『カリガリ街路』20010801/000248 ひさしぶりにカリガリっぽい夢を見た。 『カリガリ博士』 DAS KABINETT DES DR.CALIGARI/1919年/50分 ドイツ表現主義の傑作とされているが、 多透は不勉強な為、映画史における重要度を良く知らない。 人類史上最大の犯罪が秘かに助走を始めていた時代の映画。 高校の時、やっと手に入れたビデオデッキ。 自転車で往復1時間走ってレンタルビデオ。 いや、深夜TVの録画だったかも知れない。 モノクロの世界。 “眠り男”チェザーレを連れて旅するカリガリ博士。 タヌキの如き胡散臭い風貌の博士。 “箱”の中で眠る男。 タイトルだけは、ずっと頭の中にあって、 物語の断片も何処かで読んでいたけれど。 最初に読んだ表記が、そうだったのか、 “チェザーレ”よりも“ツェザーレ”のほうが、 何かしっくりくる。 そして、其処に在る、“傾斜した世界”・・・ 家も壁も窓も屋根も木も道も、全てが斜めに歪んでいる。 そこかしこに在る三角の模様。 歪んだ椅子の前を、歪んだ街路を、 人々は奇妙に緩やかな動きで彷徨うように歩き、住む。 夢幻の虚構の中でも、何故か感じる奇妙な現実感。 それが、 どれほどの計算と緻密の量で配置されたものなのかは知らない。 しかし、 歪んでいるのに美しい。 もともと、夜見る夢の中で世界は無自覚に歪んでいる筈だ。 ヒトの記憶は歪んでゆくのだから。 それを突き詰めると、このようにも“見える”と、 ひとつの解を突きつけられたように興奮した。 それから時折、 あらかじめ奇妙に歪んだ街路を歩く夢を見るようになった。 ベニヤ板のような背景。 その薄い筈の壁が、異様な実在感を持つ。 視覚平衡と重力平衡に誤差が生じた時、人は姿勢を歪ませる。 遊園地などにある、“坂道を上るボール”や、 “まっすぐ立っていられない部屋”の感覚だ。 その違和感と、意外な現実感の中で、歩く。 夢の中だからこそ味わえる奇怪。 そうこうしていると、 なにやらとても大切な事に気づいたような気がするのだ。 ただ、目が覚めると忘れてしまう。 やっと、フィギュア原型制作が細部の煮詰めに突入。 乗り越えたらば、物語創作と、もっぺん向き合おう。 其処も自分の迷宮だ。
『ゲンコク山のタヌキさん』20010802/000249 現代国語は、 多透にとっては珍しく高得点が稼げる教科だった。 今となっては、そんな事、 屁のツッパリにもならないが。 小学校高学年の頃、何処か増長していた多透は、 担任の先生に、言ってみた事がある。 「物語を解体して、 一部分だけ漢字とか文法がどぉこう言うのに、 何の意味があるか、わからんのです。 作者も、そんなん嬉しないと思います」 先生は、ちょっと困った顔をして言った。 『そやけどねぇ・・・ みんながみんな、キミみたいに、 ほっといても本読む子ばっかりとちゃうしねぇ』 「それやったら、 集中して物語を読む時間をつくったらええと思います」 『そうかも知れへんねぇ・・・ けど、それで本が好きになるかは別やしねぇ』 先生、ごめん。 俺、なんも解ってなかったわ。 もちろん、いろんな意味でやけど。 少なくとも、文法知識滅茶苦茶やわ。
『はがくれんぼう』20010802/000250 中学に入ると、気になって仕方がなかった。 普通に自分の中でよく解らない部分が出てきてるのに、 普通のありふれた中学生としてダラリとすごす中で、 自分の、頭ん中の言葉と、 クチから出たり出せたりする言葉の誤差。 カッコワルイなぁ。 作文やら答案の端々に、そんな気配でもあったのだろう。 国語教師(♂)が、言った。 「なんか、俺の若い頃に似てるのぅ」 ・・・んなこと言われても、 そんなん、先生と俺は違う人やん。 物真似を商売にしてる人らは努力してるんやろけど、 俺、一般人やもん。 誰かに似てる言われて調子に乗るのんなんか、 ガキのする事やと思うわ。 それに、男にモテてもしゃぁないわ。 男子中学生のイキドオリやらなんやらで、 多透は、ちょいと、国語教師(♂)と距離をとった。 でも、 小学校の時の質問を、もっかいクチにしてみた。 『そんなん当たり前やんけ。 俺らかて、ちまちま分解して教えてても、 おもろないもん』 「あ、そぉなんですか」 『まぁ、無難な答え方したら、 この先何が役に立つかわからんから、 まぁ、やっとけ』 「ぜんぜん役に立たへんかも知れん訳ですね」 『そらそぉや。 そやから、大人になったら解るとか言わへん。 でも、考えて大人になるヤツは強いで』 「そんなもんですかね」 『『葉隠』っていう本になぁ、書いたぁる。 “自分の目で見た事だけで全部って思うな”って。 オマエみたいなヤツは、 いらんぐらいいろんなもん見とけ』 先生、ごめん。 俺、まだまだ、見るのん足りてへんわ。 けど、 もっと見てみるわ。 ごめん。
『アリタリアン』20010804/000251 時代の目が、世界陸上を、そして幕張とかを、映していた時、 知られざる第2戦線とゆうほどでもない作戦が進行していた。 多透は海水浴に行っていたのである。 目標、有田。 そう、和歌山県の有田である。有田みかんである。 しかも珍しく大人数旅行である。車である。 両親も一緒である。運転は親父が引き受けるのである。 ドアtoドアで楽々移動である。 無論、両親の経費は全額多透もちである。 しかし、普段から世話になってるのである。 そのぐらいで恩返しとは片腹痛いのである。 到着後は基本的に各自別室&自由行動となるのである。 ネットで予約した時には、 “プライベートビーチ”とか“ホテル専用プール”とか、 ゴォジャスな単語も見たような気がしていたのである。 2時間もかからずに、『有田観光ホテル』に到着である。 ナイス! ナイスですよ沢田さんっ!!(誰?) 流石は昭和42年に建てられただけの事はあるのである! いけるッ! 適度にウェザリングされたロビーの壁画とかを見た瞬間、 なんやよぉ解らん確信が気持ちとかを貫いたのである。 和室!海に面した窓!窓際の板の間!小さいテーブル! フェルト地の古びた小さいソファー!年代物冷蔵庫!! 年期の入ったカーテン!窓を開ければ蒸せる潮風乱舞! クーラーからそよぐ独特の新しい畳っぽい香り!金庫! 年月を経た感はあっても、きちんと清掃された空間!! そう、なんか的確に“ひなびた”印象が快楽原則的中! 決して皮肉ではないのである。 民宿や国民宿舎には数多く泊まらせてもらってきたが、 “ホテル”を名乗る大規模旅館でこの雰囲気を持つとは! なにやら久しぶりの心地良さ満喫であるっ!! しかもジャングル風呂! そぅ、ジャングルですよ奥さん! 海に面する斜面に建てられている地の利を使って! 一般家屋の4階建てぐらいの上下空間移動可能な風呂! なんか空いてますよ! しかも、すべり台までありますよ! 『子供用です。大人はすべらないでください。怪我をします』 注意書き付きですよ! えぇ、勿論【以下略】 ・・・・・ぁあ、そぉですね。 “ホテル専用プール”ですね、奥さん。 『千と千尋の神隠し』に出てきそうな屋外階段を行くんですよ! これまた年期の入ったコンクリ階段でして、 周囲は正にジャングルですわ!! しかも目の前は太平洋!! 見渡す断崖を覆う、植物群! 使用されてなさそうな旧館へ向かう非常階段! 幾年も誰も降り立っていないような草むら! 嗚呼、自分はこれほどまでに、 “時に忘れられたような空間”が好きなのだと再認識っ!! 磯っ!! 磯にね、降りられるんですわ! 難解な土の細道づたいに! コンクリの突堤が少しだけあって、釣りしてる人が居て。 岩陰で冷やされて少し冷たい海水が波で泡だってて。 つまりこれが“プライベートビーチ”?!【詳細不明】 プールは、海をスグに見下ろす事のできるトコにあって。 50メートルプールが、貸し切りですわ!キューッ!! しかも、 プールのギリギリまで押し寄せる植物群! 何十年も人が触れてない風貌のコンクリ巨柱が山肌に屹立! そのザラザラの表面と磯の巨石を交互に見ながら、泳ぐっ! プールの水は綺麗! 人が少ないせいか?!でも清掃万全! プールが閉まるまで、 1時間半ぐらい泳ぎまくり! 潜ってても誰の姿も見えない水中空間ッ!! 気の済むまで全速で泳いでも誰にもブツからないっ!! 背泳で泳ぎ疲れた流れのままで、 ゴーグルをつけて、肺の空気を出してゆく。 ゆるやかに身体を沈ませてゆく。 ゴーグルのプラスチックと水面越しに青空を見る。 静かの中で、我慢できるまで自分の鼓動を聴く。 浮かび上がっても、青空。 廃墟を思わせる、使用していない小屋が見える。 水面に出た途端、蝉時雨が降ってくる。 まるで世界の終わりに、 取り残された実験施設のプールで泳いでるみたいやった。 なにやら自分のココロに豪勢な贅沢をさせたようで、 やたら長い階段を駆け上って帰った。
『地の果ての島』20010805/000252 なんか、料理はやたら多かった。うまうま。 客室に、何故かパズルが常備されていた。 『The-T』と名乗るヤツ。 形状の異なる4つの木片を組み合わせて“T”字形を作れ! 遙か昔に解いた筈だが、苦戦。 シンプルゆえに解答が見えにくい部類のナウいヤツだ。 苦闘20分で“T”はクリア。 だが、他の例題も書かれていたのだ・・・ 外泊しようがしまいが、 休日前夜に早寝できない習性になってしまった我が身。 ホテルの廊下を徘徊。 むわむわの潮風とかを、鼻が痛ぅなるまで吸いまくり。 窓辺に座ると満月っぽいのが正面から波を照らす。 なんやかんや書いたり描いたりして過ごす。 あと、時々『The-T』もいじる。 ほっといても朝は来る。 なんか、朝ご飯も多い。 いざ、無人島へッ!! ちょいと移動したトコから渡船に乗り、 島の海水浴場に向かうのである。 『地の島』という名前は、 もっと大阪寄りに位置する『友ケ島』にも在る。 きっと世の中にはもっと数多くの、 “地の島”“沖の島”が隠されているのんだろう。 途中、食料を買い込み、万全のアリサマ。 既に蛍光グリーンな海パンは装・着・済、だ。 船に乗ってる時に進行方向にクチを開けてると、 潮風を食ってるみたいで、えぇこんころもちやぁ〜。 人出は多からず少なからず。 寂しい感じは無いが、 10メートルも沖に出ると“ぢぶんだけの海”に到達可能。 よぉ解らん小こい魚が仰山おる。名前はハゼしか不明。 やはり海では水中眼鏡とシュノーケルが必需品。 透明度はそこそこあってくれているので、 ぷかぷか浮かびながら海底の砂とかボケーっと眺める。 気分を変えて海底から水上の太陽光を見る。 光の紋様だけでも、なんか本能的に全然飽きない。 水深3〜5メートルぐらいのトコで、 2時間ぐらい浮きっぱなしで遊びまくり。 あと、浅瀬でヤドカリ集めたり。 あと、海底からヒトデ拾ったり。 あと、ウニ発見して岩で割って食ったり。うまうま! 浜の奥の防波堤。 コンクリ階段を越えると掘っ建て小屋の便所。 冷たい水で頭を洗う。 顔を上げると、低く長く遠くコンクリの古い壁が続く。 人工物が在る風景ゆえの郷愁。 飛び出して来たバッタにビビる。
『水色的衝撃』20010806/000253 すっかりと体表がライトブラウン迷彩になる。 Tシャツを着るのも擦れて痛い。 なにやら鼻の頭皮もムケてきた御様子。 夏。 そんなこんなで。 すっかりと『ワンフェス』の事を、 なんとなしに忘れてたつもりではいた、が。 最近脳内流行中の、大石まさる氏作品のひとつ、 『くノ一はおデコだぜ!』のホタルちゃんを、 出品されていた方が居られたとはっ! だぶさん、チェックですよぅ!! http://homepage2.nifty.com/~zan/nekoban/ つい先日、実は多透も スカルピー焼き待ち時間にトライしてみたキャラですが、 顔のラインが全然ッまとめられずヘコんでたトコなのに。 今風の立体把握で上手くまとめておられるのが凄い。 彼我の実力差はいかんともしがたく、無念。 まずは目の前のブツを仕上げてから、もっと努力しよう。 大石まさる氏作品のキャラクターは、 量産とか考えずにトライしてみるつもりです。 『泥棒猫』のマック&ユーリとか。 先日、ゴッコちゃん【仮名】(難儀な旧友)から・・・ 「あんたの好きそうなんやからとりあえず見れ。 そしてもだえるがいいのさ。」 と電文が。 ボク、素直やから・・・ 短編集『空からこぼれた物語』(掌編良作満杯満腹) 『みずいろ』全2巻(難儀かつ魅力的少女) 発売したての『泥棒猫』第1巻(衝撃の交代劇) イキオイで連・続・粘・讀。 以前、日記で比喩に使った、 “田んぼの泥からの足の抜きかた”とか。 大好きな夏の空気感とか。 自分で走ろうとしてるヒロインとか。 多透が手に入れそこなった生活とか。 ええ。 しましたとも、悶絶。
『あの娘は金メダ』20010807/000254 『世界水泳』『世界陸上』と、 肉体美や肉体能力の観察勉強にソウルフルな映像の日常。 フィギュアつくってるせいか、今年は過剰に面白く観る。 『世界陸上』は、 選手各人のプロフィールとか結構細かく紹介してくれてて、 感情移入というか“キャラ燃え”しやすいのが良好。 もぉ、“国家を背負って”って感じではなく、 “個人としての凄いヤツ”として見る事ができるのが、 陸上の面白いトコだと思う。 “金メダリスト女子高生”とかも出てきたし、 “女王”は複数いてはるし。 マリオン・ジョーンズかわいいし。 あの肉体で蹴られたらヤバそうだし。 嗚呼、 ニンゲンの肩関節って、なんであんなにエロいんやろぅ? 女性選手って筋肉つけててもプロポーション崩れないし。 ええなぁ・・・ あと、 プロポーションといえば、変なプロポーションのアリ発見。 昼休みに職場前に水まきしたついでに、 隣りの植え込みでアリの観察。 うきょ? なんか、腹部の上面形状が異様に四角いアリ、が。 最初は腹が切れてるのかと思ったぐらい。カクい。 周囲に仲間は見あたらないものの、昔に見たような気もする。 早速、『アリ類データベース』で調べてみる。 ぅっわぁ。こんなに細かく分類できるですか! 日本にいるアリは262種類とかですか! にもかかわらず、まだまだ足りてない奥深さですか! ボルネオ島では300種を越えますか! 流石、蟲の星っ! されど、今日のヤツは、詳細不明。 多透の調べ方と記憶が悪いのんだとは思う、が。 もしや・・・ロボか? http://kids.gakken.co.jp/kidsnet/world/creature/insect.htm
『iターン・ジョニー』20010808/000255 たとえば、『泥棒猫』のマック&ユーリは、 それぞれの事情で“手に入れられなかった青春”を、 取り戻すかのように人生を楽しもうとしています。 そういうの、 遅すぎるとか滑稽だとか疲れるだとか面倒だとか? それよりも、 なによりも楽しんだら、自分に対して勝ちなのか? 価値観は人それぞれなれど、 人生は有限。夏も有限。 「人生いそぐことないよ」「ぼちぼちいこう」 「ゆとり」「やすめるだけやすめばいいのよ」 やさしい人は、そう言うし、 嘘つきだって、そう言うよ。 動かないと身体は腐ってゆくし、夏は終わってしまう。 そしてそんな理屈よりも前に、 この昂揚は、なんなのだろう? そしてそれが夏でございます。 脳内に設置された“夏色テーブル”の、 白いテーブルクロス上のそのまた上で、 なんのへんてつもない“夏コップ”が、 たぷたぷの表面張力で揺れております。 そのようなわけですから、この夏もまた、 海に!陸に!(【注】空とか地底はまだ) 祭とか花火とかプールに遊んでおります。 夏にハシャぐのは毎度の事ながらも、 脳内学園の女子(落描き将棋部)に、 「あの子、結構遊んでるよねー」と、 夏休みの学食で刹那だけ噂されたり、 最寄りの霊山から異能力巫女さんが、 いたずら夏心な遠当ての気合い一発、 コップの破壊をたくらんでるカモネ!
『無音花火』20010809/000256 【8月11日(土)】 いきなり日付がズレているのですが、コミケに行ってきました。 とは言いましても、土曜の多透は昼まで仕事があり、 午後からの出発。 コミケ3日間のうち、日曜のみの突入であります。 だぶさんが諸般の事情で遅れるとの事なので、 新大阪18時頃発となる。 調子にのって早く着きすぎてしまった多透は、 駅構内をウロウロしたり『ヘミングウェイ短編集』を読んだり。 行楽客とスーツ姿の出張戦士のコントラストが鮮やかな駅風景。 かなりの乗車率を覚悟する。 『ヘミングウェイ短編集』は“ニック・アダムズ物”を集めたり、 『殺し屋』とか『キリマンジャロの雪』とか入ってるやつ。 おそらくは原文に忠実であろう、 必ず“・・・た。”で終わる文の積層。 中学生の頃は「現在進行形が無いのは居心地悪いねん」などと、 エラそうにしていたが、今となれば何か心地よい身勝手な自分。 新幹線は楽々着席可能。 出発時間が遅れたのが結果的に良かったようだ。 『赤福』も食べるよ。うまうま。 だらだらと会話し、明日のサークルチェックを互いに確認。 コミケ初体験な多透としては、今回、“見学”を念頭に置いた。 長谷川裕一先生の『スタジオ秘密基地』本を最優先目標とする。 それ以降は会場の空気を体験しつつ、ゆるやかに巡回野望。 だぶさんの手書きメモ満載のチェックリストを拝見し驚愕。 「や、このぐらい普通ですよ」との事。 豪雨の為、静岡付近で全線停止中のアナウンスで驚愕。 京都にて約30分待機。焦ってもいたしかたない。 窓の外にも雨が見え始める。 走り始めた新幹線の加速で、硝子の外を水が流れてゆく。 だぶさんが睡眠ワールドと現世を行ったりきたりしている。 チャンス! この隙を突き、ネタ帳に小説を殴り書きする。 走る列車。 移動体は創作領域を刺激する。 すんごい大きな字と改行連発なので、すぐに4ページ程埋まる。 濃縮された数分間に、なんぼでも言葉が出てくる。 こんな事なら速記を学んでおけば良かったか? ちっ。 見た目は多透自身にも難読となる“多透文字”なので、 土産売りの娘さんには自動書記に見えたかもしれない。 通路の向こう側の座席では小学生が『遊戯王』を読んでいる。 走る列車が、何処とも知れぬ町を通過する宵闇の中、 進行方向に、不意に、花火が上がる。 稀少な偶然。 硝子と雨の向こうで、音も聞こえないままの花火が上がる。 そうして、打ち上げられた花火の大輪を、 回り込むように、 自分たちの視線と列車は走り抜ける。 世界は面白い。
『カプセルチャンス在中』20010810/000257 【8月11日(土)】(2) 豪雨で遅れた新幹線は、 途中で10分遅れ程度まで追い上げつつも、 最終的には20数分程度の遅延で到着。 先行列車との兼ね合いと思われる。 このような時、 先行列車との合体技で乗り切る事はできないものか? 車両前面のパネルラインが“ガきょッ”と展開し、 毛むくじゃらの腕が出てくるのだ。 そぅ、渡部綱が持ってきたアレをクローン量産したヤツだ! 握りあう手と手。ぬくもりを感じあう、JRの仲間。 それはさておき、上野駅前でハヤシライスを食す。 百円増しの大盛りの筈が、断固として大盛りサイズでは無い。 武士は食わねど高楊枝。東京の人は小食と見つけたり。 コンビニ補給の後、カプセルホテルへ。 何軒か並んでいたが、3600円が相場の模様。ビバ・カプセル! 行くぜ!風呂直行!! 早朝出発を覚悟している以上、漫画喫茶宿泊策も考えられたが、 夏場で汗を流したいのは嘘偽りの無い本音とゆう事、 そしてコミケカタログでイラストの嬢ちゃんが、 「せめてシャワーぐらいあびてこい」と言ってはったので、決。 そのような訳で、カプセルホテルのロッカーは縦型である。 全高だいたい20メートルぐらいある。 扁平な人なら、ロッカーで宿泊できる可能性は高い。 “ロッカーホテル”と名うてば、諸国のパンクロッカーが集結。 だぶさんは特殊兵装の大半を駅ロッカーに格納済だったものの、 自分がロッカーに入るのは無理だと判断したのか、荷物を入れた。 行くぜ! しかるのちに風呂直行!! 結構な人数が泊まっている筈なのに風呂が空いてる22時。 しかし、その瞬間にも運命とかのギミックは動いていたのだ。 行くぜ!カプセル・イーン!! ・・・しかし。 だぶさんのロッカーが開かないというセンシティブな現実が来訪。 差し込まれた鍵が半分も入らない先っちょだけ。 ・・・罠。 運命はいつだってカプセルホテルとかにも仕掛けてくる。 従業員男子に来ていただく。 トレーディングカードにハマりそうになった彼女を制止した結果、 今までのようにただの幼なじみでいられらくなったような男子だ。 マイナスドライバーを果敢に駆使し、 半回転位置で止まっているらしい鍵シリンダーを動かすココロミ。 ・・・ピッキング犯罪には向いていない男子のようだ。 「しばらく時間がかかりそうですので、ソファーでお待ちください」 嗚呼・・・ロッカー室の外まで破壊音が響いてくる。 新工具、投入。 そうだ。そのとおりだ。男子。 マイナスドライバー思考では運命の扉は開いてなんてくれない。 もっとポジティブかつ破壊力のある工具でハッスルするのだ。 ・・・十数分後。 ぼくらは根こそぎ剥がされた鍵パネルを見た。 ありがとう男子。 いまこそ!カプセル・イーン!! ロビーの雑誌とかを連れ込んだり、書いたり描いたりして遊ぶ。 その間、だぶさんが何をしているのかは知る由も無い。 静けさが保たれたカプセル群の片隅。 週末の夜、イカス環境ですぐに眠るのは勿体ない。 宿泊カプセルは気軽に宇宙飛行士気分を味わえるアイテムだ。 “あったかもしれない未来”・・・もしくは、 “何処かの宇宙で在る筈の未来”で、みんなコレで寝てます。 午前1時半だか2時ぐらいに寝る。 目覚ましは午前4時半にロックオン。
『禁じられた体育座り』20010811/000258 【8月12日(日)】(1) 午前4時半、起床。 よくわからない迅速さで身支度とか鼻毛チェック。 外へ、ただ、外へと向かう。 宿で、通りで、独特の気配が増殖してゆく。 フフフ・・・おるわ、居るわ・・・ 今日、これから鬼となり修羅となる者どもがよぅ・・・ ぁー。 でも、そうゆう人たちは、もちっと早くから出てるですね。 ごめん。ごめんなさぃ。上野駅からもぉ始発とか既に発進。 新木場駅の切符売場で既に大渋滞。 コミケに向かっている筈が、天神祭の記憶と合体変形する。 ここではぐれたらグッバイだぶさんだ。 ・・・ミッシェル? ・・・・・ミッシェル?! 無事、会場付近へ。 午前7時。既に膨大な人数が集結している。 空は白と灰色。 “トウキョウニハソラガナイ”とはこのことか。 並んだのは30番目ぐらいの束。 ひとつの束が4列で1千人ぐらいであろうか? なにやら、ホロコーストを連想してしまう。 しかし、整然である。 薄っぺらい虚勢を張る暇もなく、素直に凄いと思う。 これほどに膨大な人数が“同人誌”という接点に集結とは。 女性人口は、コミケ3日目の、 “創作・ギャルゲー”という大胆なジャンル区分のせいか少ない。 この白い空の下で、男密度はかなりのものである。 上空から観察すれば、巨大なる“男集積図形”が見えるであろう。 だぶさんの適切な判断に基づき、列の先頭部に並んでいたので、 圧迫感がなく、広い場所で爽快では、ある。 そして空が泣く。 傘はある。 ジワジワと増殖する水たまりは何かの象徴であろうか? ・・・いゃ、ただの水たまりだ。 半透明ゴミ袋での体育座りは困難と判断。 駐車場のアスファルトで照り焼きになるよりもまた良し。 されど最大推定水深2.5センチの水たまりが各所に出現。 傘を装備していなかった若者が、半透明ゴミ袋を被る。 そこまではよくある光景だが、みるみる水蒸気で曇ってゆく。 「さ・・サンソがっ!!」 若者は耐えきれず5センチほどの窓を開ける。 白く曇ったゴミ袋が空気窓をフルフルさせてしゃがみこむ姿は、 苛烈なまでにソウルフルだ。 エレジーとはこの事か。 ちょうど救護所の近くに並んでいたので、 体調不良の幾人かが車椅子で搬送されるのを目撃する。 視界の向こうでは、仮設トイレに延々と列が形成されている。 それもまた、苦闘であろう。 こうして開場を待つ間にも、 様々なサイズと形状で戦いがあるものだとぼくはおもいました。 だぶさんと交代で散歩に出る。 小雨が降ったり止んだり。 バスが行き交う、土がそのままの広場を通り抜け、東京湾を見る。 振り返るとスカイパーフェクトTVの巨大アンテナ。 なんと、そこは“男のセカイ”であった。 壁のように並ぶ植木の陰が、男子の小便場と化しとったのんです。 そして列は動き出す。 会場に接近するにつれて、既に、 “大手”と呼ばれるようなサークルに長大な行列が在る。 雨の中、その列は確実に長くなってゆく。 今回の姿勢が“見学”であるのは、素人多透には適切であった。 まず、見せてもらおう。 まずは、それからだ。 既に“見て”、動いている人間が、これほどまでに居るのだ。 そこにどのような恣意があれ、求める為には努力と代価が要る。 求めるものが重要であれはあるほどに自己動作はより多く要る。 個々を見れば、嫌いな人も不様な人も居るのだろう。 しかし、此処に居る以上、動きに来たのは事実なのだ。 動こうともせずに小さな自分だけの場所で屁理屈を言うよりも、 ずっといい。 開場約30分後、我ら突入す。
『太刀魚の風景』20010812/000259 【8月12日(日)】(2) 膨大なる人数が右往左往または一定方向に競歩する場。 そうですか。これがコミケ会場内部とゆうものですか。 領域が異なるものを同軸に比べるのは愚と解っていても、 ワンフェスとの規模・人数の違いに驚愕。 もっとも、ワンフェスも2000冬しか行ってない素人だが。 第一級最重要目標とした、長谷川裕一先生の本を得る為、 『スタジオ秘密基地』に直行。 5分も待たずに購入成功。ありがとうコミケの女神さま。 これにて、多透内部の完遂目標が九分九厘満たされる。 単純なものだが、これで気分がカナリ楽になる。 ここにて、だぶさんと散会。別行動となる。 だぶさんは、きっとこれから鬼となるのであろう。 多透といえば、なんか、もぉ、ユルヤカなキモチに。 ふらふらと『炎プロダクション』『CHOCOLATE SHOP』に。 どちらも一段落した時間帯だったらしく、5分も待たず。 そうして右往左往しつつ、散策。 面識は無いが、 造形家としてファンである『侵略ロボ』の島本さんの所へ。 完売、無念。 カタログには明記されていなかったものの、 自作キャラクターのフィギュアGKを販売している所が幾つか。 たいそう刺激を受ける。 きっと、探せばもっと拝見できたのであろう。 冷房は、まずまず効いている。 トイレも並ばずに用を足せる。 時折、あれよあれよあれあれあっはーんな感じで、 渋滞に巻き込まれる事はあるが、思ったより楽に歩ける。 人数は多いものの、皆、目的意識がある為、 混乱がないのであろう。 勿論、ぼぉっとしていて良い訳ではない。 「通路で立ち止まらないでくださいっ!」と、 コミケスタッフの方々が各所で叫んでくれている。感謝。 幾度か、女性数人に激突されたり寸前回避したりする。 不思議と、野郎には激突されない。 多透自身の本能的な激突選択回避の現れなのか? 男女で混雑状況での激突回避意識が異なるのか? まぁ、それもまた良し。 そのような感じで、比較的楽ちんに東館の散策を完遂。 西館へ向かう事とする。 だぶさんに連絡をとろうとするも、 この混雑で当然、携帯電話が繋がらない。 国民の半数以上が所持する中、 いまだに携帯電話を持たない多透には念波しか方法が無い。 この状況では、たとえ伝書鳩が居たとしても可哀想だ。 西館への連絡通路は流石に大渋滞。 企業ブースとかコスプレ場があるせいか? 東館へと出動してゆくコスプレ美人達に癒される。 誰もが前方と足元を気にしながら歩みをススメてゆく。 この状況で天井を見上げていればタックルを喰らう。 “トウキョウニハソラガナイ”とはこのことか。 理科の教科書に出現するレギュラー語句の中でも、 猛烈に好きなものののひとつ“あたためられた空気”・・・ しかし、この状況におけるそれは正直・・・ いゃ、それでも空気は空気、空気差別はよくないのでは? ・・・だがしかし・・・ “あたためられた空気”は物理法則により上方に向かう。 太刀魚の身は柔らかいので、煮込みすぎると難儀という。 もし、空中を泳ぐフライング太刀魚が会場内に居たならば、 誰にも知られずに難儀していたであろうことよ。
『コミケエッキス』20010813/000260 【8月12日(日)】(3) このようなイベント会場における、不可思議な散財。 500円・1000円の値札が“ふつう”な為、貨幣価値が変化する。 いつの魔にやら、まずまず使っていたようだ。 しかも、気が付けば、企業ブースにて、 知らない格闘ゲームキャラGK特価1000円也を買っていたりもする。 しかも、べつに惚れているわけでもなんでもないとゆぅのに、 コトブキヤ製1/8『リン・ミンメイ』特価1000円とかすらもッ!! やはり魔性の女?! あと、何故か『BEATLES』の缶バッジ10円也、とか。 『トゥルーラブストーリー』関連の同人誌は、 ネット画家が集まってつくったCG集とかを購入。 いわゆる18禁本は検索せず。生身がいちばん。 区分は18禁なのかどうか存じませんが、 『仮面ライダークウガ』やおい本が異様に多くてビビる。 でも、冷静に考えれば、 “男の子むけ”の本の方が圧倒的に多いので、 とやかく言える筋合いではないや。 結局、コミケ会場での出費は、 総額2万円ぐらい。 あと、何故か、コミケ会場内に居る間、 『仮面ライダーXのうた』が脳内で自動リフレインしてました。
『半パン VS チクビ』20010814/000261 【8月12日(日)】(4) まぁ、そんなこんなで、会場を歩く。 半パンの素足で。だらりと。 かつて、会場が晴海だった頃、 異常なまでに会場内が高温だったと、何処かの何かで読んだ。 その記憶もあったし、なにせ夏なので、 今回は半パン&サンダル履きのイデタチとしたのだ。 サンダルは、カカトもベルト固定できるブツなので、快足。 “踏まれる事”さえ回避できれば涼しく良好。結果、踏まれず。 こんな事なら、黄色いアロハも用意するんだった。 服装といえば、 幾人かコスプレデェの方々、乳首シャドゥが見えてたですね。 白いレオタードとか、痛ぉないですか? “見える・見えない”に関する御本人側の意識としましては、 以前・・・女友達(匿名)に・・・ 「羞恥心なさすぎんのもあかんと思うけど、 変に意識しすぎる男も・・・ねぇ。 男かてワキ毛見せほうだいやん。あの方が下品やで。 触られるわけとちゃうねんから、乳首やパンツぐらい、 偶然見られても乙女は傷つかれんでぇ。 いちいちガキみたいに喜ばれても、なぁ。 どゃ? 見るか? 見んのんか〜ぁ?」 ・・・と、すごまれた事があるのんで、 理論はよくわからないものの、なんかそういうものかもと、 人権を尊重しつつ思っております。はい、善処いたします。
『噂のパワーアーム』20010815/000262 【8月12日(日)】(5) コミケを語る文章とかで時折みかける・・・ “毒電波受信中の人”“臭気兵器を装備した人”等々には、 幸運なのか遭遇しなかった。 だからといって、 “それは歪められたコミケ幻想である”と断言はしない。 自分が目にしていないからといって、 戦争が存在していない訳はないのだ。 不可知存在といえば・・・ “すねこすり”という妖怪が居る。 姿は見えないのに、足元をこすりながら通り過ぎてゆく何か。 水木しげる先生は妖怪図鑑において猫のような姿を描いた。 多透は、実は、小学生の頃、“すねこすり”に遭遇している。 近所の神社をひとり歩く黄昏時、大木の間を抜けようとした時、 足元を“姿の無いもの”が通っていったのだ。 それは半ズボンの素足に、ビロヲドのような子猫のような、 異様に柔らかな毛皮の如き感触を残して通り過ぎた。 冷静に考えれば、“それ”は小さなつむじ風のような、 大気流動であったのかも知れない。 しかし、そのあまりにも柔らかくなめらかな感触に、 水木先生の描く猫姿を思い出し、猛烈に感動したものだった。 先日、コミケ会場にて“男子との激突は無かった”と書いた。 しかし、ニアミスというか、軽い接触は幾度かあったのだ。 そう、もはや、爽やかとは言い難い状態にまで汗だくになった、 体脂肪率を裕福に持っておられる成人男子が、汗も拭かずに、 その前腕を接触しつつ、 “ぬるり”とゆう感触と共に擦れ違うのだ。 もしやすると、あれは多透だけに感じられた幻影で、 “うでこすり”とゆぅ妖怪だったのかも知れないね。 しかし・・・ だぶさんは、以前、コミケにてそのような超常現象に遭遇し、 数日間、前腕皮膚がカブレたように荒れた経験があるそうだ。 多透は、その情報を事前に聞いていた為、ダブルタオル装備で、 しょっちゅうトイレにて顔やら手やらを洗っていたものでする。 そのせいか、日焼けだけで済んでいます。 特に腕から毛以外の何かがはえてくるような気配も無い模様。 でも・・・ もしかすると、 キミの町にも“うでこすり”が行くかも知れないよ・・・
『秋葉のとら』20010816/000263 【8月12日(日)】(6) コミケ突入事前に、だぶさんから、 「まぁ、中には人語を解さないのも居てはりますわぁ」と、 聞いていた、ので。 密集通路やエスカレーターや迂回通路を、 無理矢理に走り抜けようとする者を幾人か見た時、 「これが噂の・・・」と、得心してしまったものだ。 しかし、大多数の方々は、自らの目的意識に添って、 ルールを遵守し歩みを進めていた。 それに、特筆すべきは、やはり、 そのような状況を安定化させる為に、 長大な時間の努力を保ち続けたスタッフの御尽力であろう。 何か、“場”が在る以上、それを支える誰かが存在する事を、 人間として忘れるわけにはいかんだろう。心のメモ帳。 16時になって、ようやく、だぶさんと再会。 既に、膨大な冊数の同人誌を、 森の動物さんのチカラを借りて故郷へ射出したそうだ。 盆時期でもあり、同時発送者が多いので、 到着までは4〜5日かかるそうだ。 そうして・・・ 再度、企業ブースを覗き、特価キットを見せる事で、 だぶさんをフィギュア道にハメようとするも、 頑健な抵抗に会う。 なんと頑固者なのであろうか。かくなる【以下略】 そうして・・・ なごやかにゆるやかに、コミケ終了す。 鉄道にて、駅員さんの熟練誘導に感服しつつ、 我ら、性懲りもなく・・・“業の渦巻く街”秋葉原へ。 うりゃうりゃと徘徊。 コインロッカー探しを面倒がったという愚行により、 多透は、推定12.285キロを背負いつつフラフラ歩く。 サンダルの底ゴムの積層が、1枚薄く剥がれかける。 “ぺったらぺたらこぺったっこ”と、 鬼太郎に出てきた“かわうその歌”みたいなリズムで歩く。 なんか、靴ズレで水ぶくれが出てるが、気にしなければよし。 ココロはいつでもホイップホイップ。 『ぽち』を覗いたり、 『電撃ホビーマガジン』の作例ショーケースで、 さわたりけんじ氏の美麗作例を拝見したりする。 だぶさんをフィギュア道にハメようとするも【以下略】 業深い行動として、『とらのあな』で同人誌売り場散策。 我らと同様にコミケ会場から直行したらしき人影、多数。 『CHOCOLATE SHOP』の既刊を発見、購入。 才気あふれる若者が、自分達のカタチを刻んでいる現実。 それはとても心地よい。 年齢に関わらず、ちゃんと動こうとして動いている人の、 作品を観るのは、とても心地よい。 そして、 その“現在”を観せてもらえたコミケ初突入は、 いろんな意味でありがたかった。 あと、 『とらのあな』店内に、 前日2日間の新刊が既に並んでいるのを目にし、 社会の仕組みを実感する。 世界は動いている。 ぼくらは自分をアップデートしてゆかねばならない。
『プレデターバス』20010817/000264 【8月12日(日)】(7) あと、エラそうな言い方をすれば、 “群衆”の動きを俯瞰注視できたのは面白かった。 限定空間で人々が歩き、流れてゆく様。 それぞれの目的意識。 人それぞれの動作特色。 上方からの視点によって、より見えてくるような気がするもの。 それは自己満足な部分とか誤解も含むであろう、きっと。 それでも、 そういう視覚経験を積極的に長い時間実感できたのは、 物語づくりに何か活かせるかもしれない。自分しだいで。 そうして、 夜行バスを待つ。 東京駅八重洲口周辺の店じまいは早い。 マクドも20時で終わりとは! 通路で荷造りを再編しつつ、 だぶさんが買い漏らした同人誌を見せびらかし見ていただき、 売りつける平和的取引で買い取っていただく。 22時30分。バスは動き出す。 車内テレビには『プレデター』が映っている。 到着まで7時間以上。 そんなに眠ったら、自分はどうなってしまうのだろうか? 2時間おきぐらいで一時的に目覚めたものの、 間の眠りは深く、サービスエリアでアイスを食う事かなわず。 疲労に意識を食われるのは、すんごい損した気分だ。 プレデターどつき漫才を強制的に5時間見せられるほうがいい。 途中渋滞を回避る為に一部コースを変更したおかげか、 結果的に30分ほど早く、午前6時に難波駅到着。 サンダルは、あいかわらずペタペタ言っている。 ガッツで帰る。 シャワーして、 ヒゲをそり、 パンを食って、 チャリンコで仕事に向かう。 時差ボケのように、日付の認識が希薄になっている。 “旅の後そのまま仕事へ”は、初めてではないが、 その度に微かに感じるこの感覚は面白い。 世界と時間が連続してるのを感じる。 ぼくらは自分を連続させてゆかねばならない。
『ジョニーは夏場に行った』20010818/000265 『ワンフェス』もそうなのだが、 次回、冬期『コミケ』に「行くのか?」と自問すれば、 「行かない」「行けない」と答えてしまう自分が居る。 イベント自体をネガティヴに捉えているのでは、決して、ない。 多透は、自分の凡才にも関わらず、“物語”をつくりたいのだ。 そうして、その意志だけは確かに認識して、“祭”を拝見した。 “刺激”は、いただいたのだ。既に。 それを活用し、何かをつくってからでないと、恥ずかしい。 “次”も行けば、自分はどうあれ、 “祭”を楽しむ事は出来るだろう。 “ただ単に祭を楽しむ事”を、決して否定はしない。 それは楽しい。 楽しむ事は大切な事だ。 けれど、 自分の目標を先送りにして化石化して誤魔化すならば、 自分自身に、 自分に関わる人に、 そして自作で祭に参加する人に、 無礼であろう。 せっかくの夏。 自分の中から、物語を引きずり出してやる。 世界は動いている。 自分は自分でアップデートしてゆかねばならない。 その為に、きっと、大事な事は、 街だろぅが田舎だろぉが空の下で自分で地面を踏んで歩く事だ。 自分が小さく思える時があるのは、 世界が大きすぎる為だけではなく、 世界の広さを体感していない為に、 “自分の世界”が狭くなってる事に起因する場合が多いからだ。 観る。 歩く。 まずは、予定通り、決めた通り、 砂丘を歩きに行こう。 オケー。オケー。 確約されたスリルアンドサスペンス以外の何かの所で、 砂を殴りにゆこう。 人の波から、砂の海へ。 まずは、広い所を、歩いてみよう。 (・・・・・って、これを書いてる時点で、 ・・・既に行って帰ってきてるんですガ!!)
『鼻をすませば』20010819/000266 【8月18日(土)】(1) 昼までの仕事を完了し、顔を洗って大阪駅へ。 13時50分。駅構内コンビニにて、だぶさんと合流。 暑いし、今日は移動だけなので、 タンクトップ上半身でフラフラしている多透に対し、 だぶさんは、あいかわらずフル装備状態だ。 もはや、“フルアーマーだぶ”と呼称しても世界は平和。 事前に、同行者を募集していたものの、 「休めんのんじゃぁぁあ!ギャース!!」と返信あったりで、 結果的に2名での行軍となる。 だが、我ら、生まれた時は違えども、 目論んどる事もまた違う者どもなり。 多透の筆頭野望は、 アレのリニューアル版第1話の構成を完了させる事。 手書きから電脳打ち込みの手間は要るが、 移動中・旅行中の手書き速度は通常の約2.75倍。【当人談】 これを活かさねば立つ瀬スパークでものぐるおしけれ。 まずは山陽本線で、西へ。新快速ゴーゴー。 なんか、神戸あたりで雨のカタマリに遭遇。 だいじょぶだよ。でんしゃのなかだもん、こわくない。 姫路を越え、相生を越え、上郡にて乗り換え。 ここから第三セクターの智頭急行でショートカットするのだ。 1時間近く待ち時間があったので、町を散策せねば勿体ない。 日本の町には、そこかしこに共通項を見つける事ができる。 同じ文化圏に居るのだから、当たり前といえば、そうだが。 しかし、だからと言って“どこでもいっしょ”と済まさない。 そこにしか無い色やニオイを探す事が面白い。 年月を経た板塀や看板が、当たり前に在る事が嬉しい。 どれだけ雨風に耐えてきたのか解らない鬼瓦を、見る。 旅の途中でなければ、歩く事のなかった場所に居る楽しさ。 ビデオ・CD・雑誌・コミックをまとめて扱う店に突入。 この町の文化圏の一翼を担っているのであろう。 外気よりも暑い、窮屈なぐらいに品物が並ぶ店内。 埃と時間とが混然としたニオイがする。 偏見かも知れないが、田舎町の雑貨屋でよく会うニオイだ。 不快感は、ない。 むしろ、何処か懐かしくさえある。 多透シジイハウスの村に在る雑貨屋では、 これに乾物のニオイとかも混ざって、在る。 夏の中で、旅の中に居る現実を、ガジガジと再認識する。 五感の中で、嗅覚は飽和しやすい。 記憶の中で、しかし、ニオイはしまわれている。 記憶の中に在る、“夏のニオイ”のひとつ。 それは、“動力”になる。
『ガールズ食物繊維』20010820/000267 【8月18日(土)】(2) 上郡駅近くに、『チェリオ』な自動販売機を発見。 すかさず、普段飲まないものを購入。 『食物繊維飲料For』と『アイラブキッス』で。 あと、アイスモナカも買う。 旅は買い食い。世は情け。 智頭急行、発進す。 上郡〜智頭間の乗車賃は1200円のトコロ、 乗り降り自由のフリー切符は1000円也。 駅員さんが、即座にソレを勧めてくださる。 ナイスな列車ステッカー付きだ。 2両編成のワンマン列車。 クラブ活動帰りなのであろう、女学生が数名。 夏の山と空に、なんと女学生は映えるのだろう!【感嘆文】 我々が座る4人掛けボックス席。 その通路の向こう側の席に、キュゥゥトな女学生発見。 ぃや、むしろ、その位置を確信的に選択した奴が居る。 小柄な彼女は、一見、中学2年生に見える。 しかし、実は高校1年生であり、 毎朝の煮干しを欠かさない頑張りやさんと、見た。 あと、鮭フレークも好きで、アツアツご飯に掛けてると思う。 なにやら、文庫本を読んでいる。 書名は不明。 だが、おそらくは、多透が旅の友として持ってきた、 『中原中也詩集』と同じなのであろうと簡単な推理。 きっと彼女はココロの通称でチューヤンとか呼んでる筈。 空は、もはや晴れわたった。 列車は山間を縫ってゆく。 車窓からは、形状がピラミッド形な山が幾つも見える。 木々の夏色に染まりながらも、 その地下には、なんか超古代文明とかが在るのんだろう! その旨、だぶさんに相談すると、 「うむ。きっとそうですね」とアッサリ肯定する。 ならば、円錐の立場はどうなるのだ? 仕方がないので、広い空と雲を撮ろうと仕込んであった、 古いデジカメ『QV−300』を起動する。 だぶさんは、多透の目論見を察知し、 「なんとゆうまねをっ?!」なジェスチャーを世界に発信。 だが、弾倉に単3乾電池を詰める多透の指は止まらない。 “ただ、知っている事”だけの“知識”は真の武装ではない。 “知識を有効かつ創造的に使える能力”を磨く季節が青春也。 ならば、 “実行”と“体験”の中を駆けるしか無いではないのんか?! 空を撮り、雲を撮り、あと、ちょぴっとだけ女学生を激写。 無論、気づかれてはいない。たぶん。 だぶさんは、ヘビ花火を50連発してしまった時のような、 夏にオリオン座を探すような表情で空を見ていた。 ピラミッド山の上で、アンテナ鉄塔が夕陽にきらめいた。 ぼくらは旅の途中だ。 どぅする?
『セクシーソード武蔵』20010821/000268 【8月18日(土)】(3) たとえば、行動圏を定めすぎていると、外界は断片化してゆく。 そうして、自己すら断片化している事に気付かなくなる時、 箱庭が現実になるのだ。 都会と呼称されるような場所に住んでいても、 少しだけ足を伸ばせば、目の前の空が広くなる。 この国の共通項のように、 山々が見え、田畑が広がり、人が住む空間が在る。 記憶の公約数のように、 その風景は、其処に住んだ事のない身にも、 “懐かしさ”を感じさせる。 智頭急行は、 急行と言っても、1つずつの駅に停まってゆく。 そんなふうな“郷愁の記憶”の中を走ってゆく。 宮本武蔵駅も、そのひとつだ。 一抹の不安はあった・・・ 『バガボンド』のヒットに呼応して、 全国津々浦々から女学生ファンが集結しているのでは? スパークする町の人々は日夜、武芸の修練に努めているのでは? 超税金製☆武蔵ロボの目が光り、夜な夜な髪が伸びるのでは? だが、現実は、 あの有名な肖像画が駅の壁画になっているのんと、 駅前の銅像が青空に映えているのんであった。 町を散策すれば、もっとすんごいのんが在るのんだろうが・・・ 今からでも遅くはない。 そう、関西人ならネギは青ネギなのだ。 だからこそ、可能な限り、ベタな方向で。 “近年において発見された資料では、 武蔵とは美少女数名の集合変名であり、 鬼道に通じ呪術的剣術を駆使し、 歌舞宴曲やガレージキット・同人誌制作(後に一般販売)にも、 その実力をいかんなく発揮した。 ・・・という説もあるがさだかではない” と、駅に書いておくのはどうか。 もちろん、あの“素”すぎる風貌の肖像画はフェイクである。 タケゾウ君は幼なじみであり、影武者役を押しつけられたのだが、 惚れた弱みで断り切れない男はつらいよ。 無論、“影武者”を読む時は、 カンヌ国際映画祭でパルムドール賞を受賞した際の司会の人の、 「カゲムぅーシャっ!」とう発音で。 あと、在住の女学生は全員その方向性が望ましい。
『チッチとトレイン』20010822/000269 【8月18日(土)】(4) 宮本武蔵駅あたりから、車内は貸し切り状態となる。 早速、座席でのたうちまわったりするものの、 だぶさんがロッテンマイヤー女史の如き視線を射出。 仕方ないので、先ほどまで女学生が座っていた座席で、 『“ぬくい・・・ まだ、遠くへは行っていない筈だっ!”遊び』を、 少々たしなむにとどめておいた。 第三セクターである智頭急行だが、 JRとの淫靡な関係は清算できない。 特急スーパーはくとが我が物顔で通行するのんである。 その通過待ちや、対向列車待ちで、途中駅で15分ほどの 停車が在ったりする。 本社は関東な筈の『チェリオ』が、 地方都市でよく見かけられるのも、 そのような理由なのであろうか? するりと列車を抜け出して、山あいの駅に立つ。 改札を抜けて走るほどの時間は無いが、 ホームの片隅で、ぼけーっとするぐらいの時間は在る。 風景が、 追憶と空想の中で懐かしく交差する。 柵の無い駅。 誰も通っていない夏の道路。 駅の簡素な待合室。 道ばたの誰も居ないバス停。 田畑の中を貫く土の道。 岩だらけの澄んだ川。 夏の夕陽。 蝉の聲。 草むらから跳ぶ緑の虫。 草の匂い。 どぉしても、 其処に自分と誰かを投影設置してしまう。 誰かと誰かではない。自分と誰かだ。 それが多透の想像限界点のひとつかも知れない。 フフフ・・・ 夏の夕暮れが、その吹き渡る風が、 オレをニヒルな気分にするゼ。 そうしてホームで妄想にふけっていると、 だぶさんが携帯電話でネット接続している模様。 ハッ!? も、もしや、携帯電話に見えるアレは『エシュロン』端末で、 多透の妄想を逐一随時メリケン國に報告してるのんではッ?! さっき、多透が、 ホームの片隅に咲いたヒマワリの種を噛んでた事とかもっ!! こうなれば、カウンター妄想攻撃で切り抜けるしかない。 『ハロー。ハロー。 ボクは今、“ともがしら”と書いて“ちず”と読む町へ、 智頭急行に乗って向かっていますよ。 “智”とは儒教における五常のひとつで、 物の道理を知り、正しい判断を下す能力のことだそうです。 また、真理に従って判断して、 煩悩を打ち消す精神の働きという意味もあるそうです。 キミがボクの地図から消えて、はや、幾とせ。 ボクは今、地図に無い町で迷っているようなものです。 あと、煩悩だらけの野郎と旅の道連れになってしまってます。 かくなるうえは、 キミの“智”が、ボクの頭とかに必要なのです。 それがしの地図にビルトインしてくださいネ!!』 と、メールを出すのんはどうか? つまり、昔にクラスの中で好きだった子、に。 と、だぶさんに改善提案を提出した。 だぶさんは、 素肌にサスペンダーで休日出勤したものの、 ライバル登場でCO2排出量を6パーセント増量した様な、 企業戦士のフェイスになった。 まるで真面目がシャッポをかぶっているようだ。 (【注】プライバシー保護の為ほんとぉは少ぅしキャラが異なります)
『カモン!モーリス』20010823/000270 【8月18日(土)】(5) 智頭急行からJR因美線に再び乗り継ぐと、鳥取まで約70分。 地方都市の大きな駅は、感覚的な共通項を持つ。 その大きさ、 そして駅から出た周囲の、広さ。 事前の簡単な多透調査によれば、 鳥取駅周辺部において、 オールナイト映画上映・朝まで漫画喫茶は“無い”模様。 午前2時3時までの酒飲み場はあるものの、 24時まで営業が基本の『BOOK OFF』も鳥取駅南店は、22時迄。 まさに、“眠る町、鳥取”・・・ 朝までファミレスの情報は無し。 カプセルホテルも検索できず。 よって、ビジネスホテル泊に決定。 夜の始まりの空気を鼻から吸うと、公衆電話に引き返す。 せっかくだからと、古本屋『BOOK OFF』を探す。 勘だけでさまようのも一興だが、今回の目的ではない。 公衆電話に装備された電話帳で“古本”の項目を検索。 見知らぬ町で、『タウンページ』は強い味方だ。 5時間以上かけて来た旅先で『BOOK OFF』とは業が深い。 住所発見。駅前の略地図を確認。あとは足と勘だ。 駅前から川沿いに南へ向かう。 少し広い車道。そのまわりの建物。夜になっても空は広い。 よくある風景。そしてすこしずつ異なる風景。 案の定、『BOOK OFF』は見つからない。 こう書くと、まるで青春の彷徨のようだが、 実際は夜の暑さの中で、汗まみれの野郎が2人だ。 目の前から、視界の果てに至るまで、目当ての看板は、無し。 車だと一瞬で徘徊可能な範囲でも、今の移動手段は徒歩だ。 “千里の道も一歩から”と言うが、その一歩は自分しだい。 途方に暮れるのも一興だが、 「少なくとも、あの先まで行かないと、どぅしようもないのだ」 という感覚が面白い。 知らない場所で道に迷うのは気持ちいい。 筋力と気力と、動かんとしゃぁない自覚。 “千里の道も一歩から”的な名言は仰山ある。 けれど、一歩ずつの大切さに囚われすぎると、 多透のような根気の無い者は必ずや失速する。 足元の一歩は大切だが、辿り着く事が最重要。 そういう当たり前な状況を肌に感じるのに、旅はいい手段だ。 しかし、とにかく暑かった。 肉体疲労よりも暑さが降ってくる。 もはや、2人とも、 「緑ピーマンと赤ピーマン、どっちがナウい?」 などとゆう些細な話題すらも根気よく出来ない状態だった。 だぶさんが普通の小さな本屋を発見!! ちょいと買い物もしつつ、地図検索もさせてもらう。 そうか。 「俺達は、ずいぶん通り過ぎていたようだ」 結局、駅の南を1時間ほど大回りして、高架下に発見到着。 岩波新書とか講談社現代新書のシリーズが100円均一棚に満載。 ほくほくと確保。 自分が書こうとしているものに関する物事。 その先駆者や研究者や実現者の言葉を、自分は、欲している。 で、そこからどれだけ自分の言葉を引きずり出せるのだろう。 そうして、感謝できたら新刊で買い直させてもらおうなどと、 エラそうにも思う。 あと、当然の如くコミックや文庫本小説も数冊購入。 いつの間にやら21時前。 町の雰囲気からすると、食堂はラストオーダー時間だろう。 コンビニで夜食&朝食も込みで買い込み。 当然、コンビニ探索も徒歩で、少し迷う。 宿は『鳥取グリーンホテル・モーリス』!! 『モーリス』と聞けば、 すかさず、80年代のゲイ映画を思い出し、 差別意識は無いものの複雑系思考に陥る気配。 貴公子とか貴族とか美形とか耽美とか言われていたので、 名画座で観たが、主人公の腹が出てたのには愕然とした。 ・・・腹は・・・いいのか? しかし、なにはともあれビジネスホテルのその実態は・・・ 女性専用フロアも在る、安心感含有の宿泊施設であった。
『ホテルフロンティア』20010824/000271 【8月18日(土)】(6) 部屋は、ネットで略式予約済。 窓無しシングル風呂トイレ付き。5000円(税・サ別) 翌早朝の出動に備え、 だぶさんと、午前5時起床&6時にロビー待ち合わせを約束。 エレベーターで黒人さん4人組と同乗。 砂丘いきますかどうですか? さぁ、部屋の扉を開けよう。 カプセルホテルの“何処かの未来の宇宙船テイスト”も良いが、 ビジネスホテルの魅力は、 その、“室内での自由度”だと思う。 普段の生活や趣味道具などから、少しだけ隔離された部屋。 その空間で、どのように過ごすかは自由。 漫画本を読みふけるも良し。 キットや工具や材料を持ち込んで、なんかつくるのも良し。 瞑想するも良し。 迷走するも良し。 耐久ひとりエッチに挑むも良し。 うちひしがれるのも良し。 小説を読み込むのも良し。 ただ、眠り込んでしまうのも、よし。 モノに溢れた中でバランスを崩し、 モノで補完するつもりがモノに振り回されている。 そんなふうな部分が、多透には在る。 趣味ブツに圧迫される事もなく、衣食住を自己管理し、 自分を律するリズムを獲得可能な静けさのある部屋。 だから、これは、使える。 今回のような行程だと、 宿での“内部の休息”と、砂丘での“外への休息”・・・ その両方を活用するチャンスが含有。 だぶさんとは、1室へだてた位置関係。 それぞれの夜と、それぞれのチャンス。 そう・・・ 我々は、一緒に行く“旅”という時と空間を、 ある接点でだけ共有する者達にすぎない。 もしも、『探偵!ナイトスクープ』の、 “特製☆探偵手帳”が眼前に1冊だけ落ちていたら、 一片の迷いもなくマイ手帳にしてしまうだろう。 そのぐらいサバイバル感の在る間柄にすぎないのだ。 “旅”という時空で、そのチャンスで、 何を感じて何を手に入れようが、何も手に入れまいが、 それはすべて、各自の自由と自己責任。 さぁ、鍵を開けよう。扉を開けよう。 さっき買った本達は、まだ開くまい。 今夜、多透に必要な行動は、 “旅”という時空間で、そのチャンスで、 書きたい物語を自分の中から引きずり出す事。 いくぞ! 部屋の中ッ!! わぁぉ!なんかまっくらや!! むぬぅ!電灯のスイッチが効かないッ!! アウチ!手探りでフロントに内線電話やッ!! 「ドアのすぐ横の室内の壁に鍵穴がありますので、 差し込んでくださいませ。それで電源が起動いたします」 そ、そぉやったんかぁッ!! ハイテクめッ!! ・・・いゃ、俺が田舎もんなだけなのんか・・・ おっと、だぶさんに渡す本があったのんやった。 ノックパンチ!ノックパンチ!連打ッ!! ・・・反応がない。壁の中に居るのか? 仕方ないので、自室からだぶさん部屋に内線で連絡。 「やぁ、これがそれのあれだよ! それでは良い夜をッ!!」 「了解っ!!」 ・・・だが、1秒後・・・ 他に人影の無い廊下で見つめ合う2人が居た・・・・・ そうしてぼくらはフロントまでの道をゆく。 「すいません・・・鍵、中に入れたまま、 自分を閉め出してしまいました・・・・・」
『触角記』20010824/000271 ※今回から数回、表題作映画のネタバレを含有しております。 【8月18日(土)】(7)【8月19日(日)】(1) ビジネスホテルの独りの部屋。 ユニットバスで汗まみれの全身を回転シャワー。 疲れてるか? 疲れてへんわ。 呉越同舟。三寒四温。眠気退散。 意気込むだけで眠っては、なんの為に歩いて来たのんか? 14インチのTVを起動すると、浜田省吾な番組が流れている。 上郡で入った“田舎の夏の匂いのする本屋”にも、 有線で浜田省吾の歌が流れていて、 夏の午後の蒸せ感覚を高めていた。 チャンネルを変えると、24時間TVという事で、 芸人さん達が、なんか動いている。 コンビニ弁当と冷麺を可及的すみやかに食う。時速25キロ。 有料チャンネルでは、お約束のヱロビデオが流れている模様。 10分間100円。コインを投入せねば画面は砂嵐満喫状態。 自称女子高生の声が聞こえる、無意味に雄弁なオッサン声も。 ダメだっ! もっと集中するべきだっ! 多透よぅっ!! それに、オッサン声はいかんだろう。平凡な男子の感覚上。 次。 なんか、WOWOWに繋がった模様。 『触角記 女教師・秘戯レッスン』というのんが放映開始。 「直球タイトルでございまするな」と、チャンネルチェンジ。 しかし、多透がリモコンに触れるよりも早く、 【原作 花村萬月】との字幕が。 詳しくは知らないが、作家生活10年目で芥川賞を受賞した人。 その程度は知っていたし、少しだけ読んだエッセイは面白かった。 たしか、漫画になった原作も在ったような気がする。 そういう引っかかりで、流し観させていただく事にする。 うわぁ・・・薄そうぅだ。 原作は未読なれど、希釈された何かを感じてしまう。 主人公は、普通の男子高校生らしく、 自分をアウトローと思いたい部分を持つ男子高校生。 音楽の家庭教師に性の手ほどきを受け、童貞喪失。 性に目覚めた彼は、若い実母を押し倒し、親父には内緒。 同級生の処女を受領し、原付免許をとって彼女と旅に出る。 そのような、それだけの話が、 淡々と、キツすぎない映像で進んでゆく。 「冒険に出たいんだ」と、独り旅を具体的ビジョン無く夢見て、 高校を中退する主人公。 「一緒に行きたいから夏休みまで待って」と同級生に言われ、 素直に延期する主人公。 「ええのんか、それで?」と思うものの、 自分とて身をもって知っているのだ。 実は、男子高校生の大部分は茫洋として生きてる事を。 きっと制作者側は天然でつくった色なのかもしれないが、 そこに一抹のリアルを感じる者が居るのんならば、 ・・・ある意味、リアルなのかも知れない。 でも、原作が薄められた感覚は、在る。 真剣な作家は、言葉の時限爆弾をゴリゴリと作品に仕掛ける。 映像化の是非以前に、文字だからこそ表現できる領域は在る。 映像化で薄くなってしまう作品は確実に世界に満ちている筈。 ならば、その“薄められた”予感のする部分は何だろう?
『触角暗黒星』20010825/000272 【8月19日(日)】(2) さぁて。 せっかくの旅先&週末。貧乏性は眠れない。 夜更かしすると、脳細胞がゴッソリとパーになるらしいが。 大脳の神経細胞は、だいたい150億個ぐらい在るそうやし。 実際、そんなに要らんやろ? 大丈夫やで、正味の話。 なんか、昔は再生せえへん言われてたし、そぉ習ったけど、 2年ぐらい前、 成人の脳でも神経細胞がアップデートされとるって、 なんか発表されてたし。 しかも、記憶&学習&甘酸っぱい想い出にとって重要な海馬では、 結構、日常的に新生ニューロンさんがカモンとか言うてたしなぁ。 いけるっ! いけるで! おんなじヒトとして! たぶん!! 寝るな。 物語を書きたいのんやろぅ? 寝るな。 つまり、ひとつ所に集める事を“集中”と言う。 集中しておれば、眠気とて事象の地平線の彼方なり! 意識を掻き集め、濃縮した意識の元で書けば無敵なり!!(当社比) 【モード変換】→オレ呼んで“ねんりんぴっく集中法”へ。 効率良く集中できる方々なら、“目の前”から始められるのだろう。 それすらも凌駕する天然の人なら、なにげにロケンロールであろう。 気が多く惚れやすくフラれやすく集中力がなく落ち着きもない。 そのような多透といたしましては、段階的濃縮集中ゴー!! いける! (自己暗示・根拠無し) 本来、年輪は外側へと広がって拡大してゆく。 意識は、拡大するにつれて拡散もしてしまう。 意識を遠方から近接へと段階的に収束させる事によって、 能率良く効率的に濃厚なる集中領域を獲得するのである! 直立する樹の年輪の如き“円”っ! “円”と連なる武道の動作流動の如く、意識を円環にっ! 超合金Zの如く堅牢かつ、ミズクラゲの如き透過性でっ! まず、木星ぐらいから始めよ→ イオ→エウロパ→ガニメデ→カリスト→ ぁあ〜エウロパのぢめんのしたには海があるのんかもしれ〜ぬ→ エウロパちゃんをめくるのんですね→日めくりエウロパ→ →はぃ、火星ですよぅ〜→火星、はぃ、いろいろありますネ→ 月ですか、そぅですか→月といえば神話ですね→しんわぁ〜→ 地球姉さんに近親相姦を仕掛けようとした月弟くん→ 返り討ちにあって姉さんにボコボコにされる→ クレーターは、そんときの傷→ 【中略】→『鳥取グリーンホテル・モーリス』の廊下→ 廊下に敷かれた茶髪色の絨毯→階段のトコの自販機→ さっきコーラを買いにいった時、すれちがった推定27歳女性→ とてつもなく良好な臀部曲面→想い出しつつ集中→ガッツだ→ 『触角記 女教師・秘戯レッスン』がエッチシーンに→ ひるむな!その音声さえも意識遮断できる規模の集中を!→ ええぇと、意識の輪っかを集中続行→ 集中→ 焼酎→ 酋長さんの娘にチュー→ 是非、手中に→ いゃ、今宵、手にすべきは物語の部品→ 手を止めるな→トランス状態→君と僕の自動書記→ 踏ん張れ→シュワルツシルド半径→ 踏ん張りどころを事象の地平線と呼ぶ→ 集中が逃亡せずに血肉になるかどうかの境界→ 恒星とて密度を高めればブラックホールと化す→ ならば意識を集中すればなにをかいわんや→ 意識と知識と甘酸っぱい想い出を自己重力により集中→ つまり自分か゛特異点→物理法則に支配されざる世界→ 牽引される甘酸っぱい想い出空間物質→ 角エネルギーの保存により多透周囲を回転し降着円盤を形成→ 多透に流れ込む甘酸っぱい想い出空間物質→ 重力エネルギー解放→ 強力な秘密ヱッキス線を放出→危険→ だが、強力な重力→ それにより甘酸っぱい想い出分子そのものが融合→ 未知の言語となるのだ→ 自己解読も困難な文字列→ だが、それは、ひと時の勝利に過ぎないのんや→ ぷっしゅー→オーバーヒート→キミにドキドキ→ 現世に帰還。 原作者およびファンの方々には誠に申し訳ないが、 『触角記 女教師・秘戯レッスン』の、 “核”となる台詞が聞こえる。 更に申し訳ない事に、うろ覚えだが・・・こんな感じ。 男子高校生に“女”を初体験させた女教師が、 珍宝を弄くりながら、言う。 『あなたは今日、“触角”を手に入れたのよ』 「触角?」 『そう、あなたはこの触角で自分と世界を知覚するのよ』
『凧とバタ足』20010826/000273 【8月19日(日)】(3) 宇宙の騎士テッカマンのボルテッカ・・・ 新造人間キャシャーンの超破壊光線・・・・ 流星人間ゾーンの流星ミサイルマイト・・・・・ 太古より、とっときの渾身技は、諸刃の剣である。 渾身とゆうからには、つまり、 とてもしんどくなってしまうのだ。 多透の、集中筆記も、わりとそんな感じだ。 “わりと”とゆうのは、ヒーローのソレに比べて、 意外とカックイイ効果が見込めないからだ。 どれほどに努力し、自分の努力する姿に酔おうとも、 それで誰かの心を打つ物語を創り出せる訳ではない。 創作というものは、自分を解体し再構成する行為だ。 浅く、ありふれた物語しか創れなかったからといって、 その作者が浅はかな人間であると断言はできない。 しかし、 創り上げた物語が、浅く、ありふれたものならば、 自分の部品の中から、 ありふれた部品しかすくい出せなかった結果であろう。 多透のように、 自分の部品を並べてみても、それに自信の持てない人間は、 自分を動かし続けるしかない。 だが、今・・・ 多透はサマザマなチカラを使い果たし、 ビジネスホテルのベッドで、 プシューっと空気漏れしつつ突っ伏していた。 ・・・・・無駄な努力というものは、実在する。 だが、ロックフェラーさんは、なんか災難に遭った時でも、 “結果的にソレがプラスになったんやと言えるように努力” したそうだが。 ・・・足りん。 TVでは、『触覚記 女教師・秘戯レッスン』が完結。 だが、多透の指先とか触角は“ぴくり”とも動かぬ。 とりあえず握ったまんまの黒ボールペンが哀れを誘う。 調子に乗ると筆圧が高まり、シャーペンでは折れまくる為、 ボールペンを選択しているのだが、謎の図形を描くばかりだ。 午前2時30分過ぎ。 朝からの行動を考えれば、ちゃっちゃと眠るのが得策。 ・・・寝れん。 もぉちょっと頑張れば金縛り状態を満喫できる筈だが・・・ ・・・ぉお! バタ足が出来るではないか!! TVでは、『A KITE カイト』が始まった。 身動きできない身な事もあって、そのまま観る。 R指定でOVAリリースされたものらしい。50分ぐらい。 女子高生兼殺し屋の物語。絵の密度があって綺麗。 Hシーンは短い。殺人シーンは仰山出てくるのにな。 これがR指定とゆうものか。 梅津泰臣さんが、 原作・脚本・キャラクターデザイン・絵コンテ・監督を完遂との事。 集団作業である部分も認識しつつ、エネルギーあるのだなぁと思う。 タイトルの“凧”という意味合い、気が利いている。 疲れてる時は実写よりもアニメのほうが楽に観られる気がする。 そのメカニズムを考える。 アニメは、 どれほど描き込まれていても根元的には省略画像なので、 そのぶん“目に優しい”のんか? それでも、それだからこそ疲れる集中を要する画面も在るし・・・ 自分の内に在る、“虚構”と“現実”の部品数を考える。 ・・・ちょっとこわいかんがえになる。 まぁ、それもまたよし。 そのへんを実感するのもまた旅の一興。
『チョイスだ!自転車』20010827/000274 【8月19日(日)】(4) よしっ! 午前5時、起床ッ!! 顔を洗え! 全身すらもっ!! 高級つぶあんパン、摂・取・完・了! ダイエットペプシで流し込め! 仁!義!礼!智!信! 5つのパンを食らいきれ! メロンパンゴー!! 血の盟約では、午前6時にロビー集合。 あと19分。巨大余裕ッ!! 嗚呼!気持ちに余裕の在る事のなんと優雅な味覚か!! ロビーのソファーで朝刊などたしなむのもオツなものよ!! 午前6時10分・・・ だぶさんは来ない。 ハッ!? さては俺の知らないウチにアバンチュール?! ぃ、いや、それよりも日頃の激務がリバウンドしたのか?! どうする? どうなる? 消費税! ふしゅるるるぅぅ〜・・・ だめだ・・・昨晩の渾身技反動のせいか薬用ローテンション。 1時間半の睡眠では足りぬとゆうのんか肉体連邦の軟弱めが! ・・・2秒後、だぶさん颯爽登場。 さぁ、扉を開けて鳥取の朝へ。 ・・・・ぉぅ。なんか、匂いが違う。 違うで! 大阪とっ!! 日本海から砂丘から平井する微粒子が我が鼻腔を刺激するのか?! とにかく、なんか“朝の匂い”が違う町っ! 海よ!山よ!旅よ! この風で何かを伝えてくれるのか?! だが、今日は朝から、へろへろだっ!! で。 駅前ミスタードーナッツの砂糖臭をも吸い込みつつ、 まずは鳥取駅のコインロッカーに余剰荷物を格納。 これにより、機動力が2パーセント向上するのだ。 背中のザックが軽くなる。 フフフ・・・背負う物の軽さがココロもウキウキさせるぜ。 ぁぁ・・・ボクの中の冒険心がショボショボになってゆく。 ぁぁ・・・そうだね。 なにもココから砂丘まで歩く必要ないやん。遠いし。 友人と2人で1回、ひとりで1回。過去に歩いたし。 もぉ、あんなしんどい事はやめよう。ストップ徒歩! 日記にも、“砂丘で歩く”とは書いたけんど、 “駅から絶対に歩く”とは書いてないもーん。 公言してないんやから、嘘ついてないもーん。 だいたい、今回の第一目標は“砂丘走破”であって、 “砂丘まで走破”やないもんなぁ・・・ 真なる目的の為にするヱネルギィ温存は、 “魂の罪”にならないのんですと砂の女神の聲が聞こえ。 ぁぁ・・・始バスの時間はまだまだ先。 レンタサイクル窓口もまだまだ開かない。 タクシー頼んで爽やかに行こう行こうあすなろうそうしよう。 どんなに理屈をコネても粋がっても、楽ちんがいちばん。 きっと人間は、休む為に動くんだもの。 おてんとさんもミミズもオケラもハサミムシも許してくれる。 嗚呼、されど、その瞬間に・・・ 駅の横・・・ 自転車の傍らで寝転がる青年(?)が視界に入る。 詳しくない知識視点から見ても長距離仕様。 旗のぼりに、油性マジック手書きで“世界一周”・・・ すれちがう彼我。 寝袋の中から、幽かなる一瞬、 若者と視線が交差する。 互いの日焼けと汗と。 そうさ、オレ達は余所者だ。 我らは、そうして彼から遠ざかる。 「世界一周だそうですな」 「うむ。昨日の夕方から、あそこで寝ておるな」 「あ、そぅやったですか?」 「まごうことなく、相違ない」 「フハー!」 「長距離自転車に素人な視点だが、この酷暑を状況把握すれば、 夜明け前から起動して距離を稼ぐのが正道ではないのんか?」 「そりゃそうですね」 そうして我ら2名は、 駅前の観光地図看板に対峙する。 砂丘は上方に描かれている。縮尺は不明。 不明なれど、看板地図上では1メートルもない道のり・・・ 夏の陽光は、光速で降り注いでくる。 既に早々と我らの腕は汗を流してゆく。 「俺達には、少なくとも2つの道が在る。 体力温存の為、砂丘までタクシーを使用するか、 あるいは、自分で歩いて行くか・・・・・どぅするよ?」 「ぁ、どっちでもいいですよ」 「よし、歩こう」
『砂の賢者ブバンゴ』20010828/000275 【8月19日(日)】(5) 記憶をあてにしてはならない。 特に、錬磨していない記憶をあてにしてはならない。 鳥取駅前からしばらくの距離は、ゆるやかに商店街が続く。 ふと誤解すると、大阪の町角のようにも思える。 全国には同じ文字の同じ地名が結構あるが、 実は超空間的に繋がっているのではないのであろうか? 実は知らないのは我ら旅の者ばかりで、 土地に住む人々は、 「フフフ・・・また来やがったぜ・・・遠路はるばるよぉ・・・ ほんまは庄屋さんトコに超時空ゲートがあるのんも知らんと、な」 ・・・とか、町角でコッソリ噂してるのんではないのんか? なにはともあれ、少しばかり進路を間違った。 鳥取砂丘は、 中国山地から流れいずる千代川が運ぶ砂と、 日本海の沿岸流が運んだ砂が、 風と波の永劫運動によって膨大なる時間の果てに堆積した存在。 ならば、千代川ぞいに歩けば辿り着けるのは道理。 しかし、千代川は鳥取駅よりかなり西方に位置する。 そして、千代川沿いの道を選択した者は、 鳥取大学の研究農園にブチ当たってドッキリするのだ。 かつて、友と2人で夜明け前の道を歩き続け、 研究農園を囲った金網フェンスが、 ボクと砂丘の間を阻んでいた時は切なくなった。 あの時は、思わず、 金網を乗り越え、忍者走りで駆け抜けたものだ。 なにはともあれ、少しばかり進路を間違った。 目印となる旧袋川沿いに歩くつもりが、ちょぴっと角度ミス。 序盤から少しばかり遠回りになったが、 だぶさんは未だ気づいていない様子。しめしめ。 陽は昇り、汗は流れる。 歩き歩いて、ようやく川沿いに出る。 すると、川沿いのベンチに独りの老人が腰掛けているではないか。 「さては?謎解きを仕掛けて、解けない旅人を・・・」 感受性を高めながら接近接近。脳内警戒警報。 ・・・ぃや。その立ち居振る舞い、むしろ武人。 実にありふれたイデタチなれど、 その如何にも“近所のじいさん”的風貌が、逆に、 「すわ!実は賢者かっ?!」と思わせぶりだ。 視線が、合う。 しまった! プロファイリングされるっ!! 「クヒヒ・・・さては南西から来なすった旅の者か? その80年代風な手首の角度、オタク者であろう? オタク者ゆえに砂丘まで? 其れは遠き道のりぞ? 黒海の断崖と硝子山の頂きとの間、脈動する風穴に在る秘密の道。 旅の者は元素表を思い出しながらスキップで駆け抜けねばならぬ。 それがいっぽんスジが通っている道理というものだ旅の子らよ。 道に迷い心に迷い、道を踏み外して独りよがりの道に突入して、 人を裁く事ができると自惚れて正々堂々と失速してゆくがよい。 どうせ何処までも続く道などなく、往復切符もまた在りはせぬ。 人が持ちうる青春と迷宮と甘酸っぱい想い出は1つの土瓶の中。」 ・・・とかなんとか、一気にまくしたてられたらどぅしよう? ぼくたちは、おっかなびっくりと質問した。 「おはようございます。今日もまた暑くなりそうですね。 それはさておき、砂丘までゆく道はこの道でよろしいのですか?」 御老公は、 「セプテンバー!!」と叫び出しそうな温厚さで言った。 「ぁー。歩いてですかぁ・・・砂丘、かなり遠いですよぅ。 この道を突き当たりまで行って、左に曲がってずぅっと行きます。 ずっと歩くと陸橋が見えてきますので、その交差点でずっと右へ。 そしてずっとまっすぐ行くと山があるので、 頑張って登ってトンネルを抜けてください・・・」 我々は、御老公に謝意を告げると、再び歩き出した。 川沿いの遊歩道には、枝振りの低い街路樹が並んでいる。 我々は木々の枝をスゥェイバックでかわしながら進んだ。 蝉はギャンギャンと鳴いていた。 歩きながら見ると、そこかしこの幹に蝉の抜け殻が在り、 土の上には乾いた蝉が転がり、目の前の枝には蝉が鳴いていた。 ニンニン。
『カルマートンネル』20010829/000276 【8月19日(日)】(6) 想像してみよう。やたら暑い朝と、その風景を。 全長2キロメートル以上の長い廊下。木造校舎。埃くさい。 長靴の中には汗だか泥水だかが溜まり、ガポガポと音が染みる。 廊下の果ては霞んで見えない。ただ、蒸せる空気。流れる汗。 まるで謎の宇宙線が巨大化させたようにセミ群が真実の絶叫。 そしていずこからかは、おっさん声のバリトンで、意味不明に、 「もぃファー! もぃファー!」とか聞こえるのだ。 その暑苦しい空間を、汗まみれで歩き続けているうちに、 ふと、気づくのだ。 ・・・ロボ蚊の群れに取り囲まれている事に。 そう、接近してくるのはメカアカイエカの群れだ。 たしかにこちらも移動しているのだ、前進しているのだ。 そう、いつまでも続く蚊の攻撃というものはない筈だ。 迂回するか?我慢して突き進むか?反撃しつつ前進か? 選択肢は多数。 しかし、 進行方向には、メカユスリカが鬱陶しい蚊柱を形成している。 そのようなスパイシーな妄想感覚に襲われながらも、 我々は砂丘への道を歩き続けていた。暑く、長くぅ。 何処の町でも見かけるような、幹線道路の脇の歩道。 交通量は少なく、ただ陽光だけが降る夏の朝道路脇。 空の雰囲気と山の位置、そしてわずかな匂いの違い。 寝不足と暑苦しさとの中で、景色の楽しみはあるか? 午前7時台だというのに、汗腺は痛快なぐらい開栓。 汗と眠気とソウル疲労で既に貧相な表情が装着されている筈。 こんな事では、ステキなレィディが出現してもナンパ不成立。 きっと2秒以内に灼熱のグッバイだ。 謎の御老人の予言どおり、道は上り坂になってゆく。 舗装はされているものの、ちょいとした山が眼前に。 あぁ、そうだね。きっと迂回するよりは早い道の筈。 我々は、互いに互いの疲労を表沙汰にせず、歩みを続けた。 疲れを悟られてはならぬ。オーイエー。 多透は、とりあえず、だぶさんを動揺させてみようと、 微妙に歩行テンポを変調させて疲労を誘ったり、 不意にスキップしたり奇声をあげてみたりした。 だが、 だぶさんは、あまり表情を変えない。 流石は、あの土地に住んでいるだけの事はある。 “日本のミッドガルド”と呼ばれる地方に・・・ 『もぅ、あと2秒で着きます。大丈夫です』 「なんか・・・トンネルが見えてきてるんですけど」 『あれば伝説の超次元トンネルです。 あれを抜けると、伝説の多民族国家に辿り着けるのです』 「じゃぁ、砂丘は無かった事に・・・」 『だが、そんな事で、くじけてはいけないのんです。 我々は幼少時から“正義は勝つ”と擦り込まれ、 サマザマな血湧き肉踊る物語を味わってまいりました。 しかし、それらを目にしたり耳にしたりした時にだけ、 熱血を感じ、意気を昂揚させ、やる気瞬間湯沸かししても、 現実の行動に反映されなければ、なんの意味が在るのでしょう? 如何に美辞麗句で、ファンだとか好きだとか言いましても、 そのスピリッツを真に受け止めて活用しない、うわべ享楽なら! 熱き魂を伝えてくれた物語に、人物に、歌に、 そしてその瞬間に実在した過去の自分に、 不義理であり、侮辱というものではないのんでしょうか? 嗚呼、今、我らに徒労やも知れぬ行軍あり。 されど、この一歩は、まごうことなき自分自身の一歩であり、 きっと約束の地である砂丘では、確実に、 なんか肌の露出度が高くて髪の毛が蛍光色のレデーが、 我らの到着を今か今かとゆう事なのできっと大丈夫です』 「なんか・・・最後のへん、リアリティないですね・・・」 仕方がないので、 思ったよりも語感に踏ん張りのない奇声をはりあげながら、 他に通る者も居ない、長く暗いトンネルを走り抜けた。 「とりゃふほぁー!!」
『砂からドンピシャ』20010830/000277 【8月19日(日)】(7) そうさいつでも予感はドンピシャ! ぼくらはゆるやかに、 歩調の揃わないスキップでトンネルを抜けた。 登り坂のスキップを真に2級まで取得したボクサーは少ない。 みんなだいたい3級でやめてしまうから。 トンネルの出口からは、ゆるゆるとした下り坂で、 「ぁぁ、これで人生も下り坂?」とか思わせぶりだった。 しかし、ぁあ、しかし、 我ら遠方前方に砂丘の色彩を発見。 しかも到達位置は、砂丘のドテっ腹! そう、砂丘全体としてはドテっ腹だが、 観光地としての砂丘の入口たる『砂丘こどもの国』の近接部位! ホー! ホーッ!! 我らの道順は、マサにドンピシャだったのだっ!! ちなみに“ドンピシャ”と言えば、 懐かしのTV番組『夫婦でドンピシャ!』を思い出す方も5人。 “浪花のモーツァルト” キダ・タロー御大のスピリッツ満開の、 「ふ〜うぅ〜ぅ、ふ〜ふでドンピシャ♪」という主題歌の驚異。 番組のクライマックスでは、 夫婦(年齢不問)が巨大な天秤ハカリに乗り、 あらかじめ夫婦が選択した商品群と同重量なら全品イタダキ!! 関東の友人に詰問したところ、「ぉ、オレは何も知らないッ!」 との事だったので、関西ローカル番組かも知れないのだが・・・ いずれにせよ、我々の旅は・・・ 『夫婦でドンピシャ!』のように、 チームワークを駆使するものではない。 仲良し遠足でもない。 始めは仲違いしていた2人が、 次第に友情を深めてゆくバディムービーではない。 少年の夏の追憶と郷愁に満ちたロードムービーでもない。 我ら、旅立ちに際しての誓い、在り。 “砂丘内部は単独にて走破する”と、血の盟約。 さぁ、靴紐を締め直そう。 自販機にコイン。水分のボトルをザックに入れよう。 数時間後に『砂丘センター』で再会の約束。 多透、先行す。 車の影も少ない駐車場を抜ける。 公衆雪隠、発見。 汗拭き用タオルに冷水を浴びせ、固く絞る。 ちょいとした冒険を始めよう。 砂丘へと続く、砂の坂道。 土地の人らしき老婦人が降りてくる。すれちがう。 「おはようございます」「今日も暑いですねぇ」 老婦人は異様に軽快な動きだ。 砂丘スキップ5段と、見た。 今は遠き、鳥取駅方面を、振り向いて、見る。 しもぅた!! だぶさんの発進する姿が見えるッ!! さっき、タオルを湿らしてるウチに追い上げられたかッ!! このままでは察知できないウチに先行されるばかりか、 砂の中に潜まれて、突如!飛び出してッ!! 「デボノバーッ!!」とか奇声を発せられてド肝を抜かれるッ!! 後から来たのに追い越され、泣くのが嫌なら、さぁ歩け♪ ひぃひぃと、砂の坂を走る。 そうさ、いつでもドンピシャだ。
『熱砂のデザートブルマー』20010831/000278 ================================================================ 見よ この一歩こそ真なる一歩である 触れた事の無い王の命令ではなく 自らの王としての日 その一歩である 『グマ紀』第2節 ===決別王=== ================================================================ 【8月19日(日)】(8) いくぜ セクシーリフレッシュ!! ヘルシンキから来たわけじゃない。 ただの、旅の者だ。 見るがいぃ、うねりくねった地平線を! 端々に生きようとする植物を! そぅ、砂丘と言えども、草木いっぽん生えぬ枯れ地ではない。 豊富な地下水をチュウチュウと吸い、 砂地とゆう特殊環境に適応した植物が生息しているのだ。 砂丘は生きている! コングラチュレイション砂丘!! ぉお、土地の方々が7人ほど、 砂丘の片隅にしゃがみこんで何か作業を実行中。 砂丘の過剰緑化を防ぐ秘密結社『砂丘維持裏協会過激派』【仮名】か?! 「すわっ!」と思ったが、 砂山に隠れて観察するに、清掃ボランティアをしてくれている御様子。 感謝しつつ砂の上をとりあえず走って疲れてみる。 旅立ち前に百円ショップで購入しておいた“蛍光オレンジ色帽子”装着。 町の中では辛いチョイスだ。人に姿を見せられぬ。 暑ぃぁぁぁぁぁぁぅ・・・ とにかく。 あと、砂もアチチ。 砂が足をもてあそブ。 流石は日本最大規模を誇る砂丘だけの事はある。 南北2.4キロメートル。東西16キロメートル。 総面積、約545ヘクタール。 午前9時過ぎ。陽光は既に広く降る。 砂は、 如何に普段の歩みが舗装路に頼っているのかを再確認させてくれる。 だが、42.195キロメートルを2時間台で走る方々が実在する。 今日はどれだけ走れるのだろう。 どれほど汗を流そうとも、走ろうとも、 拍手は無い、賞賛も聞こえない。 声の範囲に、人は居ないからだ。 “スリバチ”と呼ばれる凹地の底に足を進める。 もしも此処が噴火口ならばと空想する。 風に潮の匂いがある。 オタクフィールドには、記号が満ちあふれている。 オタクフィールドでは、本音よりも記号が優先されがちだ。 本音を言わなくても、雑誌やネットの聞きかじりの断片を、 クチに乗せて転がしてるだけでも場はしのげる事が多い。 時には、自らの思考を展開する事さえ無くとも過ごせる場合も在る。 それはそれでシアワセなのかも知れない。 誰かがつくった揺りかご。 記号で細工された日々。 安心や休息と呼ばれる誤解が何かを腐らせてゆく。 広がる砂地に風紋が広がる。 乾いた砂丘を吹き抜けた風速5〜6メートルの風が、刻んだ芸術。 幾重にも揺れるように続く風紋に、自分の足跡をつけてゆく。 旅は旅でしかない。 だが、それを活用する事は可能だ。 聞きかじり読みかじりした言葉の断片だけで意識を満たしても、 整合性と実行性を欠く昨日群しか得られていないのなら、 そこになんの充足が在るのだろう。 少なくとも、物語を創ろうとする人間が、 誰かの他人の言葉に依存してどうするというのだ。 まだ、舌足らずだ。 まだ、未熟すぎだ。 だが、自らの歩行でしか景色を変えられぬ状況のなんと甘美な事よ! ならば、吐いてみよッ! 誰ならぬ己自身の体験脳内から生まれいずる、言葉をッ!! 自分だけの言葉をッ!! 「ぱーぱーぽー ぷぺぱぽーぺー♪」 「はぅッ!」 その時、 砂の山を越えてなんとなく聞こえてきた三島由紀夫ハミング的潮騒が、 ギルの笛の音をカットした。 そして砂山の彼方に、十数人の女学生が見えた。 ズームインせよ。ズームインせよ。ズームインせよ。 頑張れオレの遠隔視能力。 見よ、あの1人こそ希なる1人である。 何故なら、ひとりだけ体操服が違うからである。 転校生か、はたまた幹部候補生かッ?! 「・・・萌え〜♪」【談】
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