2003-4/29(火) 鎖国主義、アゲイン 現在、日学連では、全日学に関連して1つのルール変更を実施しようとしています。 それは、簡単に言えば「日本人でなければ全日学に出場できない。外国人留学生は全日学に出場できない」 というものです。 日学連における外国人留学生問題は、昭和61年に端を発しました。東北福祉大に入学してきた楊玉華 選手(現・東北福祉大監督)が、昭和61年〜平成元年の全日学で4連覇を達成し、彼と同学年であった 渋谷浩、松下兄弟(浩二・雄二)、伊藤誠らの選手達は、ついに全日学のシングルスで優勝することは 出来ませんでした。強過ぎる楊選手の締め出しを狙い、一時は全日学の出場権に「日本国籍を持つ者」と いう条件をつけようとした時期もありました。昭和63年頃のことです。これは、反対派の人などが マスコミや文部省(当時)を巻き込む形で人権問題化することで、制限の撤回をする形で決着となり ました。 それから15年の歳月を経て、今日を迎えた大学卓球界ですが、今回のルール変更に際して、人種差別、 人権問題といった懸念がないのには、仕掛けがあります。それは、現在、10月に行なわれている全日学を 日本人選手だけの大会とする代わり、その後、11月頃(?)に、日本人トップ選手と外国人留学生選手に よる新しい大会を新設する、というのです。これにより、外国人の「閉め出し」という批判を避ける工夫が されているのです。 現在、新設大会の概要はまだ決まっていない状態です。そもそも、今回のルール変更の主眼は「現状の全 日学からの留学生の排除」であり、新設大会は、そのための環境整備のために提唱されているものです から、元々、その重要度は高くはないわけですが…。 既に、日学連では3月の理事会で、このルール変更の原則合意をしています。新設大会の概要が未決の ため、実施は来年(平成16年)からとなっています。つまり、今の予定では、留学生が出場できる全日学は 今年(平成15年)限り、ということになります。 今回、このようなルール変更に対し、原則合意が成された背景には、この15年の大学卓球界を総括的に 見て「良くなっていない」という状況判断があるようです。初期の楊玉華、王会元(現・龍谷大監督)時代 には、衝撃と同時に、「彼らと競いあうことによって、長期的視点で見れば、大学生選手の強化につながる かも知れない」という期待もあったのですが、現実にはそうならなかった、ということが結果として出て います。それでも男子の方はまだ、全日学で、増田、田崎、遊澤、真田、脇ノ谷、といった多くの日本人 チャンピオンが誕生しており、競い合い効果も少しはあると思われますが、女子に至っては、昭和63年 から去年(平成14年)までの15年間で、日本人チャンピオンはわずか2人のみ(高尾と岡崎)です。 チャンピオン1人だけでなく、上位の半分以上は留学生が占めているというのが女子の大学卓球界の 現状です。 全日本選手権では、かつて、ダブルスのみ在日外国人も出場出来るという時期もありました。歴代優勝者 一覧を見ても、昭和62年〜平成元年には、陳莉莉、謝春英、黄若東、鄭彗平、チャン莉、といった名が 見られます。一時のこの「種目別国籍制限」の後、「全種目日本人のみ」という出場資格に変わって全日本は 今日に至っています。また、全日本社会人選手権も、数年前から「種目別国籍制限」を採用し、現在は シングルスは日本国籍の選手のみ出場可となっています。こういった、上位カテゴリーの大会で外国人の 制限がされていることも日学連の新たな規制には好都合だったことでしょう。 「日本国籍」による縛りを入れた後も、全日本や全日本社会人では帰化選手が活躍しており、「純日本人」の 活躍は難しい面もありますが、学生であれば、社会人よりも「純日本人」が勝ち易い環境を作れるでしょう。 帰化の申請から認められるまで、数年かかるという現状からして。 私は、基本的に外国人規制反対派の人間です。当然、今回のこの日学連のルール変更にも反対です。 しかし、この機会にいろんなことを考えたりします。例えば、日本人選手が卓球後進国(アフリカや オセアニアなど)へ留学(卓球留学でなく、普通の留学)して、片手間に卓球をやって、それでもその国の チャンピオンになってしまったら、それはその国にとって望ましいことなのか?とか…。そして、考えた 末の結論は、「確かに、それはその国にとっては好ましい事態ではない」というものになります。しかし、 それは「留学先が明らかに格下だから」という前提があってのものです。 (言葉は悪いですが)卓球三流国に、卓球一流国(?)の日本のトップクラス(または中堅クラス)が行って、 国内選手権で優勝しまくったら、そりゃあ道場破りか、合法的イジメか、という気もします。コーチ業 なら問題ないでしょうが、やはり選手としては抵抗も感じます。しかし、それは「卓球三流国は、別に 世界一を目指しているわけじゃない」という条件付きだからでしょう。楽しんでやることが目的の「DO スポーツ系」の同好会と、勝ちに行く「チャンピオンスポーツ系」の体育会の違いと言っても良いかも 知れません。「楽しみでやってる素人相手に、そんな強打を決めんなよ」という感じでしょうか。 では、ひるがえって、日本と中国の関係はどうなのか?、ということになります。同じ「世界一を目指す」 一流同士の対等な関係なのか?、それとも、勝つことをあきらめた三流と常に勝つことにハングリーな 一流の「別次元の関係」なのか?…。 外国人規制を目指す以上、これは「別次元の関係」を認めたものであると言われても仕方がないと言える でしょう。「私は三流です」と宣言して降参の白旗を掲げているようなもので、事実上のギブアップ宣言 だと私は思います。 外国人に規制をして、「ホンキで世界一を狙っている」という人がいたら…そりゃあ、嘘ですよね。 中国のナショナルチームの選手と、日本に来ている留学生では、当然、中国NTの方が強いに決まって います。もちろん、何回かに1度は来日留学生が勝つこともあるでしょうが、長い目で見れば差は明白 です。そして、「来日留学生に勝てないレベルでは、中国NTクラスには歯が立たない。世界の頂点は 狙えない」というのは、あまりにも当然のことです。 この15年で、日本の大学のレベルは上がらなかった、という判断は正しいと思います。ただ、「留学生が いなければ、レベルは上がっていたのか?」というと…多分、それはないと思います。ま、このあたりは 歴史の「if」で、正解のないところですが…。 外国人を規制した場合、ほぼ確実に期待できるメリットも確かにあります。それは、大会の「盛り上がり」 の面です。外国人留学生が上位を多数占めることによって、現在の大会の盛り上がりが失われている ことは事実です。マスコミ対策の面でも、名前も知らない外国人(ホントに漢字が読めない選手も多数 いるし)が上位を独占することは、アピールしづらいものがありますし…。 やはり、日本人であれば、日本人選手に対する「親近感」というものはどうしてもありますから、外国人の いない優勝争いが展開されれば、今よりは盛り上がると言えるでしょう。大幅なレベルダウンと引き換え に、という条件付きですが…。 まあ、結局、鎖国主義なんですよね。 「外国人に負けたくなきゃあ、勝つように、強くなるしかない」。 これが普通の考え方だと思います。王道だと思います。 「外国人には勝てないから規制する」 これは邪道じゃないんでしょうか?。 そりゃあ、これで外国人に負ける屈辱はなくなるでしょう。そりゃあ、出てこないんだから当然です。 で、必ず日本人のチャンピオンが誕生します。名誉も栄光もついてきます。自信もつくでしょう。 じゃあそれで、社会人に勝てるようになるか?、国際的に勝てるようになるか?、と言えば…、そりゃあ、 ないでしょう。大会レベル自体が大幅に落ちた中でのチャンピオンがどれほど真の実力をつけているか は大いに疑問です。 盛り上がりは出るでしょうが、結局、それも内輪ウケに過ぎない気もします。 「ランク決定戦で強豪留学生に敗れてランク入りを逃した選手にとって、そこでランク入りできるか否か の差は進路を左右するほどの大きな問題だ」…そりゃあそうですが、それは留学生側も事情は同じです からね〜。強い日本人選手に負けてランク入りを逃した留学生選手なんて一杯いますし…。 「留学生には勝てない」という前提で考えて、「留学生と対戦する組み合わせが決まった時点で、選手が やる気をなくす」というような話も聞きますが、「ダントツの実力差」が問題なら、例えば福原愛選手も 規制されるべき対象なのでしょうか?。中学生にして既に日本のトップクラスの実力を持つ福原は 全中でも、今後のインターハイでも、全日本ジュニアでも「フツー」なら、ほぼ負ける要素はありません。 福原と対戦すれば、中高生レベルであればほぼ全員が負けを覚悟しなければなりません。じゃあ、福原は 若手の意欲を失わせる日本卓球界のマイナス要因なんでしょうか?。仮に、福原を全中やインターハイ から締め出せば、同年代のレベルは上がるんでしょうか?。 かつて、渋谷浩選手が全中3連覇やインターハイ2年連続3冠王に輝いていた時代に、同年代であった 松下兄弟らがヤル気をなくしていたら、その後のその年代は大幅にレベルダウンしていたことでしょう。 幸い、この年代の選手は、お互いを越えるべく競争して、その後、約10年以上に渡り、日本のトップクラス であり続けました。その競争の中には、楊玉華選手も含まれています。 今、プロ野球では、22歳前後の「松坂世代」という言葉が頻繁に使われています。松坂大輔という「怪物」 を越えようと切磋琢磨してきた同世代の選手達が、ある者は大学、ある者は社会人、といった、それぞれの 経歴を経て、今年からプロ野球に集結しつつあります。彼らが、高校時代に「怪物にはかなわない」と 早々にあきらめていたら、「松坂世代」という言葉自体も誕生しなかったでしょう。 今後10年間ほどで「福原世代」という言葉が誕生し、福原愛の同年代に彼女を脅かすような選手群が 現われるかどうかはわかりません。それはひとえに同世代の選手達の心のあり方にかかっているの ではないでしょうか。あきらめるのか、チャレンジするのか。あきらめる方が楽だけど、苦労してでも 本気でチャレンジするような選手が4〜5人でも出てくれば、「黄金世代」が誕生する可能性は十分 あります。なんたって、まだ可能性の宝庫の中学生なんですから…。そして、ヤル気のある選手に とっては、挑戦する壁は高い方がいい、というのが私の持論です。(ヤル気のない選手にとっては、壁 なんて高かろうが低かろうが関係ないでしょう。壁に触れる位置まで歩いて行くことすらおぼつか ないんですから…) 全日学に外国人留学生が出てこなくなれば、坂本竜介あたりも1〜2度は優勝できるでしょう。 インターハイで負けた陳晨も阮震杰もいないことになるんですから。そして、歴史に名を刻む代わりに 坂本は、実はもっと大きなチャンスを失うことになるのかも知れません。自分の限界点を引き上げて くれるような「壁」という刺激を、みすみす逃すことになるのかも知れません。 P.S.ここ半月くらい、思ったことをチョットずつメモっておいて、ちょこちょこ書いたのですが、 あまり文章としてまとまっていませんね。その点はお詫び申し上げます。オピニオンのページへ