福野本のススメ

僕は今まで、ある人やメーカーの盲目的“ファン”になった事はありません。
確かに一時的に良く聞いた歌手等は居ますが、それでも長続きしなかったり、好きになれない曲が有ったりしてしまうので、「○○の新譜だから・・・」みたいな理由でCDを買ったりという事も基本的にはありません。それだけ移り気だという事なのでしょうかね。(^^;)


さて、本題の本のご紹介ですが、タイトルに付けた「福野本」とは福野礼一郎さんが書いた本の事を勝手にまとめた総称でございます。
「それって誰よ?」と思った方は、もう少し僕の話にお付き合い下さいね。


この方の本職は「自動車評論家」です。

皆さんは自動車の批評って読みますか?
「自分の車は自分で選ぶ!」とか「自分の好きなクルマのことを人にとやかく言われる必要は無い!」等の理由で読まれない方もいると思います。

僕もこの意見に大賛成です。
ナンダカンダと言われた所で、結局お金を払い、使っていくのは自分のですから、自分の好きなように選べば良いし、「最悪!」と評価されているクルマが自分にとって最良のクルマという可能性も大いに有りますからね。大体「パワステは軽めで・・・」と書かれたところで、一体それが評者自身の感覚によるものなのか、同時に比較試乗したクルマと比べてなのか、はたまた同クラス車の平均と比べているのかという基準が分からない訳ですから、自分がどう感じるかは全くわかりません。(大抵、読み手の感じるステアリングの重い・軽いは「今乗ってるクルマと比べて」となります。もっとも、今時の批評で上記のような内容を比較対照の注釈無しで書いてる方は少ないと思いますが・・・)
そんな訳で、次期クルマ選びを評論のみに頼るとなると、まず評論家選びから始めなければならないという不思議な状況に追い込まれるか、あるいは書店に数多く並ぶ「○○年版 クルマ選び」本の中から直感か著者の知名度に任せて一冊を選び、なおかつ自分と評者の好みがピタリ一致するという奇跡的な出会いを祈るのみです。

しかしこういう自動車評論を僕はよく読むんです。
もちろん次期クルマ選びのためではありません(上記理由による)。
文章構成の勉強をしたいからです。
昔から作文は大の苦手で、ましてやその作文を他人に読んでもらおう等とは全く思ってもいなかったのですが、何かの間違いでHPなる物を初めてしまったものだから、そういう機会が出来てしまった訳です。いっそのこと文書抜きで写真のみで構成しようかとも思ったのですが、自分が模型ページを見ていた頃に一番欲しかったものは、

@あるメーカーの、ある製品を作ったらどうなるのか?
A製作時に苦労・注意する点は有るのか、無いのか。
B有るならドコか?

という情報だったので、そこだけは自分のページにも入れたい! そうなると文書抜きでは成立しません。
ならば勉強して練習するしかない!
まあ、別に文書が下手だった所で非難が殺到する事も、脅迫される事も無い(と思いたい)のですが、ウッカリ読んでしまった人の貴重で取り返しの利かない時間をムダに浪費してしまう事には変わりなく、書いてる僕も時間をムダにしている。どうせ時間をムダに使うのなら一つでもメリットのある文書を書かないとダメでしょうと。「内容が読者の製作時に役立った」なら最高ですが、「読んでいて面白かった」とか何でも良いからメリット・・・。
やはり、勉強と練習しかないかと。

練習は・・・まあ、HPを続ける事が練習。今、真面目にこのページを読んで居られる方には申し訳無いですが、正直コレも練習です。練習の為だけに文書を書く余裕はありませんので悪しからず。m(__)m
で、勉強はプロの書いた文書を読む事だと思った・・・までは良かったが、何を読めば良いのか?

小説? エッセイ?
模型のレビューには魔法使いも出てこなければ殺人事件も起りません。トリックを考える必要もなければ、大恋愛に発展する事も無く、はたまた著者の半生か、今までの生き様を理解したところで模型のレビューに生かすにはなかなか難しいものがあります。

それなら最初から何かの製品の評論を読んだ方が理解しやすいのではないか?
特定の筆者のみでなく、多くの筆者の文書を読めば着目点が複数になり、物事の見方も多角的になるのではないか?
何種類も読まなきゃいけないなら興味のあるジャンルの方が続けやすいし、ついでに勉強になるかもしれない。

多くの人が同じ製品に関して書いていて、自分の好きなジャンルで、入手が簡単・・・

クルマが一番簡単なんじゃないのか?

なんとなれば本屋で一番最初に向う棚の並びにある。内容さえ鵜呑みにして信じてしまわなければ良いのだから、これなら簡単だ。と、まあこんな動機で本屋行ったついでに立ち読み。雑誌も単行本も含めいろいろと。
同じ車種に関する評論を何冊か読み比べてみる。
各人個性的ですよ。そのクルマに関する意見は色々あります。
全員一致で褒めてあるクルマ、賛否両論あるクルマ、全員一致で批判してあるクルマ・・・。
褒め方、けなし方もそれぞれです。
自分の意見・着目点に近い著者、遠い著者。
ジャンル・メーカーあるいは本の発売年によって評価軸がブレる著者、ブレない著者。
って、ことは評論家の評論も出来ますか?って話ですが、それは話が横道にそれるのでいつかの機会に。

それ以前に重要なのは読んでいて面白い著者と、それほどでもない著者。
これが分かれば、後は面白い文書を書いた人を集中的に読んで、内容ではなく「構成のコツ」を掴めば良い訳です。
面白い・そうでもないは個人差がありますが、ここは僕が運営しているページですから、僕の好みに合わせてお気に入りの著者の文書を読みます。

で、そんな「お気に入り」著者の中でも特に面白いと思ったのが、今回紹介しようと思った福野礼一郎さんなんです。
(えらく長い前フリでした (^^;) )
この方は「○○年版 クルマ選び」の様な本は出てませんので、次期クルマ選びをしようとした際には少々使いにくいですが、視野の広い考え方は一読しておくと後の自動車観に影響を与える事になると思います。数えてみたら13冊も読んでいたのですが、読む以前と以後で自分の中の自動車観はずいぶん変っています。結局モロに内容の影響受けてしまったようです。(^^ゞ まさにビフォー・アフター。

という訳で、そんな僕にとっては影響力絶大な福野本をご紹介したいと思います。



・ホメずにいられない
・ホメずにいられない2 (双葉社)

福野氏の出合った「ホンモノなヒト・モノ・クルマ」にまつわるエピソードを収録。
内容が内容だけに車種別の評論ではありません。
実は、僕が最初に読んだ福野氏の文書は、この1冊目の最後に収録されている「ホンモノとニセモノとめぐり合い」という文。まだ単行本になる前、たまたま買ったCar Exという雑誌に連載されていたもので、実はクルマとはほとんど関係無い話なのですが、とても印象に残ったのを今でもハッキリ覚えています。感動したというよりは、なにか凄いものを見てしまったと驚いたという感じ。
また2巻では特に「ボーソーの夏」と「鉄のかがみ」が面白く、「終演」と「あとがきにかえて」が印象的で考えさせられます。現在は文庫版が発売されていますので、そちらがオススメです。



・自動車ロン
・またまた自動車ロン
・いよいよ自動車ロン
・自動車ロン頂上作戦 (双葉社)


自動車ロンのシリーズは基本的には各月刊誌に掲載された文書をまとめた本です。
タイトル通り自動車を主体とする論が掲載されています。といっても過去の論をまとめたものなので、例えばすでにモデル後期のCクラスのデビュー時の話のようにちょっとタイミングを外していたり、ロールスロイス シルバーセラフ・ベントレー アルナージ・フェラーリ 360モデナについて等、実際には購入対象になりにくいクルマのお話しが多いです。自分の車選びに役に立たないなら読む必要無いと思われるかも知れませんが、この方の論は考え方として転用が利きます。他の方の評論は簡単に言うと「試乗感想文」になっている事が多いですが、「またまた自動車ロン」に収録されている「ボクスター‘97」「SLK‘97」を読むと良くわかりますが、福野氏の場合はとても理屈ポイのです。ステアリングの感触が悪いのは何故か? 加速のパンチ力が足らないのは何故か? ボディの剛性感が今までのメルセデスと違うのは何故か? 福野氏的な分析から推測された理由が書かれている。もっとも、ボクスターやSLKに乗って自分がどう感じるかはまさしく神のみぞ知る部分になりますが、他のクルマに乗って同じような症状を感じたとしたら原因を考える際の参考にはなると思うのです。
「自動車ロン頂上作戦」は自動車を中心とした社会の見方の参考として、その他は車好き全般にオススメです。因みに僕が某書店で買った「自動車ロン頂上作戦」は何故かサイン本でした。(^^)v


この本の発売時に東京でサイン会があったとは聞きましたが、まさか愛知で買えるとは思ってもみませんでした。



・クルマはかくして作られる
・超クルマはかくして作られる (二玄社)

クルマはどうやって作られているのか? 簡単に思いつくのはニュース番組などで時折出てくるメーカー工場での最終組み立ての光景です。ではそこで組み付けられる部品は? タイヤ・エンジン・エアコンと言った大物のみでなくドアキー・エンブレム・ウエザーストリップ・ライトバルブと言った小物はどう作るのか? 製造上難しさは何なのか? そう言った謎が一気に解けるのがこの本。こうした謎はまさしくトリビア(生きて行く上で知らなくても何の問題も無い無駄な知識)ではあるので、知らなくても何の問題も無いですが、知っていても特に損する訳でもないので、興味のある方は是非どうぞ。また前述の「いよいよ自動車ロン」は、この取材で得た内容も各部品の説明に織り込まれていますので、二玄社的な値段に手が出にくい場合はそちらをオススメします。
(もちろんきれいな写真、レイアウトは値段なりの価値は十分にあります)
月刊カーグラフィックに同名のタイトルで連載された内容の別冊。写真は通常版で、他に特装版として限定1000部で2冊組み8400円というのもあり。一度だけ書店で現物を見ましたが、確かにしっかりした製本のハードカバー、ケース入りで永久保存版といえる仕上がりです。



・幻のスーパーカー (双葉社)
例えばテスタロッサ。例えばカウンタック。例えば911。例えばストラトス。
こうしたクルマが生まれた背景にはどういう事情があったのか? どう言った人物がどう言った思惑で開発・生産に携わったのか? その結果どういうクルマに仕上がったのか? クルマ単体の性能・試乗記ではなく、その裏側にある人の関わりを中心にまとめられた一冊。前書きの中で「カタカナ専門用語の羅列などまさに自動車専門誌の悪しき見本」と書かれている通り、自動車用語の知識がある程度無いとかなり難しい本に感じる事は確かです(僕も書かれている内容の全ては理解出来ていません)。
ただ、読んでみれば意外な発見があるのも事実。こちらも現在文庫版も販売されています。



・福野礼一郎の宇宙 甲
・福野礼一郎の宇宙 乙 (双葉社)
宇宙とは大きく出たなと思っていたら、本人も甲巻の冒頭、編集者との対談で「普通「世界」だよなあタイトルつけんなら(笑)」と語っておりました。「自動車ロン」ではなくて、「福野礼一郎の宇宙」と言うくらいのものですから、題材はクルマに限定しておらず、飛行機・時計・フライトジャケット・カバンから果てはネイルスカルプチャーまで多彩。当然(というかなんと言うか)「タミヤのプラモデル」というのも有ります(甲に収録)。どちらかというと「甲」の方は多彩な趣味の道具・対象や愛用品の内容が主体、「乙」はクルマや機械が主体という分け方のようですが・・・まぁ、クルマ好きが読む本というよりは、福野好きが読む本と思った方が良いです。数ある福野本を読んで「著者に興味が出ちゃった」あるいは「ついつい引き込まれて一巻連続して読んじゃった」という方には猛烈にオススメします。もちろん甲・乙いっしょに買って下さい。片側だけ買ってもどうせすぐもう一冊欲しくなるのがオチですから二度手間防止にゼヒ!(笑)



他にもイロイロと有りますが、とりあえずは代表的な本を取り上げてみました。
好みは人それぞれですからムリに薦めはしませんが、僕の解説でちょっとでも興味が出たという方は一度読んでみてはいかがでしょうか。でも冒頭に自動車評論にからめて書いた通りでなかなか好みは一致しないもの。立ち読みして内容を確かめようにも、近くに置いてある本屋が無いという方も少なくないと思います。でも、もしかしたら気付かない内に福野本はすぐ近くにあるかもしれないのです。

GRAN TURISMO 4 というゲーム買いませんでしたか?

これ面白いゲームだと思います。実はこのシリーズだけは最初に出たときからロクにクリアもしないのに全部買ってます。ところで、このゲームに付録されている REFERENCE GUIDE という本を読みましたか?まだ読んでない方はちょっと読んでみて下さい。実はプロローグの「あなたがローゼマイヤーを破るとき。」は福野氏の著です。
GTと福野氏が関係するとは思ってもいませんでしたが、「福野礼一郎の宇宙 乙」にはGT3に関する内容もあって、これを読むとすっかり福野氏もGTファンの様子。

見かけるとついつい買ってしまう福野氏の本と、全部買ってるGRAN TURISMO。
盲目的に何かのファンになったことは無いと思っている僕ですが、この2つだけはファンになったと認めざるをえないと思っている今日この頃なのです。






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