅からの道は人波つづき。 敷物の上で座って見物を望むのならば、開始30分以前到着は必須。 近場に待機場所が在るからこそ連れだって出かけるが、毎度毎度暑い。 加古川の祭とも日程が重なる為、帰路は更に疲れる事に。 薄明の空の中、爆発後に怪物タコの如く広がる爆煙が鮮明に見える。 花火発射場所よりも高い場所で見る為か、 他よりも花火が近い感覚で見物できるのが面白い。 実測は結構な高度を持つのだろうけれど。 30分間、ほとんど絶え間なく打ち上げが続く。元気だ。 限定された河幅と限定された発射区間、 そして川縁まで他の建物が接近しているので上方空間も限られる。 うーん、精密設計&精密射撃。匠の技。 見物しながら色々と思案していたが、 どうにも花火という存在と展開は文章表現しがたい。 単に多透のボキャブラリーが足りないというのも当然ながら、 花火という時空間は文字表現を拒んでいる孤高を持つようにも思う。 輝き、そして潔く消える。 記される以前に、そういう存在だからなのだろう。 |
| 20020805/000618 | |
| 『匂い本』 | |
| 今回の交通手段『ムーンライト松山』は、 JR大阪駅を零時15分発。 95分程の余裕が在ったので、 東通のマンガ喫茶で、松本大洋 著『ピンポン』全5巻を読破。 美味。 零時5分前、大阪駅に再到着。 『青春18きっぷ』は改札で使用日のスタンプが必要。 この時間になると、同様に“零を待つ者”が続々集結。 思えば遠くへ行くもんだ。 改札を抜けて階段を上り、 ホームに入って来る長い列車を見る。 朝に松山へ到着する列車内は、満員に近い。 全席指定なので、事前に数百円で買っておいた。 素直に“窓側”が取れたので、結構余裕だと思えたが、 実際は単に運が良かっただけのようだ。 隣の青年は睡眠用アイマスク(チェック柄)と空気枕装備。 眠る気満々の御様子だが、座席が固いので眠り辛そう。 車内は少々減光されているものの、本が読めない程ではない。 野尻抱介 著『ふわふわの泉』を読破。美味なる空想科学小説。 明かりの無い誰も居ない駅を幾つも幾つも過ぎてゆく。 午前3時頃に岡山駅を抜ける。 そうして半時間ほど列車が走ると、其処は瀬戸大橋の上だ。 夜に、この橋を渡るのは5度目ぐらいだったと思う。 いつもながら、視界に染みてくるのは、 車窓の向こうに流れてゆく構造材の影と、沿岸の常夜灯の色。 闇夜のオレンジ。 朝に備えて眠ろうとする。 硝子窓にもたれて、 装備を分散させたウエストポーチを枕代わりに。 そうすると、 中に入れてあった『遠野物語』の文庫本から、 “古本の匂い”が微かに伝わってきた。 奇妙な落ち着きの中で、 これもまた“旅の部品”だと、思う。 |
| 20020806/000619 | |
| 『バスへの扉』 | |
| 列車は朝日を追い越すように走りながら、 愛媛県に突入。約1年半ぶり。 ネットからプリントアウトした時刻表も地図も・・・ “忘れてきた”が、気にしない事にする。 午前6時40分。JR今治(いまばり)駅到着。 既に陽射しは強く、この夏も定番になった青空が在る。 自販機アイスを食べつつ、バス乗り場へ。 まずはバスで“最初の橋”まで接近する算段だ。 ・・・こりゃ困った。乗り場番号の選択がよく解らない。 携帯電話が在れば、チャキチャキと電話確認するのだろう。 が、プリペイド式携帯電話をも使わないまま期限切れにする身、 携帯なんぞしている筈もない。 まぁいい、テキトーや! ふらりと来たバスに乗り込む。おっけーれっつごー。 ・・・予感的中。 “最初の橋”どころか、 橋々で連結された『しまなみ街道』の半分以上までゆくバス。 しかも高速道路使用の“しまなみライナー”には掟が在る。 “途中下車、不可” ![]() 40分程走ったバスは、最初の降車場へ。 乗客の中で、たった独り降りると其処は高速のサービスエリア。 歩行者のみに許された階段を更に下りて前進。 ![]() ぎゃんぎゃんと蝉の鳴く夏の道。 みかん畑の見える道には誰も見えず。 どうするか? 今回の旅目標は『しまなみ街道』の自転車による走破。 この島にもレンタサイクルは在る。 今回は“半分”で済ますか? 思案の中で歩いていると、上り階段。高速の反対車線に出てしまう。 それもまた良し。 臨機応変は、独り旅の重要部品。 驚愕しても、悔やまなければいい。迷っても、後悔しなければいい。 夢想していた予定と違ったからといって腐っていても始まらない。 “出発点”まで引き返すバスを待ちながらの数十分。 人影の無い屋外ベンチで青空読書。 ![]() こんな事もあろうかと持ってきていたエバーグリーンな物語。 ロバート・A・ハインラインの著作を広げて、 その大切な頁を読む。 木のベンチを、大きな蟻が群れで歩いてゆく。 全周囲の陽光と蝉の声。 視界の両側に山の夏色と海の反射。 どちらを向いても『夏への扉』 ![]() |
| 20020807/000620 | |
| 『襲来!巨大橋の帝國』 | |
![]() “出発点”に引き返すバスに乗る。 こちら向きに行くバスは乗り降り自由だし、 自分としても鉄道駅まで引き返す必要はない。 “最初の橋”に一番近い停留所で降りる。 そこは本当に高速道路の傍らで、 トラス構造に囲まれたエレベーターが在るだけだ。 地表まで降りると、島の大地。 途中まで降りると、橋の歩行者専用道。 ![]() つまり、“最初の橋”を徒歩で“引き返す”事に。 橋の上には、潮風が吹いている。 水面から橋の構造頂上点までは1000メートル以上。 吊り橋構造なので、支柱の高さはそれほどに必要なのだろう。 道の高度も50メートルは充分に在る。 その高度においても、 風に潮の香りを感知できるとは思っていなかったので、得した気分。 来島海峡第三大橋、その全長1570メートルを歩く。 視界に続く橋の道は長い。 世界第14位、日本3位の長さだそうだ。 ![]() 巨大な人工物を“体験”する時、多透の場合、 まず意識するのは“自然への影響”とか“環境破壊”よりも、 実は“巨大なる存在感”そのものだ。 ![]() 人間がつくった巨大。 その圧倒的な“存在そのもののチカラ”に触れる時、 地球システムへのマイナス面よりも前に、まず、 “人間のチカラ”を誇らしく思うのだ。 この巨大なる人工物が在るからこそ体験可能な“景観”の中を、 そうして愛媛まで渡る。 ![]() 自転車を借り、 愛媛県の今治から広島県の尾道までを結ぶ、橋々と7つの島。 その全長77.7キロメートルに向けて“再出発”する。 |
| 20020808/000622 | |
| 『ハグルマ』 | |
| 愛媛県今治市サイクリングターミナル、 『サンライズ糸山』で自転車を借りる。 1日借りて、楽しんで、 行く先のサイクリングターミナルで乗り捨てて1500円。 実際、行ってみるとコストパフォーマンスの高さに驚く。 自転車の車種は、一般車・MTB・ロードレーサー等各種アリ。 それぞれに変速機が付いており、 搭乗者はその恩恵を実感する事になる。 今回の多透は、“寄り道”を考えてMTBを選択。 早速、サドルの位置を合わせて登るのは“最初の橋”への坂。 『しまなみ街道』の起伏図を見ると、 一般道から各橋への高低差は約50メートルだ。 つまり、橋を渡る前には必ず約50メートルを登らなければならない。 勿論、道のりは長いが傾斜の柔らかな自転車道で登る事が可能。 橋々の通行料金は料金箱に入れる形式。小銭の準備。 これだけの規模なのに、各50〜200円と実に格安だ。 ![]() 10段変速の自転車に乗るのは初めてだ。 どうにかこうにか、身体で覚えてゆく。 贔屓目にも効率悪し。それでも変速機の恩恵は充分に身に染みる。 急勾配の少ない大阪で暮らしていると味わえない実感だ。 登りきると其処には、まっすぐな道。横風が心地よく吹く。 数学的に調和のとれたケーブル群が、鳥類の美を連想させる。 ![]() 大小の島々が連なる中を、橋と道は続く。 岩礁の上の緑。空の蒼。眼下をゆく釣り船の白。 遠くをトンビが飛んでいる。 カモメより細身の、サギのように思える白い鳥を遠くに見る。 “最初の橋”を渡りきる頃には、 すっかり自転車が気持ちよくなっている。 この、人力で駆動する最も効率の良い機構のひとつ。 誰も見えない視界の中を、加速する。 |
| 20020809/000623 | |
| 『ナツミチ』 | |
| 夏の中を旅していると、 “広さの中の夏”の他に、“夏の道”が心に染みてくる。 ![]() 母の郷里が香川県な事もあって、瀬戸内の夏は馴染み深い。 風景も、植生も、家並みも。 ![]() 高山ではなく、昔話の絵本に出てきそうな丸い稜線の山。 みかん畑や雑木林の中を歩いてゆけば上まで行けるのだろう。 親切な登山道ではない、生活の道で。 島々の風景に、妄想と知りつつも、 いつか見た筈の光や、いつか通った筈の道を見つけてしまう。 其処で生活していると、 存在が当然の風景部品になってしまうような、 “夏の道”が好きだ。 夏の陽と夏草の中で、そっと当たり前に在る。 歩みを休めて、道の上を味わう数分。 ![]() アキアカネらしきトンボが、滞空している。 その身体の赤はまだ薄く、夏がまだ続く事を示している。 ![]() |
| 20020810/000624 | |
| 『夏の駄菓子屋』 | |
| 島々を横方向からの断面図にしたものを見ると、 島同士の標高差の少なさに気付く。 そういう地形条件が在るからこそ架橋計画が実現したのだと、 脳内机上で理解はできる。 しかし、夢想フレームを広げた時、 この広大を造形した太古からの地殻運動に感慨を覚える。 ![]() 『しまなみ街道』の島々はそれぞれが広さを持っており、 小さな島に在る“濃縮された生活空間”という感じは無い。 島のひとつである因島などは“因島市”である事もあって、 ホームセンター等の大規模店舗も見かける。 多透が住む大阪の片田舎と共通する街角も、旅の中で発見する。 そんなふうに、 日本各地の地方都市と共通する景観が在る中を駆け抜けてゆき、 ふぅわりと潮の香りを感じ、そして光る海を見つけると、 奇妙に安心する。 ![]() 母の郷里で過ごした夏の記憶を喚起してくれる、風景部品群。 夏の道・蝉時雨・松葉の重なり・陽射しと影の輪郭・潮騒・ 遠く高いトンビ・板塀の色・堤防のコンクリ色・雑草の緑・ 潮風で錆びた看板・濃縮された草の匂い・引き潮で乾いた運河・ 日用雑貨店から走り出てくる幼い兄弟・手に持ったアイスクリン・ 当たり前の街角・乾いた海草の匂い・・・ ![]() |
| 20020811/000625 | |
| 『戦うヘリコプター』 | |
| 向島という島は、海上保安大学に縁が在るそうで。 退役した練習船が桟橋に繋がれて展示されていたりする。 坂道の上を見上げると、 海上自衛隊のヘリコプターが置かれている。 TV放映された『戦うヘリコプター』という映画が在った。 終盤、航空博物館が舞台になり、 年代物飛行機が出てきたのが少し印象に残っているが、細部不明。 戦闘ヘリが決して弱々しいものではないと知った今でも、 その弱そうぅなタイトルのインパクトのほうが強い。 ![]() ギシギシに日焼けした青年が、前方から自転車で接近。 ヘリコプターをバックに写真を撮ってくれないかと頼まれる。 快諾。 ![]() 彼は、多透とは逆に尾道から走ってきたそうだ。 この時間から全走破は苦しい位置だと思い尋ねると、 頃合いを見て再び尾道へ帰還するそうで。 そうして当たり前に、それぞれの方向へ。 |
| 20020812/000626 | |
| 『島影男』 | |
| 夏の中を延々と自転車で抜けてゆく。 手の甲には汗が浮き出して流れ、乾いてはまた流れる。 早朝、間違えてバスに乗って引き返した為、 約3時間を予定から遅れている。 その事は後悔しても詮無いので気にしない。 時間は素早く流れてゆく。どれほど緩やかに見えようとも。 計画通りに行かない事を悔いながら旅をするのは、 旅の楽しみをゴミ扱いしてしまう事に等しい。 しかし、 結果的に真っ昼間を走る事になったのは確かである。 帽子を被っていなかたらヤバかった。 米軍余剰在庫から買ったジャングルハットに塩の輪。 そんな時間の無い身なのに、 なんと島内に古本屋チェーン店の『BOOK OFF』を発見。 涼んだり本買ったりしているうちに半時間以上を費やしてしまう。 植村直己さんのアウトドア本と江戸川乱歩の『影男』を買う。 ![]() 海水浴場の道端に、うち捨てられた車を見る。 陽射しの中、カリカリに熱を持っている。 レンタサイクルの紋章を持った自転車は時折見かける。 借り物ではない自分の機体にキャンピングザックを装着して、 力強く坂越えしてゆくツワモノも居る。 島々には飲料の自販機が数多く設置されているので、 500ミリリットルのボトルを常時携帯。乾かない自己責任。 上半身裸で自転車を漕ぐ男性も多いが、 真っ赤に日焼けしているのが痛々しい。今夜は眠れまい。 「お先ですぅ〜」 原付のレンタルバイクに乗った女の子2人組が、 頬笑みながら追い越してゆく。 山歩きする者同士と同様、すれ違いざまの挨拶が活力になる。 |
| 20020813/000627 | |
| 『うちがわの海』 | |
| 母の郷里が香川県だった事もあって、 瀬戸内海で泳ぐのは慣れている。 内海なので、日本海や太平洋の透明度を期待してはいけない。 しかし、『しまなみ街道』の島々を巡っていると、 瀬戸内海らしからぬ透明度に驚く事がある。 香川県沖の女木島(別名:鬼ヶ島)や男木島で泳いだ時の透明度。 思い出すそれにも似て、 瀬戸内海も沖に出れば澄んでいるという事実を再確認する。 心地よい色や光は、 誰かに知らされるよりも虚構や何かに伝えられるよりも、 実感できるに越した事はない。 実感も得ようとしないままに世界を夢想しても、 矮小な自分を飼い腐らせるだけだ。 ![]() 川から水門を経て海に繋がる導水菅の上に座り、休憩。 潮風が在るので、蒸せる感覚は無い。 遠くの島や、広島側の山々が見える。 割れた導水菅の中に頭を突っ込んで、水面を見る。 それはとても綺麗だけれど、遠くは見えない。 結局、自分は、 動かないと何も見えない種類の人間だと思う。 だから出ないとどうしようもない。 ![]() |
| 20020814/000628 | |
| 『ミチルミミズ』 | |
| 『しまなみ街道』において、 橋に登る為の坂道は綺麗に舗装されている。 傾斜を緩やかにする為に、距離は長くなっている。 その曲がりくねる道を登ってゆく。 ![]() 道には、ミミズが無数に干からびている。 このミミズに対する認識は、 都会生活に埋没している度合いを計る指標になるのかも知れない。 ミミズという環形動物は、皮膚呼吸を行っている。 皮膚呼吸する生物の中で、ミミズは最大の大きさを誇るそうだ。 夜に雨が降った朝、道でミミズが干からびているのは、 おぼれそうになって地上に出てきたからだ。 夏の道で干からびているミミズをよく見かけるのは、 気温の下がった夜明け前に活動したまま、 潜れない舗装路に出てしまったからだろう。 ![]() 土壌生態系の中で、ミミズは膨大な個体数と時間を駆使して有機物を分解し、 結果として肥沃な土壌を造りだしている。 ミミズが地中を通った穴は土壌の空気循環に役立ち、 他の生き物の呼吸を助ける。 チャールズ・ダーウィンが最後の研究に選択しただけの事は在る、 この、壮大なる循環。 それは当然のように、地球生態機構の中に在る。 ミミズが干からびている道は、 正常な土の少ない都市での生活に慣れきっている人には異質でも、 本来の“道の風景”としては自然そのものだ。 それにしても、今回の旅で見たのは・・・ものすごい数だったが。 やがて雨に流されたり鳥や微生物に食われたり分解されたりして、 そうして何処かに巡ってゆくのだろう。 ![]() セミの声が降る中、ミミズが干からびている道を、 汗だくで登る人力自転車。 自分がイキモノでありナマモノである事を再確認する。 |
| 20020815/000629 | |
| 『道の蜜柑』 | |
田圃と蜜柑畑が、遠く迄ずっと続くような道。 暑い盛りの時間に農作業をされる方も見えず。 ほんの時々、道端に蜜柑やスイカが転がっていたりして、 ふぅわりと驚く事がある。 道端の自販機。 囲いと屋根だけのバス待合所の隣り。 そろそろ予備のペットボトルを確保しようと接近。 待合所に、へたばっている女学生2人組を発見す。 隣りにはレンタサイクルが2台。 あんまりに“へにょへにょ”になっていたので、 心配になり声を掛ける。 「だいじょぶです。なんとかなり・・・そうです」 声まで乾いている。 意識は明瞭のようだし、熱中症にはなっていない様だ。 『ぁ〜。下心ナシ宣言するから、なんか水分おごらせて』 「あじがとござぃます」「どうもです」 アクエリアスとクーのオレンジ。 夏休み、尾道の親戚の所まで来たので、 全島はともかく半分を目標に走ってきたそうだ。高2。 その意気や良し! ・・・・・ゃ、でも、オススメできないよ。実行した身としても。 特に夏場は。 ![]() 「平らに見える道でも、実はずぅぅっとゆるい上り坂なの、ずるいですよ」 『ん〜。ここはオッチャンぽく、それを人生に例えたりするのも一興やけど、 実は同様にヘバりながら走って来たとこ』 で。行ける所まで前進し、サイクリングターミナルで乗り捨てて、 バスでの帰還を勧める。 ザックの中に、試供品で貰った未使用の消炎鎮痛軟膏が在ったので、 受け取っていただく。 『女の子2人やねんから、悪い男に引っ掛からんようになぁ』(オヤジ臭い) 「あ、大丈夫です。わたし達、見るからに地味ですから」 「声かけられたの、初めてです」 ![]() 地味というより、飾りっけの無い普通の子だと思う。 汗まみれで背中にヘバりついたTシャツ。 健康的な色気を感じるのは多透のオヤジ臭さだけではあるまい。 あるまぃて! 『そりゃぁ、普通の男が普通に声掛ける覇気なくしてるだけやろぅ。 君ら、普通に格好いいと思うで』 ものごっつう汗をたらしながら、頬笑む2人は、 世辞抜きに格好良く見えた。 ![]() それ以上も、それ以下も無く、 お互いの健闘を祈り、手を振って別れる。 |
| 20020816/000630 | |
| 『ともかく完遂』 | |
| 『しまなみ街道』自転車道の総距離77.7キロメートル。 女学生2人組も言っていた通り、長く長く続く緩やかな坂道が辛い。 多透がもっと変速機に慣れていて、 ギヤ比を適切なものに出来ていたならと思う。 ![]() 今回は、愛媛県今治市かに広島県尾道市に向けて走破。 どちらから走破するのが適切か、今回の経験だけでは断言出来ない。 誰しもそうかも知れないが、 疲れながら道を行く時は“この道こそ楽な道”と思いたくなり、 道を振り返る時は“自分は困難な道を越えた”と思いたくなる。 だから、 どちらから走破するのが適切か、今回の経験だけでは断言出来ない。 ![]() 今回、77.7キロメートルを、約5時間半で走破完遂。 慣れた人が速さを目的に走破すれば、もっともっと凄いタイムを出せるだろう。 平均時速14キロメートルは、かなり下り坂に助けてもらった模様。 実際、MTBの面白さで空き地や山道に寄り道ばかりしていたから。 ぁあ、面白かった。 |
| 20020817/000631 | |
| 『みちしるび』 | |
| 途中で県境を越える事になるのだが、 自転車道路に関しては愛媛県の方が数倍は親切だ。 愛媛県内では、十数メートルから時には数メートル間隔で、 自転車道の案内表示が路面に書かれている。 自転車道そのものが緑色に色分けされている事もあり、 まず迷う事はない。 ![]() 広島県内では、案内がまばらになるどころか、 “空白域”と感じる区間が在る。 町中を走る事も多くなり、自転車専用道も少なくなる。 海水浴場付近では歩道に軒並み駐車しているので、 車道を走らざるをえない。 “大規模自転車道”という道路標識が在るのにも関わらず。 行政に関して色々と都合も在るのだろうけれど、 観光パンフには必ずといっていい程に、 “自転車でも渡れます”表記が在るし、 愛媛県側の頑張りを考えると少々残念。 まぁ、行動する側にしてみれば考えようで、 楽しめる現実でもある。 愛媛側で慣れた感覚を元に広島側で道を探す楽しみ。 この夏は道路工事の都合で案内の無い迂回路をとった事もあって、 この感覚は疲れた終盤の刺激にもなり結構面白かった。 広島側から走るのなら、 疲れた頃に親切表示になるので、これはこれで良いかも。 ![]() とにもかくにも“長さ”はかなり味わえる。 超人ではないから“長さ”は疲労を必ず伴うけれど。 その疲労と長さの中で、 “景色のカケラや積み重ねをどれだけ楽しめるか?” その測定も実感で出来るのが面白い。 |
| 20020818/000632 | |
| 『渡船海峡』 | |
| 付記しておくと、 愛媛から広島への最終橋である尾道大橋は、自転車では渡れない。 厳密には渡れない事はないのだが、自転車走行を想定していないので、 車道を走らねばならず、事故防止の為に観光協会も勧めていないそうだ。 ![]() その為、尾道へのアクセスは渡船に乗る事になる。 造船所の巨大なクレーンを見ながら“向こう岸”へ。 映画『転校生』にも出てきた、地元の重要な交通機関だ。 車や自転車も乗れる為、走破感が損なわれる事はない。 ![]() 帰りも18きっぷで帰った為、 時間制限により、あまり尾道散策は出来なかった。 丁度、 上陸した時に、さらりと通り雨。 絶妙のタイミングで疲労を霧散させてくれる。 町に在る昔ながらのお風呂屋さんに入って帰る。 下駄箱の木札に安心する。 |
| 20020819/000633 | |
| 『井蛙之見』 | |
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毎回、 異なった惹句が、日本各地の風景を写したポスターに書かれている。 今年、 西暦2002年夏の『青春18きっぷ』キャッチコピーは・・・ “自分の部屋で、人生なんて考えられるか?” 今回、 『しまなみ街道』を自転車で渡れる事を思い出して、 ろくに逡巡もせずに行ってきた精神炸薬のひとつに、 今回の惹句も在ったと思う。広告大成功。 ![]() 自分の小ささに埋没して、狭量に無自覚な日常を送るのは怖い。 ![]() “井の中の蛙”を思考する時、 人は自己防衛の為に他者に投影してしまいがちだ。 『井蛙(せいあ)海を語るべからず』は自戒にこそ活きる意図を持つ。 本来、人間の生得可能性についての流れで論じられた言葉でもあるからだ。 ![]() 旅に出たからといって何かが起こるとは限らないし、 外へ出たからといって何かが変わるとは限らない。 “いつか”なんて幻想に頼る暇はない。 既に手遅れな部分なんて沢山在る。 それでもまた、何処かに行こう。 |
| 20020820/000634 | |
| 『拘束電脳蓋』 | |
| iBookに微少トラブル発生。 電脳機能には支障無いものの、フタがロックされない事態。 ラッチのスプリングにナニか起こったらしい。 耳かきを突っ込んでみるが、状況の打開には至らない。 分解してみたい欲望がムッシュムラムラと沸いてくるが、 難解組み木細工の如く分解・組み立ての難易度が高い機種との噂。 ここは芋けんぴを齧ってガマンガマンのヒーリング。 Apple社は、大阪日本橋に即日対面修理の窓口を設けてくれているが、 ウチの機種は部品供給の都合で対面修理対象外。 サービスセンターに電話。 実に気持ちの良い応対。サービス業かくありたし。 こういう窓口の女性は、 内耳から三半規管をヱクサイトさせる程の声優風ボイス多し。 1日に何度も繰り返している応対であろうに、 無機的ルーチンワーク疲労を感じさせないのは流石にプロだ。 結果、 無償回収・無償修理・無償配送の対象と判断していただき、 ユーザー登録のメリットを満喫。 一般通念として、1週間以上の修理期間を覚悟。 ところがどっこい、48時間で帰還。 ありがたや。ありがたや。 |
| 20020821/000635 | |
| 『装甲電脳の出現』 | |
| 2002年8月。 修理経験を経た事や今後に於ける旅への持参も考えて、 多透はiBookの強化を画策。 元々、iBookは、 マグネシウム製内部フレームとポリカーボネイトボディにより、 耐衝撃性・高耐久性を実現している。 その為、従来の運用に於いては、 長距離移動に際してのみノートブック用クッションバッグを使用。 移動時の保護に関しては当該方法で必要充分であった。 しかし、運用時においては、 “バッグの寸法がタイトなものである”“ベルト・ハンドル未装着”等の理由で、 即時展開使用(クイックドロウ)時にタイムロスが生じてしまっていた。 現状打開を計り、幾つかのプランが検討された。 その中で、実現可能性および有効性の高いプランに“増加装甲案”が在った。 増加装甲を装着する事により、機体の戦闘力及び防御力を高める。 俗に言う“フルアーマー計画”である。 だが、フルアーマー計画には様々な問題点が在った。 “機体重量の増加による機動性の低下”“過剰武装によるエネルギー問題” 等を理由に不採用となったフルアーマー計画は枚挙にいとまがない。 古今東西のフルアーマー計画に於ける問題点をクリアする為、 “機体に薄ゴム板をボンドで貼りつける” “機体をエアークッション(プチプチ)でス巻きにする” “タイヤを装着” 等々の具体案が続々とリストアップされた。 しかし、 運搬利便性と放熱効果を考えた場合、それぞれに問題点が在った。 逡巡が逡巡を呼ぶ夏の夜、TVのブラウン管に1人の男が映った。 男は言った。 「アイーン」 そうか! シムラにしよう!! 多透は、 株式会社『シムラ』の開発したiBook専用金属外殻を装着する事を決意。 http://www.kkshimura.co.jp/ 『Metal Jacket Hi』 ジュラルミン製外殻が航空機の表面を連想させるニクい奴だ。 金属製ハンドルも標準装備され、運搬利便性も大向上。 外見が幼少時に憧れたアタッシュケース(スパイ仕様)に大変身。 金属外装にも関わらず、重量増加の感覚は無いに等しい。 液晶モニター裏にプロテクターを装着する事で、 開閉時の微妙な“しなり”が無くなり頑健性向上を満喫。 金属外装ゆえの放熱効果も、自らの皮膚感覚で実感。 正に“フルアーマーiBook”といえよう。 問題は、中味のデータが向上への中途すぎるという・・・ |
| 20020822/000636 | |
| 『学ぶ島へ』 | |
| 2002年8月10日〜11日 岡山県に在る島で宿泊。 島の名は『真鍋島』(まなべじま)・・・ 岡山県は倉敷の西、笠岡という町から連絡船で数十分。 “よくまなべ”というのは、島の公式(?)キャッチフレーズだ。 今回は3人旅。 とは言うものの、 多透は土曜午前中に仕事が在ったので、現地まで独り旅。 今回は“時間を買う”方針により、新幹線で急速接近。 盆休み時期に近いという事もあって、乗車率110パーセント。 乗降口での立ち乗りとなるが、50分程なので苦にならない。 ブラジル人の家族が近場で同様に。 両親と推定十歳ぐらいの美少年と祖母。 人妻は美形。自分を磨く事に気抜けしていない人。 ただ単純に立っているだけで肉体の存在感が凄い。 旦那はマリオブラザーズの弟風味。 僅かに記憶残滓の在るような言葉を聞いたのでブラジル人と推察。 学生の頃、 ブラジル人留学生美女に熱を上げたもののフラれた時の経験に基づく。 ブラジル語会話教習本を熟読したのだが、 未熟な促成栽培の知識は抜けたままだ。 それは冬の記憶。 岡山から笠岡までは快速に乗る事が出来ればすぐ。 今回は自転車予定も無いし海水浴が在るのでサンダル履き。 競歩感覚でギリギリ乗車。 倉敷を過ぎるとガラガラに。 笠岡に到着。快速に乗れたお陰で連絡船にギリギリ間に合う可能性。 船は1時間に1本。出航まであと10分。公示データで港まで徒歩7分。 サンダルでペッタンコとダッシュ。汗まみれで間に合う。70秒前。 駆け込み乗船は危険です。 ![]() 座席は、島に帰る皆様で一杯だった。 船体後部の貨物エリアに立ち乗り。 島々に運ばれてゆく郵便物や宅配便で一杯だった。 舷側に開けられた硝子窓から鼻先を出しながら行く海を見る。 鼻腔に染みて響く潮の匂いが嬉しくてたまらない。 島へ渡るという行為は、どうしてこんなに高揚するのだろう? ![]() |
| 20020823/000637 | |
| 『島で迷う日』 | |
| 真鍋島は岡山県笠岡から、連絡船で約70分。 行政区分は笠岡市。 岡山対岸の香川県丸亀市との間で、瀬戸内海上の中点あたりとなる。 岡山県ふるさと村に指定されている島内は、 昭和の面影を多く残している。 フェリーの定期航路は無い為、島には車は少ない。 船から見えたのは僅かに3台で、そのうちの1台は朽ち果てていた。 そもそも真鍋島の町並みには、車が走れるような道はごく僅かなのだ。 今まで、幾つかの島に旅をさせてもらって思うのは、 その町並みの味わいだ。 島の総面積が小さい程、町並みの濃縮感が強くなる。 多透は、この濃縮感にとても魅力を感じる。 ![]() まず港があり、そしてその周囲に家々が連なる。 多くの島では漁業が産業の中心なので、 港は生活の玄関そのものである事が実感できる点だ。 埋め立てられた人工島ではないから、 島の地形は起伏が大きいものが多い。 ちいさな島ほど、港付近まで起伏が迫っている事が多いから、 町並みは島の山に張り付くような形で濃縮される。 家々は路地でつながれてゆき、 起伏の在る地では路地に階段や坂道が多くなる。 本州で言うと、 尾道の町並みを追想していただくのが解りやすいだろうか? 坂の在る島の家並みとしては三重県の神島も味わい深い。 ![]() 真鍋島には、車も通れない程の路地が縦横に走り、 慣れない身には迷路的な魅惑が在る。 またいつか、迷いに行けたらと思う。 |
| 20020824/000638 | |
| 『校舎の窓に映る空』 | |
| 邦画の多くには、風景と物語が不可分なものが在る。 民族的に“解る”風景は、 其処に旅した事がない観客にも郷愁を与えてくれる。 そして時には、 銀幕やモニター上に映りて網膜に来る風景が、 “もう何処にも無い”事にも気付いてしまう。 そしてそれもまた“架空郷愁”の部品になる。 『瀬戸内少年野球団』という映画が在る。 作詞家、阿久悠さんの郷愁を投影した小説が原作だそうだ。 小説は未読であり、多透は映画しか観ていない。 夏目雅子さんの映画という区分でも、 『時代屋の女房』と『瀬戸内少年野球団』の2作しか観てはいない。 『瀬戸内少年野球団』は彼女の遺作である。 その事実が在り、それを知り、映像を観て、 そうして架空だった郷愁をも自分は自分の郷愁にしてしまう。 『瀬戸内少年野球団』本来の舞台設定は阿久悠さんの郷里、 淡路島西海岸の五色町だそうだ。 ![]() しかし、終戦直後の劇中時間から既に風景は流転している。 “もう何処にも無い風景”は増殖しているからだ。 篠田監督と宮川一夫カメラマンは、 3ヶ月間のロケハンの末に真鍋島に巡り会ったそうだ。 真鍋島の港に降り立ち、 案内図が無ければ何処から入ってよいのか解らない路地群のひとつ、 その細い坂道を登ってゆくと、小学校が在る。 ![]() 堂々とした木造校舎を“目撃”し、その現実と“体験”を認識した時、 “架空郷愁”の殻は破れ・・・ 自分自身の郷愁が増している事に自分で気付く。 |
| 20020825/000639 | |
| 『校庭の白い島』 | |
| 真鍋島に到着後、 宿泊させてもらう三虎(さんとら)ユースホステルに向かおうとしていたら、 道の向こうの路地から見慣れた顔が。 今回の旅連れたる2人。先行していたので迎えに来てくれたのだ。 それにしても絶妙の相対時間。旅慣れている人の能力か。 そしてまずは『瀬戸内少年野球団』のロケ地にもなった小学校へ。 夏休みの16時。 生徒の姿は見えず、 何かの物品を運び込んでおられた業者さんの軽トラが出るところだった。 そうすると、校庭には多透たち3人しか居なくなる。 なにはともあれ、逆上がりをしてから鉄棒の上に座る。 ![]() 決して大きくはない校庭だが、こうしてカラッポの地面を見ていると、 限定された空間ゆえの広さと、それ以上の広さを感じる。 石庭のようだ。 ![]() 校庭の一角には、搬入されたのか搬出されたのか、 奇妙に白い“便器”が山積みされている。 スパークする謎。我々はこの光景に無数の人生を見た。 枯山水のようだ。 三虎ユースホステルは、校舎と山の向こう側なので見えない。 そうして、しばらくの郷愁と認識を見つけた後、 校門の外から続く坂道から宿へと向かう。 ![]() まさに“禅門の便器・校門の三虎”・・・・・ |
| 20020826/000640 | |
| 『無計測山道』 | |
| 「山越えの時間ですな・・・」 夕刻というには未だ早い、夏の17時過ぎ。 “ふらりっ”という擬音が似合う程の当たり前に、 島に多々在る普通の路地から山道に入る。 蝉時雨の中、“山の匂い”が濃度を増す。 勾配は辛くない。 蜜柑畑の中を縫う様に、人幅の地道が続く。 道をつくった人々に感謝する。 蝉と鳥と虫と森の音が在りながら、空に抜ける様な静けさが在る。 黄昏に道を往けば、狐狸の類が和装美女に化身して佇む様な空色。 ![]() そうして峠を越えると、三虎ユースホステルに辿り着く。 全周囲8kmにも及ばない島だが、狭苦しさは感じない。 むしろ、短時間で島の反対側へ到達可能なスケール感が嬉しい。 “距離”と“道のり”の間には様々な位相が在る。 交通機関を活用すれば、 あたかも自分自身のスケールが拡大したかの様な錯覚を味わえる。 しかし、誤差と誤解の中に埋没するのは易く、 自ら動こうともしない梗塞した思考内で“道のり”を計る程に、 本当の“道のり”からは遠ざかってしまう。 ![]() 自力移動を積極的に楽しめる要素の在る旅は面白い。 シリアスな言葉を並べなくとも、 人間が本来“移動する生き物”である事がシンプルに解る。 |
| 20020827/000641 | |
| 『船とサントラ』 | |
| 三虎ユースホステルが意外に大きい規模である事に驚く。 もっと普通の民家然とした民宿をイメージしていたのだけれど。 昭和の地方旅館という風格が在る。 ![]() 海岸に面して建てられたYH本館の他に、旅館として経営している別館、 そして、陸に引き上げた廃船が在る。 ![]() 廃船内には『貝の博物館』が在り、物量・雰囲気ともに一見の価値充分。 繁忙期のアルバイトが本館満室の際に宿泊する部屋も廃船内に在るようだ。 あまり広いとは思えない船室を利用したものだが、 覚悟と納得を経て寝泊まりするのなら他に無い思い出となるのではないか。 今回泊まらせてもらう部屋は20畳程の広い和室で、 多透達3人と他から来られた4人組&1人の8人で宿泊。 窮屈な感じはまったく無く眠らせてもらった。 真鍋島の港口から峠を越えた海岸線、 その側に他の集落は無く、三虎ユースホステルが唯一だ。 この立地条件ゆえに、 夏の旅行者には素晴らしいメリットが在る。 その内実はまた後日後述にて。 |
| 20020828/000642 | |
| 『移動此好日』 | |
| 今回の旅行に際し、初めてユースホステル協会に入会した。 それ故に生半可な事は言えないが、 自分のリズムに合う部分が多いように思える。 ![]() 日本全国で安価に宿泊可能なネットワークは実に活用しがいが在る。 昔のイメージのような必須レクリェーション等も無く、 大部屋や相部屋(家族以外男女別室)で宿泊する格安民宿といった感覚だ。 布団の上げ下げはセルフサービスなのが共通ルール。 バスタオル・洗面用具・寝間着などは持参必要。 詳しくは『日本ユースホステル協会』のページへどうぞ。 日本には北海道から沖縄まで約350のYHが網羅されているとの事。 宿泊料金は1泊3000円前後(2食付きで4〜5000円程度)と経済的。 豪勢な施設はなくとも、 土地に密着した感じの良い宿や、個性あふれる宿が多く在る様子。 これからも色々と宿泊してみたいと自己方針決定。 今までの独り旅だと、 駅待合室・夜行列車・テント・終夜映画館・漫画喫茶等々を利用夜明かし。 それらはそれらで魅力も在るのだけれど、 素泊まり3000円程度で布団に眠れるのなら有り難い事この上ない。 自分の収入と責任で旅に出られるようになった時の、 “何処にでも行ける”という高揚を再認識する。 ![]() そう、 自分の義務と責任を認識していれば、何処にだって行ける。 これが人生の楽しみでなくて何だというのだろう。 |
| 20020829/000643 | |
| 『西行西行』 | |
| まだ陽が高い夏の夕刻。 遊歩道を行き、島の1周もしたいところだが、 街灯も無い山道を進むのは流石に無謀。 この1週間前に、しまなみ街道の自転車走破をした事もあり、 今回は心身伸展弛緩の目論見でもある。 太陽は、西に行く。 先刻の峠越えで見かけた西行法師の歌碑が、 刻々と夜の陰影の中に誰も見ぬまま入る様を想像する。 三虎ユースホステルには、海岸に向けたテラス席が在る。 白い樹脂製の椅子に腰掛け、缶コーラを少しずつ。 ![]() 太陽は、背後の山のその向こうだ。 遙か1億4960万km。 毎秒29万9792.458kmで駈けてくる光も、8分19秒かかる。 海に向かって座ると、四国に向かって座る事になる。 引き潮。 海岸の浮き桟橋が、弛緩するように波打ち際へ着地している。 ふらりと、その桟橋の先まで歩き、深呼吸。 そしてまた帰り座る。 |
| 20020830/000644 | |
| 『はえるもの海に』 | |
| 虹を見た。 海上の虚空に架かる、三連の虹を見た。 ![]() 不意の架け橋に、鳥肌がたった。 虹の卵が続けざまに羽化裂したようだ。 ![]() 旅の道連れは、綺麗なものを素直に綺麗と言える人だ。 多透も、稚拙な語彙で美しさを喋り続けた。 ![]() 幾度も虹は味わってきたつもりだったが、 これ程までに鮮やかで多重なものは初めてだった。 ![]() 水面に近い位置から観る虹は、異様なぐらい根元まで見えた。 様々な物語で“虹の根元”は“人が触れてはならぬ場所”だ。 ![]() ゆるやかにそうして上の虹から消えていった。 |
| 20020831/000645 | |
| 『三虎トラック』 | |
| 島の夜は早い。 19時からの夕食を終えて、外は暗く遠くなってゆく。 ![]() 今回の旅に於ける個人的メインイベントに向けて、待機。 先刻、虹を観たテラスにて再び悠々時間。 島の半身には三虎ユースホステルしか人家が無い為、 対岸の灯が良く見える。 遠く左側に瀬戸大橋。走り流れる車の灯。 右手遠くには香川県丸亀市辺りの町の灯。 空には大阪より数倍化して見える星の光。 突然、 彼方で破裂音がしたかと思うと、丸亀市方面に花火が上がる。 無数連続した花火が遠くに音もなく上がってゆく。 先程の音は、風の影響で光速と音速の差が体感できたのかと思案。 続いて音々は聞こえなかったので、島内で誰かが上げた花火が、 偶然にシンクロしたのだろうと結論。 海と夜を間に挟んで、遠くで、光だけの花火が上がってゆく。 宮島の厳島神社で、船上から打ち上げる花火大会を観た事はあるが、 このような距離から対岸の花火を観るのは初めてだ。 観光用の宴会船だろうか? 中型の船がイカ釣り船の如く煌々と灯を輝かせて沖をゆくのが見える。 瀬戸大橋をくぐって九州方面へ行く大型フェリーの灯が見える。 5月の連休に乗った船と同じ航路だろう。 その時に、真鍋島の旅は未だ計画されていなかったので、 よもや自分が、あの船をこの島からの視点で見るとはと感慨。 時を経ないと得られない視点は多々在るものだと思う。 移動せずとも、脳内で自己成長や思考熟成で得られる視点増加は在る。 しかし、自分の旅が拡大する事で、 かつて旅した場所を、別時間と別空間から見直す事が出来るのなら、 それはとても面白い事だ。 遠雷。 花火よりも遠く高い空の一角が輝いたかと思うと、遅れて雷鳴。 今度こそ、光速と音速の速度差。 夜空の雲の中、幻夢の如く稲妻が見えた。 ![]() 記憶刻印する脳内でも、シナプスに電雷。 |
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