第72回全日本大学対抗卓球大会(インカレ)・コメント

 8月1日(木)〜4日(日)に千葉ポートアリーナにて行われました「第72回全日本大学対抗卓球大会
 (通称:インカレ)」のコメントをアップします。

 去年のインカレは21点制で行なわれましたので、今年はインカレ史上初の11点制となりました。
 また、現行のサービスルールで行なわれる大学生の全国大会は、これが最後となります。(今年の
 全日学からは新サービスルールで行なわれます)

 なお、私は今大会の運営に関わっていましたので、試合は手の空いた時にコマギレに見ただけです。
 よって、コメントの大部分は後から記録を見て書いたものであることをあらかじめ御了承下さい。


男 子

 ○予選リーグ

  3校総当りで上位2校が決勝トーナメントに進出できる予選リーグでは、上位校の敗退などの番狂わせ
  はなかった。ただ、前年ベスト4の近畿大、筑波大は1、2番手(脇ノ谷、橋本と、高森、宮坂)の実力は
  保証書付きながら、3、4番手の戦力に不安があり、それぞれ、日本大、大阪経済大にはラストまで持ち
  込まれる3−2の試合を展開していた。結果的には、順当な1位通過を果たしたものの、一歩間違え
  れば危ないところだった。

  予選リーグ後の決勝トーナメントの抽選で、前年ベスト8の明治大は青森大のブロックを引く。
  「3年連続で、事実上の決勝戦・青森大vs明治大が準々決勝で激突」というストーリーが見えたが、
  運命のイタズラはこれだけにとどまらなかった。ここ数年、不運なランク落ちが続いていた中央大が
  明治大のパートの16シードのクジを引く。関東・春リーグの優勝校と準優勝校がランク決定で対決
  する。…と、いうことは、当然、どちらかがランク落ちするということだ。実力的に決勝で対戦しても
  おかしくない両校がこんなに早く当たるとは…。無作為抽選とは言え、かなり酷な組み合わせとなった。
  強豪校が青森大のパートに集まったことによって、他のパートはかなり楽になった、というのが正直な
  印象だった。

 ○決勝トーナメント1回戦

  予選リーグ1位通過校vs2位通過校の対戦となる1回戦16試合は、結果的には順当に、全て1位通過
  校の勝利となった。
  3−2とラストまでもつれたのは3試合。筑波大は高森が三田村(大経法大)にストレートで敗れると
  いう波乱があったが、ラストに宮坂を置ける余裕が効を奏し、逃げ切りに成功した。
  大正大は大阪経済大に、福岡大は関西大に、それぞれトップと3番ダブルスを取られ、1−2とリード
  されたものの、後半は余力を残して逆転に成功した。

 ○決勝トーナメント2回戦(ランク決定戦)

  このラウンドで最大の注目を集めたのは、勿論、明治大vs中央大の大一番。
  関東・春リーグ優勝の明治大は、「打倒・青森大」、「日本一奪回」を目指す。が、その前に早くも立ち
  塞がったのが、関東・春リーグ準優勝の中央大。昨秋の関東リーグでは、優勝・中大、2位・明大という
  ことで、名実共に、トップを争う両校。もし、インカレが総当りリーグ方式であれば、確実に上位4強
  入りするであろうチームのどちらかがランク落ちする。トーナメント戦の怖さ、無作為抽選のクジの
  怖さだ。

  明大は、関東学生優勝の並木、同準優勝の柳田を1番、2番に並べる前半勝負のオーダー。対する
  中大は関東学生ベスト4の渡邊と田中を後半に配する3−2ラスト勝ち狙いのオーダー。好対照な
  オーダーの命運を握るのは、言わずと知れた3番ダブルスだった。

  1・2番は、予想通り、明大が圧勝する。並木が松島を、柳田が清水を、それぞれ3−0のストレートで
  押さえる。ダブルスも関東学生3位の並木・川口組の方が過去の実績もあり、春リーグでも渡邊・松島
  組に勝っている。3−0ストレートで押し切りたい明大だったが、このダブルスは3−1で中大ペアが
  取った。こうなると、押せ押せの中大。4番はルーキー・田中が藤井に3−0のストレート勝ちで2−2
  ラストに持ち込み、注文通りの展開となる。中大のラストはキャプテンの渡邊。明大は門野。全日学
  ランカー同士の対決とは言え、実力的に圧倒的有利な渡邊。ラストということが精神的に影響するか、
  注目されたが、問題なく、順当に3−0のストレートで決着をつけた。
  中央大、0−2からの鮮やかな逆転勝ちで3−2の勝利。平成7年以来、実に7年ぶりのランク復帰。
  逆に明治大は、24年ぶりのランク落ちとなった。前回のランク落ちは昭和53年(1978年)。現役の
  学生達の生まれる前のことだ。(この後、明大は、糠塚重造、渡辺武弘、斉藤清らで黄金時代を築いて
  行った)。今回、クジ運が悪かったとは言え、関東学生でワンツーフィニッシュを飾りながらのランク
  落ちは、王者・明大にとっては屈辱以外の何ものでもない。ましてや、これで中大が優勝でもしていれば
  まだしも、現実には中大は次のラウンドで青森大に0−3でストレート負けしているのだから…。
  明大には、雪辱を期して、秋からの再スタートが期待される。

  兎にも角にも、こうして関東学生のベスト4が2人ずつ揃うチーム同士の「関東、頂上対決」は幕を
  閉じた。4強がそれぞれ直接対決せず、ダブルス以外のシングルス4試合が全て3−0ストレートでの
  決着となったのがチョット残念ではあったが…。

  その他の試合で注目されたのは、専修大vs法政大。
  前年準優勝の専大は決勝まで青森大と当たらないことはわかっていたが、これに加えて明大、中大と
  いった難敵が逆パートに集まり、上位進出には願ってもない組み合わせとなった。ランク決定戦の
  相手が関東2部3位の法政大とあっては、スッキリ勝って勢いをつけるまたとないチャンス…だった
  ハズだが…。トップで山田が田中(俊)に3−1で勝った後の2番で、キャプテンの大柿が何と高木に
  0−3のストレート負けを喫する。1−1で迎えたダブルスでも、関東学生準優勝の山田・大谷組が
  中村・田中(俊)組に予想以上の大苦戦。ジュースの連続の試合を取り、取られ、最後はゲームオール
  ジュースの末に何とか専大ペアが競り勝つ。が、4番で石原は田中(茂)に1−3で敗退。何と2−2
  ラストに持ち込まれる。ダブルスの大接戦を落としていたら、1−3で負けているところだった。
  ラストは大谷が中村を3−0ストレートで破り、何とか事無きを得たものの、全く危ない展開だった。
  結局、山田と大谷の2人の単複3点で勝った格好となったが、大柿と石原が全く出来が良くない。これは
  今に始まったことではなく、春リーグ、関東学生と続いている傾向だが…。
  せっかく組み合わせに恵まれていながら、前途多難を思わせる名門、専大の戦いぶりだった。

  福岡大vs埼玉工業大は、3−0ストレートで埼玉工大が勝ち、3年ぶりのランク復帰を果たした。
  逆に福大は5年ぶりのランク落ちとなった。福大は、九州学生優勝の中野とエース格の大野を後半に
  配するオーダーで臨んだが、深町が2番で張凱に捕まり、0−3のストレート負けを喫した上に、
  トップと3番ダブルスもフルゲームの接戦の末、2−3で惜敗し、涙を飲んだ。

  関東リーグで2部落ちとなった大正大は、近畿大と対戦。脇ノ谷、橋本を擁するチームとは言え、
  3、4番手の力からすれば大正大にもチャンスあり、と思われた。ここでインカレランクに復帰できれば、
  関東リーグ1部復帰への弾みになる、と期待されたが…2番でエースの三原が近大3番手の森浦に
  1−3で敗れる誤算。ダブルスもゲームオールジュースの大接戦を落とし、結局、0−3ストレートでの
  エンディングを迎えた。2年連続ランク落ちとなった大正大は、このまま沈んでしまうのか?。

  同志社大は、熊田の孤軍奮闘で先取点となる1点は上げたものの、後が続かず、筑波大に1−3で敗れた。
  予選リーグから危ない試合をしていた筑波大は、2年連続のランク入りを決めた。

  青森大vs駒沢大、早稲田大vs立命館大、愛知工業大vs青山学院大の3試合は、内容的には競るシーンも
  あったが、いずれも3−0のストレートで前年ランク校がランクキープを果たしていた。

  ベスト8の顔ぶれは、明大と福大を除く6校が連続ランクキープとなった。
  地域別では、関東の5校に、東北、東海、関西が各1校という勢力図だった。関東リーグの1部校は、
  チャンピオンチームの明大以外の5校がランク入りするという皮肉な形となった。

 ○決勝トーナメント3回戦(準々決勝)

  最も注目されたのは、やはり青森大vs中央大の一戦。
  「3年連続、青森大vs明治大の準々決勝決戦」のシナリオを越えて勝ち上がって来た中大としては、
  ここであっさり敗れては、倒して来た明大にも申し訳ないところ。ただ、戦力的には穴のない青森大の
  絶対的有利は動かない。明大戦では後半勝負のオーダーを当てた中大だったが、ここではその勢いを
  持続する目的もあったのだろうが、1番・渡邊、2番・田中、と主力を前半に並べるオーダーに組み換えて
  臨んだ。悔いを残さぬ様に、当たって砕けろ、と。

  トップは陳晨vs渡邊。ジュースの末に第1ゲームこそ取った渡邊だったが、その後、3ゲームを連続して
  陳晨に奪われ、敗れた。陳晨は、去年までの絶対のエース・宋海偉に比べると爆発的なスイングスピード
  がない分、迫力には劣るが、裏面打法を交えたプレースタイル自体は宋より合理的かも知れない、と
  思わせる強さだった。

  2番は三田村vs田中の、青森山田高OB対決。とは言え、高校時代から常にレギュラーで単複ともに
  エース格だった三田村と、レギュラーの当確線上で、エースは先輩の三田村であり、後輩の坂本であった
  田中では、やはり格が違った。3−0ストレートで三田村が田中を一蹴し、青森大が早くも2−0と
  王手をかけた。しかも、前半に2枚看板を置いて連敗した中大に対し、青森大は後半に田勢が控えて
  いる。

  3番ダブルスは、三田村・川崎組vs渡邊・松島組の対戦。青森大は、今大会、予選リーグでは三田村・
  加藤組の「世界選手権ペア」を起用していたが、決勝トーナメントに入ってからは、この三田村・川崎組
  を使っていた。左の人材も豊富な青森大だけに、個人的には、「加藤が何らかの問題で駄目でも、三田村
  のパートナーにするなら川崎よりは田勢の方が合いそうな気がするが…」などと、要らぬ気を回して
  いたが…。対する中大の渡邊・松島組は明大戦でも0−2の劣勢から逆襲の口火を切っており、一矢を
  報いるかが注目された。最初から後半勝負だった明大戦と、前半真っ向勝負で0−2になった青森大戦
  では、置かれた状況が違ったが…。
  試合は1ゲームずつを取り合う接戦となった。第3〜第5ゲーム目は、3ゲーム連続でジュースに
  もつれ込む接戦だったが、最後はゲームオールジュースで青森大ペアが競り勝った。

  結果的には、3−0ストレートで青森大が4強入りを決めた。ここまで無失点、オール3−0ストレート
  での入賞決定で、優勝候補3校が密集したパートを通過し、この時点で優勝の確率は95%(?)と
  思われた。とにかく強い。
  一方、中央大は、明大を下して7年ぶりのランク入りを決めたのは評価できる。が、そこで「目標達成」と
  いう意識が生まれたのかも知れない。あれだけ厳しい組み合わせでひとヤマ越えれば、少なからず
  「ホッ」としてしまっても仕方ないのかも知れないが…。一時、低迷にあえいでいた伝統校・中大も、ここ
  1〜2年で、「インカレランク復帰」、「関東トップ復帰」という当面の目標は果たした。今後は「打倒・
  青森大」、「日本一奪回」の目標に向けて、再スタートを切ってほしい。これらの目標を、明大とどちらが
  先に達成するか?。

  愛知工業大vs専修大戦で、専大はオーダーをいじった。法政大戦で良い所がなかった大柿と石原を外し、
  代わりに山城と伊藤を起用した。法政大戦の試合ぶりを見る限り、仕方ないメンバー変更と思われた。

  トップは山田vs成紅光の「エース対決」。凄いドライブを放つ成紅光を迎え撃つ山田。ここで山田が
  3−1で先取点をあげ、専大は圧倒的優位に立ったと思われた。が、2番の2年生対決で山城が中村に
  対し、2−1とリードしながら詰め切れず、2−3で逆転負けを喫した。結果的に、この1敗が痛かった。
  3番ダブルスは、関東学生準優勝の山田・大谷組が強い、と予想したが、意外にも近藤・中村組に0−3
  でストレート負けを喫する。1−2と王手をかけられた専大の4番は大谷。関東・春リーグでは不振
  だった大谷も関東学生ではベスト8と復調しており、今福に対しても勝機十分と思われたが、結果的には
  0−3のストレート負けを喫した。ジュースの第1ゲームを取っていれば、あるいは展開が変わった
  かも知れないが…と言うのは後の祭りだ。専大は、ラッキーな決勝トーナメントの抽選(クジ運)を
  生かせず、愛工大に1−3で敗れ、ベスト8にとどまった。強豪留学生の成紅光に勝っていながら、
  日本人対決で3点落としての1−3というのがまた悔しいところ。思えば、一昨年のインカレでも
  クジ運に恵まれて、福岡大との準々決勝に臨みながら、2−0から大逆転負け(2−3)を食らっていた
  な〜。あの時も、今回も大谷は単複で2点を落としている(しかも、両方とも決勝点を奪われている)。
  しかし、思えば法政大にラストまで持ち込まれ、「あわや、ランク落ちか?」とまで思わせた今回の専大の
  出来からすれば、ある程度、仕方ない結末だったのかも知れない。明大が今年ランク落ちしたことにより、
  平成以後、14年間ランクをキープし続けているのは男子では専大のみとなった(女子では大正大のみ)。
  しかし、めでたい感じはしない。男子は8強止まり、女子はランク落ちし、名門の影が薄い今回の専大
  だったと言える。

  近畿大vs埼玉工業大は、トップで脇ノ谷vs張凱のエース対決が実現した。全日学チャンピオンの脇ノ谷
  も、ここのところ戦績を落としており、3−1で張凱が先取点をあげた。近大は苦しいスタートと
  なったが、まだ橋本が残っている。対する埼工大は2番手以降の選手には全国的な実績は少ない。
  読めない展開の試合となった。2番で、木村は3−0で森浦を下し、埼工大は2−0と王手をかけたが、
  近大はダブルスから反撃開始。ゲームオールにもつれたダブルスをフルゲームの末に脇ノ谷・橋本組が
  モノにすると、続く4番でも橋本が有本に3−0ストレート勝ち。ついに、2−2ラストの鈴木(埼工大)
  vs岸本(近大)戦に勝負は持ち込まれた。ここでも1ゲームずつ取り合う接戦が展開され、ついにフル
  ゲームへ。最後は11-4で鈴木が勝ち、埼工大は初のベスト4進出を決めた。連続4強を逃した近大は、
  やはりトップでの脇ノ谷の敗戦が痛かった。

  早稲田大vs筑波大は、正直言って穴のない布陣の早稲田大が有利と予想した。「高森、強し」とは言え、
  筑波大は3、4番手が苦しい。ましてや、その頼みの高森も大経法大戦で黒星を喫していたのだから、
  早大有利は極自然な予想だったと思うが…。
  トップで高森が岩村を3−1で破り、筑波大が先行する。2番は、東山高で同期だった中野と菊池の
  対戦。これはさすがに東山のエースだった中野有利と見ていたが、何とフルゲームの末に菊池が競り
  勝った。意外な1点で筑波大は2−0と王手をかける展開。3番ダブルスも東山高OBの4人が
  顔を揃えたが、フルゲームの接戦の末に先輩ペアの高森・宮坂組が1年生ペアの中野・岸川組を破った。
  予想外の3−0で、筑波大は早稲田大を一蹴し、2年連続ベスト4入りを果たした。(筑波大は、予選
  リーグを含めて、今大会5試合にして初めてのストレート勝ちだった)

  ベスト4には、青森大、筑波大の両校が去年に続いて進出し、後は前年ベスト8の愛工大と、前年ランク
  落ちの埼工大が入った。
  地域別では、関東2、東北、東海各1という状況だったが、関東・春リーグで上位を占めた明大、中大、専大
  が姿を消し、4位の埼工大、5位の筑波大が勝ち上がるという「トーナメントの皮肉」を感じさせた。

 ○準決勝

  最終日、4台セッティングにコート整備がされた状態で行なわれた準決勝。

  青森大vs筑波大は、去年と同じ準決勝の顔合わせとなった。
  去年はダブルスで筑波大が一矢を報いたものの、3−1で青森大が勝っている。今年はここまで
  無失点で来た青森大に対し、予選リーグから苦戦の連続の筑波大。どう見ても青森大有利だったのは
  言うまでもない。筑波大の勝機は、高森、宮坂の2人による単複3点に限定されていた。

  1番、三田村vs菊池は、3−0ストレートで三田村が菊池を一蹴した。前日、中野(早大)を破る活躍を
  見せた菊池も、やはり「世界を股にかける三田村」には通じなかった。
  2番は、宮下vs高森の東山高OB対決。準々決勝までは川崎を4番手に起用していた青森大だったが、
  この準決勝、そして決勝は宮下を起用してきた。これは去年と同じ起用法だが、故意か、偶然の一致か?。
  それはともかく、青森大の4番手・宮下に対し、筑波大のエース・高森。筑波大としては「取るならココ」
  というポイントだった。そして、その通り、1ゲーム目こそ落とした高森だったが、2〜4ゲーム目を
  取り、3−1で、今大会、青森大に初の黒星をつけた。
  3番ダブルスは、三田村・川崎組vs高森・宮坂組。両ペアとも、今大会はここまで全勝だった。(青森大
  ペアは決勝トーナメント1回戦からの3戦全勝。筑波大ペアは予選リーグからの5戦全勝)。
  筑波大勝利のわずかな希望をかけて臨んだ高森組だったが、1ゲーム目をジュースの末に落とすと、
  2、3ゲーム目も連続して落とし、0−3のストレートで、青森大ペアの軍門に下った。こうなると、
  ラストの陳晨vs寺島はほぼ100%近く青森大有利で、青森大の勝利はほぼ確定し、興味は「3−1か、
  あるいは宮坂が意地を見せて4番でもう1点を奪うか」、に移った。
  4番の田勢vs宮坂戦は、去年の全日学で宮坂が勝っている顔合わせ。第2シードだった田勢がランク
  決定前で敗れ、崩れ落ちたシーンを今でも覚えている。宮坂も、その試合で力を使い果たしたのか、
  結局、次のランク決定戦で敗れ、ランク入りは成らなかったのだが…。田勢としては、去年の呪縛を
  解くためにも、チームの勝利とは別にしても勝っておきたいところ。だが、これまた1ゲームずつ
  取り合う接戦の末、1−1、2−2とフルゲームにもつれ込み、最後は11-9で、またしても宮坂が競り
  勝った。小柄な宮坂が長身の田勢を破っての勝利だけに、一層印象深い。田勢にとってみれば、屈辱の
  敗戦となった。
  2−2ラストとなった試合だったが、先にも述べた通り、陳晨vs寺島は固かった。寺島も関東学生で
  藤井(明大)に勝つという実績は残していたが、やはり陳晨には及ばなかった。3−0のストレートで
  陳晨が余裕の勝利をあげ、青森大が3−2で筑波大を破り、2年連続の決勝進出を決めた。

  敗れたとは言え、筑波大の2年連続ベスト4入りは立派な成績だった。高森と宮坂の2人は単複で
  合計13勝2敗という高い勝率をあげた。結果的に、この後、青森大は予想通りの優勝を果たすわけだが
  今大会、青森大が喫した失点は筑波大からの「2」のみだった。どれだけ、高森と宮坂の健闘が価値ある
  ものだったかがうかがえる。3番手の菊池も3勝2敗と勝ち越す健闘を見せた。寺島の1勝3敗は、
  相手が相手だけに、致し方ないところだったが…。国公立大の希望の象徴でもある。
  関東リーグでは、7点制(6単1複)という試合形式上、選手の駒数が重要になるため、今回の活躍で
  安心は出来ないが、良い影響があることだけは間違いないだろう。

  愛知工業大vs埼玉工業大は、去年ランク決定戦で対戦した顔合わせ。1年前は、張凱がトップで中村に
  敗れた1敗が大きく、2−3で惜敗していた埼工大。今回は張凱にとっても雪辱のビッグチャンス。
  ただ、客観的に見て、去年からの戦力補強も愛工大の方がうまく行っているし、一昨年優勝などの伝統の
  力もある分、愛工大の方が有利だと思われた。埼工大は初の4強入りが気負いにならなければ良いが…。
  両校とも準々決勝と全く同じオーダーで臨んだ準決勝。トップは張凱vs成紅光の留学生対決となった
  が、意外にも3−0ストレートでの張凱の勝利となった。期待され、準々決勝、準決勝とトップに起用
  された大物新人の成紅光だったが、連敗で期待に応えることは出来なかった。
  2番は中村(愛工大)が木村(埼工大)に3−0のストレートで勝ち、1−1のイーブンに持ち込む。
  専大戦のような、「2番・中村からの逆襲」が見られるか、という感じだったが、3番ダブルスは埼工大の
  鈴木・有本組が3−1で取る。何と、埼工大が決勝に先に王手をかける。4番は愛工大のキャプテン・
  今福が埼工大期待の新人・有本を3−0ストレートで下し、ついに試合は2−2ラストにもつれ込んだ。
  5番は、ダブルスでも顔を合わせている左腕ペンドライブ対決、鈴木(埼工大)vs近藤(愛工大)。
  1ゲームずつの取り合いとなった接戦は、フルゲームの末、最終ゲームを11-9のギリギリで取った鈴木に
  軍配が上がる。3−2、そしてチームも3−2で、埼工大が躍進と驚きの決勝進出を決めた。準々決勝に
  続いてラストでフルゲームの大接戦に競り勝った鈴木の大活躍は特筆ものだ。しかし、関東・春リーグで
  4位、1部最下位争いの常連の埼工大が日本一を争うステージに立つとは…複雑な思いだった。
  2年連続となった「工業大学対決」は、これで1勝1敗となった。愛工大としては2年ぶりの決勝戦カム
  バックの願ってもないチャンスをフイにした。せっかく専大を倒しながら…。しかし、逆に考えれば、
  10年連続ランクキープを4強入りで飾った愛工大。この10年連続ランクは、現在続いている男子の
  中では、専大に次ぐ2番目の記録。女子もランクに復帰し、伝統校の意地は見せていた。今福と中村は
  シングルスで全勝と健闘していただけに、やはり悔やまれるのは成紅光の出来か?。

 ○決 勝

  青森大vs埼玉工業大という、予想外の顔ぶれとなった決勝戦。
  両校は三田村世代が1年生だった一昨年のインカレの決勝トーナメント2回戦(ランク決定戦)で対戦
  し、新進気鋭の青森大が3−0で勝っている。3年連続ランクキープを続けていた埼工大は、その地位
  から引きずりおろされ、今年、3年ぶりにランクに復帰して来た。その時、実際に試合に敗れている張凱
  あたりにとっては雪辱したい気持ちはあっただろう。
  地力的には、優勝候補が集まったパートを余力を残して勝ち上がって来た青森大の絶対的優位は動か
  ないものの、組み合わせのワンチャンスを生かし、接戦に次ぐ接戦を勝ち上がって来た埼工大の戦い
  ぶりにも注目が集まった。現実問題としては、勝ちは難しいが1点でも取りたい埼工大としては、エース
  の張凱を宮下あたりにぶつけたいところ。だが、オーダーは両校とも準決勝から1、2番と4、5番の
  シングルスをひっくり返し、張凱は三田村と当たる、埼工大にとっては最悪なものになった。
  男女2台にセッティング変更され、まばゆいほどの照明の中に広くセットされた決勝の舞台で、校歌
  斉唱に続いて1時から試合は開始された。

  トップは宮下vs木村。去年も決勝で勝利をあげている宮下に対し、全国大会の決勝は初の木村。やはり
  差があった。11-9、11-7、11-2の3−0ストレートで宮下が幸先よく先取点をあげた。

  2番はエース対決、三田村vs張凱。ここまで、脇ノ谷(近大)、成紅光(愛工大)といった相手チームの
  エース達を連破し、5戦全勝でチームをここまで引っ張って来た張凱だけに、ここでも何とか一矢
  報いたいところだったが、やはり三田村には及ばなかった。去年の全日学シングルスのランク決定戦
  でも対決していた両者。この時は4−2で三田村が勝っていた。今回は、11-7、11-9、11-7の3−0
  ストレートで再び三田村が張凱を下した。

  連続ストレート負けで王手をかけられた埼工大。こういう展開になると興味は、「決勝戦でオール
  3−0ストレートの完全試合が成るか?」に移ってくる。3番ダブルスは三田村・川崎組vs鈴木・
  有本組。埼工大ペアも、ここまで大野・深町組(福岡大)や近藤・中村組(愛工大)を倒し、5勝1敗の
  好成績で決勝進出に大きく貢献してはいたのだが、やはり青森大ペアの方が強い。1ゲーム目を
  三田村組が先取した後の第2ゲームで、ジュースの末に13-11で、埼工大はこの決勝戦初の(そして
  結果的に唯一の)ゲームを奪い、完全試合を免れた。その後の第3、第4ゲームは青森大組が余力を
  残して取り、3−1。チームとしては結局3−0ストレート。PM2:5、あっさりと青森大の2連覇が
  達成された。試合時間わずか1時間10分足らずの、ワンサイドゲームな決勝戦だった。

  青森大は、今大会を通じて落としたのは筑波大に対する2点のみ。あとの6試合は全て3−0の
  ストレートで圧倒した。組み合わせ的にも自分のパートに明治大、中央大が入ってくるという、
  決して楽ではない状態で、プレッシャーもあったはずだが、実力で跳ね返した。

  優勝に最も貢献したとして、MVPにあたる敢闘賞を受賞したのは三田村。単複で12戦全勝という
  ことでチームの総得点である21点の半分以上を上げている計算になる。しかも12試合中、競った
  試合は中大戦のダブルス(ゲームオールジュース)の1試合のみ。圧倒的な力の差を見せつけた。
  ま、ヨーロッパチャンピオンチームのシャルロア(ベルギー)で1シーズン、サムソノフやJセイブ
  らとプレーを共にして来たのだから、活躍も当然と言えば当然か。むしろ、日本の大学生クラスに
  負けてもらっては困る、という感じか。今後もSCスーパーサーキットで腕を磨き、国際的に活躍
  してほしい。

  陳晨は4戦全勝で、新人ナンバーワンという期待に十分応えた。今回は後半起用も多かったが、
  本当の実力が見られるのは全日学か。偉大な先輩、宋海偉の跡を継ぐような活躍ができるか?。

  川崎は、三田村とのペアでダブルスに出て来た時は少し驚いた。組み慣れている三浦とのペアの
  方が良いのではないかとも思ったが、結果的に5戦全勝で戦い終えた。シングルスでも2戦2勝。
  計7戦全勝で、実績を残した。

  田勢と宮下は、出番が少なかった上に筑波大で失点を喫する、少し苦い今大会となった。しかし、
  田勢は実力は十分実証済みで、機会さえあれば活躍できることはわかっているし、宮下は2年連続で
  決勝戦で勝ち星を上げる好運に恵まれた。まだまだ来年も活躍が期待できる。

  残念だったのは加藤。今大会、起用されたのは予選リーグのダブルス2試合のみ。決勝トーナメント
  ではその座も川崎に譲り渡し、ベンチを温め続けた。シングルスでの起用もなし。開閉会式の式典
  時に主将として賞杯の受け渡しをしていたのが目立ったくらいだった。ここ1年以上、パッとしない
  状態が続いている。果たして、かつての様にスポットライトの中心で活躍する日は再来するのか?。

  危なげなく連覇を達成した青森大。実は、つい先日、気付いたのだが、インカレで東北学連の大学が
  優勝したのは去年の青森大が初めてだった。70回を越える歴史を持つインカレだけに、永い歴史
  の中には、「卓球王国・青森」からの優勝校があっても不思議ではない気もしたが…、意外だった。
  高校までは青森勢が強くても大学は関東などに出てくる選手が多かった、ということだろう。
  今年の連覇で、東北学連としての優勝も2年連続2度目となった。
  来年、3連覇を狙うことになる青森大。三田村世代がいよいよ4年生になり、戦力ダウンはない。
  現在、青森山田高の3年である坂本、高木和らが、順当に青森大に進学したら、ベンチメンバー争い、
  レギュラー争いが既にインカレ準々決勝レベルか?。サブメンバーでBチームを作っても、インカレ
  ランク入りクラスの実力はあるだろう。今後、どこまで青森大の連覇は続くのか?。それを止められる
  チームがあるとすれば、それはどこなのか?。そして、いつなのか?。興味は尽きない。

  埼工大の決勝進出を大会前に予想した人は1人もいないだろう。関東リーグでさえ、優勝争いどころか
  Aクラス入り(3位以内)すらしたことがないチームなのだから無理もない。(関東リーグ最高位は4位
  が2回)。インカレでも今まで4強入りしたことはなかったし、何より去年、一昨年と連続してランク
  落ちしていたのだから…。
  今回の躍進の要因は、強豪校が逆のパートに集まったという好運はあるものの、それ以外では、やはり
  5勝1敗と活躍した張凱と、5勝2敗と大きく勝ち越した団体戦の要、鈴木・有本組のダブルスが大き
  かった。特に、ラストで2勝もあげた鈴木の活躍は特筆モノだった。木村も4勝2敗と健闘したが、
  さすがに準決勝、決勝は厳しかったか。
  さて、いきなり日本ナンバー2の位置に踊り出た埼工大。但し、一時の祝福はあるにせよ、これに
  浮かれているわけにはいかないのは本人達もわかってるだろう。組み合わせの運不運に左右されない
  リーグ戦が1ヶ月もすればやってくる。今季も1部残留争いは簡単ではなさそうだ。


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