2002-4/25(木)

 卓球王国・6月号のインフォメーション欄(123ページ)に留学生問題の特集予告と意見募集が
 ありました。

 留学生問題に関しては、昨年の卓球王国・11月号で問題提起があったものです。夏の全国大会
 特集号となったこの11月号は、インターハイの男子シングルス・ベスト4の留学生独占と、
 女子シングルスの決勝留学生対決を報じていました。日本人が決勝にでも進出していれば
 これほど問題視されることはなかったであろう留学生問題は「強過ぎる」という理由で
 問題提起の対象となりました。


 思えば、留学生問題の最初の事例は、1986年(昭和61年)に来日した楊玉華選手(東北福祉大。
 現、同校監督)だったと思います。たまたま、同学年に「黄金世代」の渋谷、松下兄弟(明大)、
 伊藤(早大)、大平、野中(専大)らがおり、高校時代の実績を引き下げて大学入りして来たところ
 でしたが、全日学では楊玉華選手が4連覇し、ついに「黄金世代」はシングルスの全国タイトルを
 取れずに大学時代を終えました。

 「黄金世代」からタイトルを奪った「強過ぎる」楊選手が目の敵にされるのは、ある種、自然な
 ことだったと言えるかも知れません。しかし、楊選手に3年連続で全日学の準決勝で敗退した
 松下浩二選手は、「楊さんの存在が自分のレベルをあげてくれた」と言っています。この辺は、
 個々人の気持ちの持ちようと言えるかも知れません。現在、日本の第一人者として活躍している
 松下浩二選手は、現在の地位になるべくしてなった、と感じさせてくれる言葉です。誰もが同じ
 言葉を口にするとは思いませんが…。

 既に来日前に世界選手権ダブルス3位という実績を持っていた楊玉華選手に対し、日学連の登録
 資格を問う意見が出て、2年目には、一旦、締め出しが決まりながら、これを人権問題視する動きに
 逆転されて登録が継続され、結局、4連覇につながりました。
 「世界の銅メダリストが日本の大学生とは、不自然だ」という意見を聞きながら、「卓球ニッポン
 全盛期は大学生が世界の金メダリストだった。今の学生はだらしない」と言っていた同じ人の
 言葉を思ったりしていました。


 その後、世界選手権シングルス3位の王会元(龍谷大。現、同校監督)、そして周宏(埼玉工大)と
 いった30歳前後の高齢の学生チャンピオンが次々と誕生しました。

 国籍を根拠とする規制は人権問題を再燃させかねないということで、平成5年度より学連では、
 ユニバーシアードのルールを参考にした28歳での年齢制限を国籍に関係なく外国人でも日本人
 でも適用することにし、ここに一応の決着を見た形となっています。一例をあげると、李ジュン選手
 (淑徳短大。現、羽佳)は、平成7年に全日学で優勝しましたが、翌年は年齢制限で登録できません
 でした。現在は、高校時代から来日しているなど、日本人と同じ20歳前後の留学生が大半を占めて
 います。


 さて、本題に戻って、強い外国人留学生は何が問題なのでしょうか?

 一時的助っ人として外国人が加入することに対する反発は以前から根強いわけですが、これは
 「外国人」、「日本人」の別を問わず言えることです。高校だろうと、大学だろうと(最近は中学も)
 トップクラスを目指すチームは卓球エリートを集めています。そのほとんどはスポーツ推薦で、
 普通に勉強で受験しても入学出来なかった選手がほとんどでしょう。実際、入学はしたけれど、
 授業について行けずに留年するようなトップ選手も少なからず居ます。中学生クラスの学力の
 大学生選手も中には居るでしょう。(大学全体がレジャーランド化し、学力低下が叫ばれて
 久しい現場下で、スポーツ選手に文武両道を要求をするのも酷な気はしますが…)。それは
 それとして、とにかく、日本人であっても、トップチームのトップ選手は、「授業を受ける学生」で
 あるよりも「卓球部の戦力」であることを望まれていますし、本人もそれはわかっています。
 日本人であっても「助っ人」という実態は存在します。
 助っ人を、「外国人だから」と言って問題視することは、現実に照らして、違和感があります。


 中国からの留学生が平均して「強過ぎる」ということ、しかもその強さが日本の現状に比べて
 「異様」と言える程であるということ(層の厚さ×レベルの高さ)、これらがある種の反感を買う
 主因であることは疑いのないところでしょう。その「異様」さが、ある種の不公平感を抱かせて
 いることは事実でしょう。しかし、それもこれも掘り下げて考えて行くと「良い環境下で努力
 した選手は強い」という、当たり前の原則に辿り着くと思います。
 来日している留学生に限らず、中国で現役を引退した30代の選手が世界中に帰化し、大活躍
 しています。体力的なピークを過ぎ、中国のトップの座を失いながら、なお世界の中堅を何年も
 キープするその原動力は、幼少時代に染みついた「基礎の蓄積」でしょう。卓球を(5歳程で?)
 始めてから10歳を越える頃までの「最初の数年間」で得たものが、その選手の選手生命の大きな
 部分を運命付けているように見えます。この時期に「卓球に集中できる環境で」「努力すれば」
 後に結果が出るのは当然と言えば当然でしょう。日本の子供がテレビゲームや塾通いや、その他、
 遊びの誘惑の多い中で小学校時代を過ごしている時期ですから差がつくのは理にかなっています。
 不公平ではありません。これを不公平というなら、日本の中でも「親が卓球をやっていた」「近所に
 良いクラブがあった」「小学校に名指導者がいた」というような、好運に恵まれた選手と、「指導者も
 いない田舎町で、たまたまピンポンと出会った」という選手の間に生まれる宿命的格差も不公平
 です。でも、みんな、それぞれの環境の中で、それぞれの努力をして同じステージに立ち、「環境」、
 「才能」、「努力」、「運」の総体が勝っている方が勝つ。ただ、それだけでしょう。
 日本の選手が汗水流してトレーニングをしている間に、留学生が薬物ドーピングでもして、労せずに
 勝っているなら明らかに不公平だと思いますが、現実にはそんなことはありません。日本の選手が
 テレビゲームをしていた時に、留学生は練習をしていたから勝っているだけでしょう。ましてや
 来日後に限定すれば、言葉の問題や生活環境の問題で留学生選手の方がはるかにハンデが大きい
 ハズです。


 かつて、留学生問題が発生した10数年前は日本も好景気で、留学生も卓球で実績を残せば
 そのまま日本の実業団チームに入れることも多くありました。が、実業団チームの休廃部が
 続く現在、学生時代の卓球の実績はその価値を減少させています。これは、外国人に限らず、
 日本人選手であっても同じ荒波の影響を受けていますが…。
 それ自体、自分の将来を約束してくれるわけではない日本留学という道を、多くの外国人の
 ティーンエイジャーが選び続ける理由は何なのか?。自分の卓球の強化、自分の才能の発掘と
 いう意味では、母国(主に中国)にいた方がはるかに効率が良いと思われるのですが…。
 この点、逆に留学生達に聞いてみたいテーマです。
 「留学生のいないチームの関係者(監督・選手)」、「留学生のいるチームの関係者(監督・選手)」、
 「留学生本人」といった各方面の意見を聞きたいと思いますし、それが出来るのは卓球王国だけ
 だと思います。


 この問題に対する私の意見は、珍しく卓球王国の関係者の方々と違っていますが、問題を設定
 する姿勢、視点などは、いつもながら共通点が多いな、と言うのが実感です。
 今後も健全な批判精神の立場で、いろいろな提言・問題提起を続けていただきたいと思います。


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