【√】  ユウニ

「要するに、二つに分かれた“根”なんだよ。分かるか?」

 その髪をオールバックにした男は、部下である少年に尋ねる。

「はぁ…さっぱりわかんない」

 少年…アーネスは種族の特徴でもあるウサギの耳をたらして答える。先ほどか
ら繰り返し、その事務所の所長である男、ウィロートの話を聞いているのだが、
数字に関する知識が少ない事とは関係無しに、ウィロートの話が分からない。
 もっとも、彼の話が突拍子もないのは今に始まった事ではないが。

「わかんねーかな。つまりな、元は一本なんだよ。同じ幹に繋がっている、な」

 その男性は、先ほどからデスク(本来なら仕事をするべき場所と時間だ)の上
で何かしらの作業をしている。それがこの事務所のためになる事でない事だけは
誰の目にも明白だ。

「一つだけ、わかった事があるよ…」

 疲れたように自分の手元の書類を片付けたアーネスの言葉に、ウィロートは嬉
しそうに顔を上げる。
「お、なんだ。聞かせてみろよ♪」

「いくら頑張っても、二つの吸殻は一つの煙草にならないんだよ」

「う゛!」
 アーネスの言葉に、ウィロートの手からピンセットが落ち、屑煙草が散らかる
。その様子を見たアーネスは、すかさず連続攻撃にはいる。

「それ以前に、禁煙していたんじゃなかったの…?」

「ぅ、るっせい!!」

 怒ったのでアーネスの勝ちである。それにしても、掛け合わせて一つというの
なら、この事務所の仕事も自分一人でやらせられることが納得いかない。

「(あれ…?√って同じ数字じゃないと駄目なんだっけ…?)」

 困った事に、自分の考え方があっているのかどうかを唯一確認できる知識人は、
作業を放り出し、デスクに突っ伏し寝入ってしまっていた。そしてもう一つ
困った事に、これがこの事務所の日常なのであった。



W−Bよりアーネス、ウィロート。